月から日まで七日で終わる(9)
これまで学校で教師として接してきた七実が、自分と同じ奇隠の仙人であるだけでなく、序列持ちの一人に名を連ねる人物だと知り、幸善は驚きを通り越して、しばらく反応できなかった。牛梁も幸善ほどではないが、七実の素性に驚いたようで、幸善と同じように隣で固まっていた。その間に、七実は控え室を順番に漁っている。
「どうして、先生が仙人を…あっ、いや、仙人が先生を…?」
ようやく幸善の口から出た疑問がそれだった。その一言に七実は一瞬顔を上げたが、すぐに視線を戻して、そんなことかと言わんばかりの軽い口調で答えてきた。
「言っただろう。表の顔だって。他に仕事をしている仙人なら、他にもいるはずだぞ?頼堂だって普段は学生じゃないか」
そう言われると確かにそうだ。学生である幸善達以外にも、
幸善が未だに困惑していると、我に返ったように牛梁が口を開いた。
「ちょっと待ってください。確かに人型の存在を把握していたり、奇隠の存在を知っていたりすることは分かりましたが、それだけで貴方が奇隠の仙人であると判断できない。況してや、序列持ちのNo.7であると簡単に信じることはできない」
牛梁の一言に七実は顔を上げ、少し考えるような表情になった。小さく、「確かに」と呟いてから、幸善達に見えるように手を上げる。
「序列持ちである証明はここではできないけど、仙人である証明ならできる」
そう言ってから、七実が掌を幸善達に向けてきた直後、生暖かい感触が幸善達を包み込んできた。温度感だけなら、強い妖気を感じた時と似ていたが、それに包まれた時に覚える安心感は妖気に懐く感覚とは真逆のものだ。それだけでなく、触れた時に何度も触れた覚えを感じたことで、その生暖かい感触の正体はハッキリと分かった。
七実は仙気を飛ばしてきた。
「確かに。仙人のようですね」
牛梁は包み込まれた感触に驚いた顔をしながら、そのように呟いた。それは幸善よりも強い驚きに見えて、意外と牛梁も驚くのかと幸善は思った。
「ですが、仙人であるのなら、頼堂や同じ高校に
「そうする約束だったから」
「約束?誰との約束ですか?」
牛梁の質問に七実は答えることなく、幸善に目を向けてきた。その視線の意味が分からずに幸善が戸惑っていると、七実は急に質問してきた。
「頼堂はどうするんだ?本部に行くのか?」
「え?本部?」
幸善の驚いた反応に、七実も同じように驚いた反応をして、困ったように頭を掻いた。
「あの人はまだ言ってないのか…」
「どういうことです」
「別に。聞いてないならいい」
幸善には良く分からないことだが、溜め息を吐きながら、七実が控え室の入口まで歩いてきた。そこで幸善と牛梁の肩を掴み、二人を無理矢理に振り向かせてくる。
「それより、次に行くぞ」
「え?次って?ここをそもそも調べてませんよ?」
慌てる幸善を気にすることなく、二人を押したまま歩き出しながら、七実がかぶりを振った。
「見ての通り、部屋の中には誰もいなかった。あそこに何か分かりそうなものはなかったし、調べる時間がもったいない」
「いやいや、三人でちゃんと調べましょうよ」
「大丈夫だって。すぐに同じことを思うから」
強引に二人を連れ出そうとする七実に困った幸善が、助けを求めるように目を向けた先で、牛梁は何かを聞こうとして迷っている様子だった。その様子に気づいた幸善がどうしたのだろうと疑問に思った瞬間、牛梁が決断したのか、七実に何かを聞くために口を開こうとした。
「ほら、先を見てみろ」
それを遮るように七実がそう言った。ショッピングモールを出て、駅の方向に歩き出そうとした直後のことで、牛梁はその言葉に開きかけていた口を閉じている。
結局、牛梁は何を聞こうと思ったのだろうかと幸善が疑問に思っていると、七実に言われるがまま、前方に目を向けた牛梁が驚いた様子で固まっていることに気づいた。どうしたのだろうかと思い、自分も同じように歩く先に目を向け、幸善は牛梁と同じように固まる。
「調べる時間がもったいなかっただろう?」
そう聞いてきた七実に幸善と牛梁は首を縦に振る。
二人の視線の先では、派手な髪色をした二人の子供が並んで歩いていた。
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