第193話 集結、愛の園

 空を見上げれば、無数の星々がまたたいていた。およそ元の世界では直に見ることなど叶わなかった幻想的な光景をヒロは目の当たりにする。



「な、なんだあれは⁈」



 同じく空を見上げる憤怒……目を細め瞬く光の正体を見極めようと目を細めたとき、その顔は驚愕の表情に変わる。

 

 空に瞬くもの……それは明らかに何者かの手が加わった造形物だった。自然にその形になるなどありえないほど整った物体が、猛スピードで地表目掛けて落下を始めていた。いや……正確には憤怒の巨大に目掛けて落ちていく。



「まさかアレが⁈」

 


 落ちる星を見た憤怒は、直撃すればタダでは済まないと判断するや否や、背に生えた翼で大きく羽ばたき後方へ飛び上がると、ヒロ達を置き去りにして逃げ出していた。



「馬鹿が! 我が素直に攻撃を受けるとでも? 避ければ良いのだよ。避ければ! 今だまともに動けぬキサマでは、アレの攻撃範囲から逃れられまい。自らが呼び寄せた攻撃に滅ぶがいい!」



 勝ち誇り逃げに徹する憤怒……巨体ゆえに動きはゆっくりに見えるが、その速度は時速100kmを超えていた。

 目算で空から落ちるものの大きさは、せいぜい五メートル前後、すでにヒロから数百メートルの距離を空けた憤怒は、落ちいくものに殺されるヒロの最後を見てやろうと、大地に足を着け、落下地点にいるヒロ達の方へと体をひるがえす。



「何かが落ちてくる? マズイこのままじゃ」



 ヒロの目には、まだ落ち来るものが何なのか見えていなかった。ただ星の瞬きが徐々に大きくなることで、この場所を目掛けて落下していることだけは分かっていた。


 このS領域の物理法則が元の世界と同じだとしたら……構成する物質の質量にもよるが、たった五メートルの物体が及ぼす破壊力は、地面に直径百メートルのクレーターを作るほどの威力になる。


 瞬時に頭の中で計算を弾き出したヒロは、その場から離れようするが、目の前に立つガチな人と青いハリネズミの微動だにしない後ろ姿を見たとき、離れるのを止め持てる力の全てを高めることに集中する。


 それはヒロにとってのヒーロー達が、『問題ない』とその背で語っていたからだった。託された思いを無駄にしないため、ヒロはただ静かに力を蓄え、最後の一撃を放つタイミングを計っていた。



「そのまま押しつぶされるがいい! ハッハッハッハッ⁈」



 憤怒がヒロの最後を見てやろうと、ヒロの方へ顔を向けた瞬間――憤怒の顔が突如として氷ついた。


 それはヒロの上に落ちるはずだった星が……長い棒の形をした人口のブロックが奇妙な回転をしたかと思うと、その落下する軌道が突然変わり、横にスライドしながら憤怒の真上に移動してきたのだ。



「まさか我を狙っているのか!」



 真横に跳び上がりその場から逃げ出す憤怒……だが、ブロックもまた憤怒を追尾して真横にスライドしていた。



「この距離とスピードでは、もう逃げられん。ならば!」



 自分に追い掛けるブロックから逃げられないと悟った憤怒は、漆黒のオーラを身にまといつつ防御体勢に入る。鈍重な巨体では避けられないと判断した上での選択だった。


 すると空から猛スピードで、空気摩擦で燃え上がるブロックが、憤怒目掛けて一直線に落下してきた。


 念には念を入れ、【絶対防御】スキル発動しようと息を吸い、止めるタイミングを計る憤怒……だがそんな憤怒をあざ笑うかの如く、急にブロックの落下スピードが加速した。



「なっ⁈」



 息を止める間もなく、猛スピードで落ちて来たブロックが、憤怒のガードした腕に直撃する! 凄まじい衝撃が憤怒を襲い、足元の地面がヒビ割れる。すると憤怒に当たったブロックは、腕にぶつかると同時に爆炎と破片を撒き散らすしながら、その命をも散らしてった。


