第68話 希望、その名はブレイブスキル!

【対象者のブレイブポイントが一定値に達しました。対象者の危機的状況を確認。シークレットスキルの使用を限定解除。ユニークスキル『ブレイブ』を強制発動】



 ヒロの頭の中に突如、謎のシステム音声が鳴り響く。



【スキル及びステータスの書き換えを開始……ステータスの書き換え終了。一部スキルの書き換えに失敗……戦闘に問題なしと判断。ブレイブチェンジ完了】



「シークレットスキルの限定解除? ステータスオープン」



 名前 本上もとがみ 英雄ヒーロー

 性別 男

 年齢 6才(24才)

 職業 プログラマー


 レベル :9        

                  

 HP:90/170(+80)→770/850

 MP:70/130(+80)→555/615


 筋力:114(+80)→570

 体力:134(+80)→670

 敏捷:114(+80)→570

 知力:135(+80)→675

 器用:124(+80)→620

 幸運:109(+80)→545


 固有スキル デバック LV1

       言語習得 LV1

       Bダッシュ LV3

       二段ジャンプ LV2

       溜め攻撃 LV1 → ブレイブチャージ LV5

       オートマッピング LV1

       ブレイブ LV1 (限定解除)


 所持スキル 女神の絆 LV2

       女神の祝福 【呪い】LV10

       身体操作 LV3

       剣術 LV2

       投擲術 LV1

       気配察知 LV1

       空間把握 LV1

       


 ステータスが書き換えられ、固有スキルも名前が変更されていた。



「ブレイブ……勇気?」



 ヒロが素早くブレイブLV1のスキル名をクリックすると……。



 ブレイブ LV1

 勇者だけに発現するシークレットスキル

 ブレイブポイントの上昇により、ブレイブチェンジ可能

 ブレイブチェンジ後、ステータスと関連スキルのLV上昇

 ブレイブ関連スキルは名称が変更され、スキル効果がブレイブ専用スキルにチェンジ

 勇気を力に変換する事が可能



「ブレイブチェンジ……ステータスが大幅に書き換わっている。勇気が力に変換される? 専用スキル? 溜め攻撃が変化しているのか?」



 ブレイブチャージ LV5

 勇気をあらゆる武具にチャージ可能

 攻撃魔法使用時、魔法にもチャージ可能

 チャージ量により攻撃力が変化

 チャージできる量はスキルレベルに依存(上限有り)

 チャージ終了後の攻撃は物理と魔法両方の特性を付与

 武具に限り、チャージ後は一定時間、攻撃力を維持可能

 チャージした力は、一度に全解放もする事も可能



「僕の勇気をチャージする? 普通の溜め攻撃と同じ要領でいいのか? 検証している時間はない。ぶっつけ本番でやるしかないか……」



 ヒロはステータス画面を閉じると、目の前に立つオークヒーローを見てつぶやく。



「でも……これでまだあらがえる!」



 体の震えは止まり、ヒロの顔はオークヒーローが発する圧倒的な存在感に屈する事なく、真っ直ぐな目を向けていた。



「ブヒィ イイメダ」



 オークヒーローも、ヒロの雰囲気が変わり、さっきとは別人みたいな立ち振舞いに、声を上げていた。


 ヒロが手に持つショートソードにチャージを開始する。


 使い方が合っているかは分からない……だが、体から何かがショートソードに流れ込む感覚はある。


 通常の溜めと同じく五秒キッカリでショートソードが光り出すが、その刀身はいつもの銀の光ではなく……黄金の輝きを剣に灯していた。


 いつもと違う感覚にヒロは戸惑う……まるで暴れ馬のように、ショートソードの中に流し込んだ力が暴れ回る。


 気を抜けば暴発しかねない強大な力……ヒロは力を抑えつけるイメージを剣に流し込み。力の制御を優先する。



「ブヒ、センテハクレテヤル!」



 確実にオークヒーローが人の言葉を紡ぎ出していた。


 だがヒロには言葉を話すオークヒーローに驚いている暇はない。手の中で暴れる力を押さえ付けるのに手一杯で、それどころではなかった。


 オークヒーローが先手をくれると言っている。おそらくあの謎の防御に絶対の自信があるからだろう……いまもなお、ハルバードを構える姿に油断はない。


 さっきまでなら打つ手なしと、途方に暮れていた所だが……今は違う。絶望的状況に希望が生まれた。


 ブレイブチェンジによるステータス向上とブレイブチャージ……勝機があるとすれば未知数のこの二つが鍵だ。


 果たして、検証もしていない力であのオークヒーローを倒せるのか? ヒロの心を一抹の不安がよぎると……次の瞬間、ヒロは空いた手で自分の顔を一発殴っていた!



