第2話 戦慄の記憶②
幸也は未だにあの若い刑事の言った四文字が気掛かりだった。
あの刑事は俺を一方的に安田栄太の弟だと決めつけた。
例え血縁関係があったとしても、俺は安田家の人間では無い。
それに会ったこともなければ、話したことも無い。
眠れない真夜中、疲れた身体を起こしてネットを開いた。
<東京で火災、1人死亡11人が軽傷>
今日の記事だ。
記事はこう綴る。
『――今日の正午過ぎ、東京都内のアパートで火災が発生しました。3時間の消火活動により、現在は鎮火しています。この火災による死者は1名、軽傷者は11人。いずれも、火災したアパートの住人とのことです。この火災で死亡した安田栄太さん(29)は、消防隊により頭部がない状態で発見されました。警察は事件性があるとして捜査を進めています――』
「相手が東京に住んでいる時点で、完全に俺とあいつが他人だって言ってるようなもんだろ……」
ぼそぼそ呟く。
気づけば布団の上で横たわっていたのは言うまでもない。
●
事件発生から10時間が経った。
この時間は救急病院しか開いてない。
都内某所、司法解剖が行われる。
執刀医は医学界で今一番注目されている、いわゆる『天才外科医』である。
彼の名前は、『
今日、この不気味な『首のない死体』を解剖する。
たまたま東京に来ていたことから検察の嘱託を受けることになった。
「解剖を始める前に…」
浅田は言った。
「皆さんは、防災頭巾をご存じだろうか。あれは基本的に頭上に落ちてくる家具や本といったモノから、『
「
思わず『
「そうとは言わないが、それに近い。熊井は料理中に自分の指を切ったり、転んで膝をけがしたことはないか?」
熊井の方を向き、浅田は尋ねた。
「わ、私ですか!?野菜を切ってる時になら何度か…」
変化球のような質問を受けて、熊田は慌てて答えた。
「傷は治ったか?」
「治りましたけど…」
「じゃあ君がもし、野菜を切っている時に頭を切ってしまったら?ははは。安心してくれ。これは仮定の話だ」
少し沈黙して、熊井は聞いてみた。
「なんでそんな気味の悪いこと聞くんですか?」
「
熊井には分からなかった。
彼の言葉の意味が。
これは彼が『天才』と呼ばれる
その言葉の真意を聞こうとした瞬間、彼は目を見開いた。
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