 あとには、若干だが腕の触手が削り取られながらも、攻撃に耐えた憤怒の姿だけが残っていた。



「クッ! オーラで防御した我がダメージを負っただと? なんだ、いまのは⁈」


「あ、あれは、まさかモノリスのブロックピース?」



 遠目であったが、空から落ちてきた巨大なブロックが憤怒に直撃するのを見たヒロは、それがかつて自分が好んでプレイしていた落ちものパズルゲームの決定版『モノリス』に登場するブロックの一つであることに気づいた。



「奇怪な攻撃を……だが耐え切ったわ! あとは奴らを始末すれば……」


 

 ヒロ達の様子をうかがう憤怒の目に、夜空に浮かぶ星たちが一斉に瞬く光が見えてしまった。それを見て……これから起こることを想像してしまった憤怒の顔は青ざめていた。


 そんな憤怒を嘲笑うかのように、ムキムキの筋肉を黒いレザーのタンクトップとホットパンツに身を包んだガチの人が、頭上に掲げ指差した手を憤怒に向かって勢いよく振り下ろす。

 

 一斉に動き出す数千の星の光……憤怒は見てしまった。空から先ほどのブロックの他にも、煌びやかな輝きを宿す巨大なダイヤモンドの宝石、カラフルなスライム状の魔物、青と白の筒状な何か、果ては巨大な帽子が……憤怒が今まで目にしたことがない奇妙な物体たちが、空一面から憤怒目掛けて落ちてくる姿を!



「ふ、防ぎきれん!」



 そう判断した憤怒が逃げの一手を打とうと、再び翼を広げ飛び上がろうとした瞬間――突如として憤怒の背中で爆発が起こり、翼がボロボロになる。地面から飛び上がろうとしていた憤怒は、大きな地響きを立てて大地に落下していた。


『憤怒の背後に何かいる?』目を細め確かめるヒロの視界に、あるものたちの姿が映り込んでいた。それはこの異世界ガイヤにはおいて、ヒロ以外は誰も知ることがないもの達だった。



「あ、あれはまさか……ポポロン?」



 白い翼で羽ばたくペガサスに乗った男……遠目でその姿を見たヒロは、青春時代の甘酸っぱい思い出と共に、それが誰なのかを言い当てていた。


 それは、ちょっぴりエッチなシューティングゲームS T G、『ブェリオズ』に出てくる主人公ポポロンに間違いなかった。


 そしてその他にも、空中を飛び交う者たちの姿がそこにあった。そのどれもがヒロには見覚えがあった。いや……忘れるはずがなかった。


 手や足が生えた奇怪なデフォルメデザインのキャラから、飛行機や宇宙船、果てはロボットまで、多種多様なその姿を見たヒロは……涙していた。



「ポ、ポポロン! スモールバイパー⁈ R-Q! トリンビー!、ナフティ!」



 ヒロの目の前に、かつてやり込んだ思い出のシューティングゲームに登場した愛機たちの姿があり、それらは憤怒の前に一列に並び浮かんでいた。


 そして愛機たちはタイミングを合わせ、憤怒に向かって持つ得る全ての武器を一斉にぶっ放した! 光弾とミサイル、レーザーやボムが……ありとあらゆるショット攻撃が憤怒の翼を破壊し地面へと叩き落としていた。



 廃人ゲーマーであるヒロは、嘘みたいな光景を見て自らの頬を思わずツネッていた。



「イッツ……ゆ、夢じゃない? 本当に⁈ こんなの絶対にありえない! こんな夢のコラボ! すごい! すごい! これは凄過ぎだぁぁ☆◆△◯!」

 


 同一メーカーのコラボゲームは数多くあるが、メーカーの垣根を越えたありえない愛機たちのコラボに、ヒロは大興奮してしまい、もはや言葉が話せなくなるほどの喜びに包まれていた。


 そして先頭に立つポポロンが手に持つ剣を振るうと同時に、空に浮かんでいた愛機たちが一斉に飛び立ち、四方八方から憤怒へ攻撃を加えていく!



