遠すぎる恋、銀の波――
叫んでしまった。
「好きだー!」って。
周りに誰もいないと思ったからつい。
まあ、向こうには聞こえてないのもなんとなく分るんだ。
分かってたから言ってみたってのもズルいよね。
苦笑しながら、二人でよく通ってた
そしてほんのちょっとだけ泣きながらいつの間にか眠ってた。自分だけエアコンの効いた部屋でのうのうと寝ていていいのか。そう思ったら寝られなくなって悔しくて泣いた。
翌朝はまた平凡で退屈な日常。
何なんだこの落差は。
放課後、いつもならたけやん、るっち、さご、と連れ立って下校するんだけれど、今日はとてもそんな気になれなかった。余計なことは何も考えたくはなかった。
ただ、奏汰のことだけ考えていたかった。
三人には会わないようにして駐輪場を一人で出る。いつもの河原、私一人土手に腰かけて物思いに耽る。今日は夕方近くなってもうだるような暑さがまだ抜けない。
なんで奏汰はあっちの世界に行っちゃったのか。なんで誰もかれもが奏汰のことを忘れちゃったのか。
いや、奏汰のお父さんお母さんなら覚えているかも知れない。でも実際に訊いてみるのは怖い。家族にまで忘れ去られていたら奏汰が可哀想過ぎる。
ジンジャーエールを飲みながら空を見上げる。
私も奏汰の記憶を失くしてしまっていた方がずっと楽だったんだろうか。そんな気がした。
いつの間にか河原はには夕闇が舞い降りていて、河のさざ波を上弦の月が銀色に照らしていた。
まるで涙が光ってるみたい。
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