日和ひよるな俺! できる、できないじゃない! やるんだよ!」



 ヒロは弱気になる自分に活を入れて闘志を奮い立たせると、黄金に輝くショートソードを後ろに引き、中段に構える。

 


「小細工は無用……どうせあの謎の防御に弾かれれば、打つ手なしだ」



 あのオークヒーローが二度も同じ手に引っ掛かるわけがない。ブレイブチャージのスキル説明から、これから放つチャージ攻撃は、物理と魔法両方の特性を持っている……物理はダメでも魔法が通る可能性は高い。



「なら、あとはこの一撃に全てを賭けるのみ。出たとこ勝負のギャンブルだ!」



 チップは自分の命、見返りはリーシアと二人で生きて帰れる事……賭けとしては悪くはない。生き残る可能性が生まれたのだから。


 ヒロとオークヒーローは、互いに武器を構えタイミングを計りながら対峙する。勝負の時が訪れるのを二人はただ黙して待ち続ける。二人の間に静寂の時が流れてゆく……そして。



「勝負だオークヒーロー! Bダッシュ!」


「足掻いてミロ」



 生き残るための戦いが再び始まった!


 ブレイブチェンジによって引き上げられステータスが、さっきまでとは比べものにならないスピードをヒロにもたらし、ヒロの剣から零れ落ちる光が黄金の軌跡を残しながらオークヒーローへと迫る。


 オークヒーローは、突如変わったヒロのスピードに攻撃のタイミングをずらされたが、いつも通り攻撃を弾こうと息を止めて待ち構える。


 それは数え切れぬ戦いの果てに、あらゆる攻撃は弾き返し、突破された事が一度たりともない絶対防御スキルに、絶対の自信を持っていたがためだった。


 この雄の攻撃もいつもと同じ。攻撃を弾いて、あとはハルバードの一撃を放てば終わり……いつもと変わらぬ単調な作業でしかなかった。

 自分の強さに届く強敵を欲するオークヒーローにとって退屈な時間……目の前にいる雄に敬意は払うがまったく期待などしていなかった。自分よりも体の小さな者に負けるはずがなく、絶対防御が破られことなどあり得ないからだった。


 迫る黄金の輝きに、オークヒーローは目を細めると、ヒロの攻撃を弾くため、絶対防御スキルが発動する。



「斬り裂けぇぇぇぇ!」



 黄金の輝きがオークヒーローの脇腹へと迫る。


 いつも通り、オークヒーローは絶対防御スキルで攻撃を弾こうとするが、突如、久しく感じたことがなかったある感情が心に湧き上がる。意思とは無関係に、本能が構えていたハルバードを防御へ回す。


 黄金の光をまとったショートソードとハルバードが激突すると、その衝撃が大地に伝わり森の木々が大きく揺れた!


 武器同士が打つかり合い、互いの攻撃を押し戻して弾く。


 予想以上の接近スピードに攻撃のタイミングをズラされ、急遽ハルバードによる防御に変更したオークヒーローは、バランスを崩し、ほんの一瞬だけ隙が生まれる。

 


 「まだだぁぁ!」



 そのチャンスをヒロは見逃すわけがなかった!


 ヒロは弾かれたショートソードの力のベクトルを生かし、オークヒーローの目の前で背中を見せながら、時計回りに体を回転させる。剣の勢いを殺すことなく、円の動きで攻撃の軌道を上段切りに変化させていた。リーシアがオークヒーローとの戦いで見せてくれた戦い方……ヒロは見様見真似で攻撃をつなげる。


 剣に灯る黄金の輝きがいまだ衰えず、ヒロの連続攻撃がオークヒーローを捉えた。息を止めるオークヒーローの肩に、黄金の剣が触れた時、弾かれる感触を感じたヒロは、その感触を無視して両手で持ったショートソードに、さらなる力を込めて押し込む!

 


「うおおおおおぉぉぉぉ!」


「バカな!」



 久しく感じなかったヒリつく感覚に、オークヒーローの本能が剣から逃げるように体を引いた! 剣を振り抜いたヒロは後ろにとっさに飛び、攻撃を回避したオークヒーローに顔を向ける。

 


「外したのか……」



 そうヒロがつぶやいたとき、オークヒーローの肩から腹にかけて一本の傷が入り、そこから血が吹き出した!


 ついにヒロの攻撃が、オークヒーローの絶対防御を切り裂いた!




〈ヒロの勇気が、希望の道を切り開く!〉

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