「ええい! 鬱陶しいハエどもが!」



 憤怒は体の大きさが災いし愛機たちの撃ち出す攻撃が避けられない。次々と撃ち出されたショットが憤怒に命中し、体を形造る触手をドンドン削っていく。銃弾で穴を開けられ、レーザーで焼かれ、ミサイルの爆発で吹き飛ばされ、光弾がぜ、憤怒の体を覆う触手が次々と剥がれ落ちていく。



「クソ、小うるさいハエ供め、調子に乗るなよ! この程度の攻撃なぞ、我が防御の前では無力!」



 このままでは防御しきれないと判断した憤怒が、息を止め【絶対防御】スキルを発動するとその場から動かなくなる。すると憤怒に撃ち込まれていた無数の弾幕が全て弾かれしまう。



(よし、このまま攻撃を耐え切り、あの空から落ちて来るもので、ハエ供を一掃してくれるわ!)



 体を丸め防御に徹する憤怒……だが、その間にも攻撃は止まらない。波動砲やレーザー、火球が次々と絶え間なく撃ち込まれ、憤怒は動きと息を止め続ける。


 そして憤怒の真上に落ちゆく者たちが殺到し、我先にと憤怒に向かって落下を始めた。



(ぬおぉぉぉ!)



 落ちゆくものが、猛スピードで次々と憤怒へと激突すると、爆散し命を散らしてく。凄まじい衝撃と爆炎が憤怒を襲い、破片が辺り一面に撒き散らされる。


 そんな中、爆発によって撒き散らかされた破片が、周囲を飛び交う愛機たちへと襲い掛かる。



「マズイ! 避けろ!」


 

 思わず愛機たちに声を上げてしまうヒロ……その声に応えるように、愛機たちが軽やかな動きで破片を避け、空中を縦横無尽に飛び回る。

 まるでヒロが操作するかのような神業的避け方で、機体に傷ひとつ付けず愛機たちは空を駆け抜け、各々の武器を憤怒に撃ち込みまくる。



(な、なんだ! ハエどもが全ての攻撃を避けながら攻撃しているだと⁉︎ だが、我が【絶対防御】スキルさえあれば貴様らの攻撃など蚊ほども効かんわ)



 落ちるものたちの落下量が増加し、次々と破片が空中にばら撒かれていく。ギリギリのタイミングで回避し攻撃を当て続ける愛機たち……決死の攻撃も虚しく、【絶対防御】スキルが全ての攻撃を弾き飛ばしてしまい、憤怒の体にはいまだ傷ひとつ付いていなかった。足元には砕かれた巨大なダイヤモンドやブロックの破片が、ただ虚しく燃え続けていた。



「そんな、攻撃が全て弾かれている。このままじゃ……」



 ヒロは闘気を練り殺気を高めながら、その光景を見て呟いていた。ふと目の前に立つガチな人て青いハリネズミの背に視線を向ける……そこには憤怒と同じく、まったく体を微動だにせず戦いを見守る二人の男たちの後ろ姿があった。


 その背を見たヒロは、ただ愛すべきものたちが成そうとしていることを信じて、ただ静かに最後の時を待つ。



 絶え間ない攻撃が始まってから、すでに十分が経過しようとしていたが、一向に止む気配がない攻撃に憤怒は焦り感じ始めていた。



(いかん、いくらこの体でも、もう息が続かんぞ。クッ! 【絶対防御】スキルを強加するためにと、希望エルビスからのアドバイスで、酸素を体内に一定量以上、取り込まなければならないなど言う誓約さえなければ……あのクソが!)



