第61話 討伐祭り
翌日、ゲート前はギャラリーがいっぱいだった。勝負の話がネットで広がり、マリオを応援するファンと探索者チャンネルの取材陣が押しかけ、それを普通のテレビや新聞が取材に来ていた。
「うわあ。物凄いアウェー感」
あのファンの前を通ってゲートに行かなければ迷宮に入れない。
「采真、あれはセミだ。ミンミン鳴くだろ、うるさく」
「ああ、うるさいな」
「それだと思え」
「ううん」
「リタの声でも思い浮かべておけ」
「わかった」
俺は心の中で一人しりとりをしながら、采真はニタニタとしながら、ゲートを通り抜け、迷宮に入った。
俺と采真とマリオとヤコポは、録画用のカメラを付けさせられている。不正をしていないかの確認用だという。
何からやるかは、相談済みだ。俺達はエレベーターへ向かい、まずは20階で将軍を狙う。
采真は呻いた。
「ここまでやるか」
将軍の出るボス部屋の前は、順番待ちの列ができていた。待っているだけで数時間はかかる。それでも、将軍ではなく魔女が出れば、またやり直し、並び直しだ。
「それだけ自信がないんだろ?妨害しないと怖いなんてな。イタリアのトップが聞いて呆れる」
それに、ニヤニヤとして並んでいた探索者達は顔色を変えた。
が、そうでない探索者もいた。
「フェアにやれよ。イタリア人が皆そういうやつらと思われたらお前らのせいだぞ」
「あんまり汚い事するなら、そういう探索者の顔と動画、ネットにあげるからな」
そう言ってあからさまに録画機材を見せると、顔を隠して彼らは逃げ出した。
「あれはせいぜい、ちょっとマリオに肩入れするファンだ。本当の協力者は、今頃キメラを探して走り回ってるだろうさ」
そう言って、憎々し気に彼らの逃げ出した方を見る。
「あんたらはいいのか?」
「俺は本物の探索者に敬意を表すよ」
「私の友達も、マリオに遊んで捨てられたの。子供もできてて。でも、自分からすり寄って来たとか言われて、酷いバッシングもされて、ノイローゼよ。トップだからって、そんな事ももみ消されるっておかしいわ」
「トップから落ちれば、協会副支部長も庇う理由がなくなるだろう?その方がいいよ。日本人だろうと、イタリア人だろうと、探索者は探索者っていう人種なんだよ」
俺達は礼を言い、部屋に入った。
ぞろぞろと並ぶ石像の群れに、問答無用で魔術を浴びせまくる。お勧めは、竜巻で巻き上げてぶつけ合い、壁や天井にぶち当てる方法だ。
「派手だなあ、鳴海」
「遊んでいる余裕はないからな。丁寧にやる必要はない。
おおっと、ボスが来るぞ」
「何が出るかな、何が出るかな」
奥の棺桶みたいなものがギギギと開く。
「将軍来た!」
言いながら、采真が嬉々として飛び出して行った。
そして、部屋に入って4分で、俺達はここをクリアにした。
「石像、魔石とか残らなくてよかったな」
「拾うのを想像したら、嫌になるな」
言いながら、将軍の残した石の人形を手に部屋を出た。
「さあ、次は人魚だな」
エレベーターへ行くとマリオ派のやつらで混んでいたので、迷わず階段を駆け下りた。
「俺達を舐めんな」
剣と魔銃剣を構え、俺達は笑った。
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