月から日まで七日で終わる(3)

 双子の目撃情報を収集することで、そこから行動パターンが特定できたり、目撃情報を追いかけることで、潜伏先を特定できたりするのではないかと、当初は考えられていたのだが、ショッピングモールで聞き込みを開始して、すぐに幸善達はその考えが甘かったことに気づかされた。


 まず、双子の出現時間は一定ではなかった。開店から閉店まで、ほぼ全ての時間で双子は目撃されていた。青い髪と赤い髪の子供は酷く目立つ。別の双子と間違えている可能性は流石にないだろう。中には片方だけの目撃情報もあったが、それだけ様々な時間帯で目撃されているということは、ショッピングモールを頻繁に訪れている可能性が高いということだ。潜伏先はショッピングモールに近い可能性が高いと考えられるが、その特定はそれらの情報からでは難しい。


 そこで双子の目撃情報を追跡したり、監視カメラの映像を確認したりすることで、双子の潜伏先を特定しようとしたが、ショッピングモールを後にした双子の行き先は出現時間帯と同じく、一定ではなかった。方向も方角も変わり、場合によっては双子が別れて、ショッピングモールから出ていく姿も目撃されていた。


 それらの情報から何かを読み取ることは不可能に思え、双子の捜索は完全に行き詰まっていた。このまま、ショッピングモールで聞き込みを続けても、何か分かるのだろうかと幸善達が疑問に思い始めた時、牛梁が唐突に疑問を口に出した。


「そもそも、どうしてショッピングモールなのでしょうか?」

「どういう意味かな?」

「人型がショッピングモールに出現する理由です。確かに人は多く、年齢や性別も多様ですが、それだけでショッピングモールを選んだのでしょうか?」

「確かに理由は分からないね。現状、そこに姿を見せているから、そこにいると私達も考えているわけだし、他に理由があるのなら、その理由を知ることで場所の特定ができる可能性はあるね」


 冲方と牛梁が真剣な表情で話し合う横顔を見ながら、幸善はショッピングモールで双子の片割れである男の子が目撃された時を思い出していた。幸善はいなかったが、その時は葉様涼介が巨大なカマキリと戦ったらしい。それも人型が用意した物であることを考えると、幸善は牛梁とは別の疑問に気づいた。


「あれ?ていうか、ここであの双子が失踪した女性と逢っていたのに、そこで人型がカマキリを暴れさせていますよね?あれって、双子の行動が奇隠に知られるかもしれない危険性がありましたよね?」

「まあ、それはカマキリの騒動で、知られる可能性のあった双子の行動が隠れた可能性もあるから何とも言えないけど、人型の連携が取れていない可能性は十分にあるね」

「人型の連携が取れていない可能性とかあるんですか?」

「その辺りは人間と同じだよ。目撃が一緒でも、そこに至る過程が違う可能性がある。言い方を変えると、役割の違いだね。それが思わぬところで競合する可能性はあるね」


 佐崎は冲方に提示された可能性を聞き、自分の中に落とし込もうとしているのか、少し考え込み始めていた。


「それなら、その目的の違いが分かれば、双子の行動パターンも分かりそうですね。失踪した女性が仮に誘拐されているとして、その目的は何なんでしょうか?」

「そこがハッキリ分からないのが難しいところだね」


 そう返答しながら、冲方は佐崎の言葉に気づいたことがあったようで、ハッとしていた。


「そういえば、女性達が失踪しているのだから、その女性達を置いておく場所は広く必要だよね?この近くにそれだけの場所があったかな?」


 冲方の思いつきを聞いた佐崎がすぐにスマホを取り出し、周辺の地図を調べ始めている。その姿にもしかしたら、双子の潜伏している場所が分かるのかと幸善が淡い希望を持ち始めた直後、思わぬ声を聞くことになった。


「あっ、君は…やっぱり?」


 その声に誘われる形で、幸善の視線が動いた。


「あっ、どうも」


 思わず幸善がそう口に出した先で、浦見うらみ十鶴とつるが軽く会釈をしてきた。

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