 心の中で嘲笑う兄エルビスをくびり殺した憤怒は、オーラを限界以上に体にまとい始めていた。



(一呼吸でもできれば、再び【絶対防御】スキルの使用時間はリセットされる。一瞬だけならばこの猛攻に耐えられるはずだ。奴らとて限界はある。現に空にある星の瞬きは、その数を増やしていない。呼吸さえ、酸素さえ取り込めれば我の勝ちだ)

 


 限界まで攻撃を受け続ける憤怒……すでに空に瞬く星の光は残り僅かしか残っていなかった。


 空から赤熱化した宝石や魔物、ブロックやカプセル、果ては巨大な帽子が、次々と憤怒に落下しその命を散らして逝く。すでに数千を超える落下の衝撃に、憤怒の足元は直径百メートルを超える深く巨大なクレーターが出来上がっていた。



(マズイ、まだ……か……もう息が……)



 なおも続く落下とショットの弾幕に、ついに憤怒の息が限界を迎えてしまった。


 憤怒と言えども生物の体に取り憑く以上、その生物の生命活動を無視することはできない。つまり呼吸を止め続ければ呼吸困難で死んでしまうことを意味していた。



(もう……限界だ)


「ぶはぁぁぁぁぁぁぁ!」



 限界まで漆黒のオーラをまとった憤怒が体内に貯まった二酸化炭素を吐き出した瞬間、【絶対防御】スキルの効果が消えさり、圧倒的質量と熱量が憤怒の巨体に殺到する。


 漆黒のオーラで防御した体に全方位から攻撃が撃ち込まれ、オーラで強加された触手が爆ぜながら焼かれ、引き裂かれ吹き飛ばされていく。

 

 一瞬の内に体中にダメージを負う憤怒だったが、それは想定内だった。呼吸をして酸素を取り込めば再度【絶対防御】スキルを発動し触手は再生する。あとは向こうの力が尽きるまで待てば良いだけの話だった。



「呼吸さえできれば、こんな……こう、げ、き……な⁈ ……空気が……」



 呼吸さえできれば、再び【絶対防御】スキルは発動する。そう呼吸さえできれば何度でも……だが憤怒には、その呼吸ができなかった。いや呼吸はできていたが、空気の中に肝心の酸素が存在しなかった。

 

 絶え間なく巻き起こる爆風と炎が周囲の酸素を燃焼し尽くし、足元に転がる燃え上がるダイヤモンドやブロックの破片が燃える際に生じた煙で、周囲一帯がいつのまにか一酸化炭素が充満する死の空間と化していた。


 概念としてガイヤの世界を統べるメインシステムに記録された情報は絶対であり例外はない。そこに記されれば、死した者さえも生き返らすほどの絶対の理である。


 そしてガイヤに生きる憤怒がスキル発動につけた誓約もまたメインシステムに記録されたものであり、それは災厄として作られた憤怒でも抗えない絶対のルールだった。



(こ、呼吸が……この、ま……では)



【絶対防御】スキルの発動に必要な酸素がない……そんなことを夢にも思わなかった憤怒は、どうにかしてこの場を逃げようとしたが、すでに時は遅かった。


 憤怒は【絶対防御】スキルを過信しすぎた。この世界で空気中から酸素がなくなるなんて……ましてや、まさか自分が酸欠で死ぬことになろうとは夢にも思っていなかったのだ。


 朦朧もうろうとする意識の中で、憤怒はその巨体を動かし逃げるだけの力は残されておらず、まもなく窒息死することを悟ってしまった。



(そん……な、ば……かな……)



 酸素を求めて体が勝手に空気を吸い込み出すが、一酸化炭素が充満する空気では【絶対防御】スキルは発動しない。

 憤怒の巨体を構成する触手が次々と攻撃され、剥がれ落ちていく。


 絶え間ない攻撃の前に、ついに憤怒の巨体が膝をつき、うずくまると……空から落ちるもの達の一部が、ヒロと憤怒の間に次々と積み上がり、巨大な壁を作り出していく。


 そしてヒロを守るように壁が完成した瞬間――トドメとばかりに、残りの星たちが一斉に落下を始め、同時に愛機たちが持てる全ての攻撃を同時に憤怒へと叩き込む!


 壁の反対側から激しい閃光が世界を照らし出し、つんざくような激しい爆発音と共に、大爆発が起こった!

 壁があるにもかかわらず、地獄の釜底にいるような激しい熱気と、立っているのも困難な衝撃波がヒロに襲い掛かる。


 地面に伏せ爆発に耐えるヒロ……その目には盾となってヒロを爆発から守った壁が溶けて消えていく姿が見えていた。


 壁がなくなとたその先で、落ちるものと愛機たちもが、巨大なクレーターの中で燃え上がり無残な姿で晒していた。



「みんな……ありがとう」



 ヒロを守るため、犠牲になった愛すべき者たちに、ヒロは無意識で感謝していた。


 そしてヒロは炎に包まれ破壊された愛機の他に……地獄の釜底で、顔を地面に埋めたままピクリとも動かず、消し炭寸前になった憤怒の姿を捉えていた。



「憤怒……やったのか」



 憤怒の気配を探るヒロ……表面は焼け焦げ漆黒のオーラも感じられない。完全に死した憤怒の遺体……勝ったと思った瞬間だった!



「ふっはっはっはっはっ、今のは危なかったぞ。本当に死ぬかと思ったわ。だがこれでこの勝負は我の勝ちだ!」


「そんな⁈ なぜお前がそこにいる? あの巨体の中にお前は確かに居たはずだ!」



 ヒロは声がした方へ…… 触森へと顔を向けると触森の外周に生えていた触手が蠢めき、そのシルエットが変わっていく……見る間に触手がドラゴンの形状に変わり、憤怒が再びその姿を現した。


 体の大きさは三メートル程と随分と小さくはなっていたが、その姿は紛れもなく憤怒であり、その気配も間違いなかった。



「ああ、確かに我はあの巨大の中にいた。だが、あの爆発が起こる前に逃げ果せたのだよ。地面に穴を掘ってな、はっはっはっはっはっ」



 すると憤怒は、足元に空いた穴を指差して笑っていた。



「そうか、あの膝をついてうずくまった時に……」


「そう言うことだ。さあ、お前たちはこれで力を使い果たしただろう? 我も力を半分以上持ってかれたが、まだこの触森か残っている。散々手こずらされたがこれで終わりだ!」



 すると触森に生える数百にも及ぶ全ての触手が、ヒロたちに向かってゆっくりと動き出した。



「触手が……マズイ数が多すぎる」



 ヒロと目の前にいるガチな人と青いハリネズミ……数百を超える触手を相手に、たった三人では数の上では分が悪かった。どんなに強かろうが、圧倒的な数の暴力の前に少数が多数に勝てる道理はなかった。


 ヒロがすかさず打開策を練ろうとすると、『チッチッチッ』と舌打ちする音がヒロの耳に届く。その音の出所にヒロが顔を向けると、そこには親指を左右に振りながら不敵な笑いを浮かべる青いハリネズミの姿があった。



「な、何がおかしい! この数の差が分からないのか? お前たち三人がいくら強かろうが、この数の前では勝てるわけがない!」



 状況的に、自分が圧倒的に有利なはずなのに余裕を崩さない青いハリネズミを見て、憤怒は苛立っていた。



「ふっ、ブラフか? そうやって余裕を見せて、また油断を誘って逆転を狙う算段か? もう騙されんぞ! 少数では圧倒的な数を前にして勝つことなどできんのだ! 圧倒的な数の前ではな!」



 そう言い放つ憤怒……それを聞いた青いハリネズミが、おもむろに右手を頭上に掲げ人差し指で天を指差す。



「まさか!」



 釣られて空を見上げる憤怒……だが夜空には何も光は瞬いていなかった。



「ふ〜、驚かせよって。あれだけの攻撃が、そう何度もできるわけが……」



 そう憤怒が喋っている途中、青いハリネズミの天に掲げた指指を『スゥッ』と下ろすと、そのまま憤怒の背後を指差していた。



「はっ、またお得意の嘘か……そう何度も我を騙せると……」



 頭の中で嫌な予感が走った憤怒が、恐る恐る背後を振り返ると、そこには万に届く軍勢が……いや、万を超えるゲームキャラ達が怒りの表情を浮かべて立ち並んでいた!




〈愛すべきゲームキャラ達が集結したとき、憤怒の前に絶望の園が現れた〉

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