第22話 緑の王

レベッカ、グフォルの参戦!┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈



(緑聖国 王都ビクトルグリーン 地下水路)



レベッカはハーピーに向けて大剣を構える。

「お前が大将か?なら、首をとらせて貰う!」


ハーピーの女は、地上に降り立つと姿を人間の形に戻す。



レベッカは人間になったハーピーを見て驚愕する。

「お、お前...。まさか...!?」



レベッカの前に現れたのは、かつての同期である"レロ・スウィントスキー"だったのだ。



「どうして?何が原因だ!?」

レベッカはかつての親友であるレロが、ハーピーになっていることの理解に苦しむ。





「話を聞いても無駄ですよ、彼女にもう前の記憶はない」

後ろの地下水路から1人の男が近づいてくる。



光が当たり、男の顔が明らかになると、次はグフォルが動揺する。

「マイティマス...?」



グフォルの前に現れたのは、"マイティマス"。グフォルの同級生で元狩人である。



グフォルはマイティマスに尋ねる。

「お前たちの目的は何だ?何のためにお前はそっち側にいる!?」



マイティマスはグフォルに話した。

「簡単なことだ。"白聖国(はくせいこく)を恨んでいるから"だよ。貴様らもいずれ知る日が来るだろう、貴様らが信じている奴らは命を張るほどのものでもない!」



ソフィアは1歩前に出て言い張る。

「貴様に何が分かる!?人々を恐怖から守り、平和な国を目指す騎士を侮辱するつもりか!?」



マイティマスは急に笑いが止まらなくなる。

「くははははは。騎士が平和な国を作る?笑わせるな!世界を破滅に追い込むのは騎士だよ、白聖の騎士たちだよ。これは確定事項なのさ」



マイティマスは胸ポケットから小さな袋を取り出す。

「我ら呪術団(じゅじゅつだん)は、真の救世主だ。我らに従い、世界は新たな夜明けを迎えるのだ。樹化異(きかい)の世をな」



マイティマスは笑いながら小さな袋を地面に投げつける。


袋から出現した煙の中にマイティマスとレロは消えてしまう。





煙が消えると同時に神鹿は呟いた。

「何だか君たち2人は複雑な関係なんだな...」


レベッカは大剣を固く握りしめる。

「レロ...。絶対にオレは許さない...」


グフォルはレベッカの元に歩み寄っていく。

「レベッカ、今は切り替えろ。樹化異がまだ残ってる」




突然、地上から大きな音が聞こえる。


音に伴い、地震のような揺れを地下水路に襲う。



神鹿はオーロラ王女の元へ近寄っていく。

「貴女はすぐに城に戻るべきだ。さあ、行くよ。『大地演舞(だいちえんぶ)・天空階段(てんくうかいだん)』」


神鹿は大地の土を利用して、地上への螺旋階段を作り上げる。



「さあ、急いで!国を守るんだ!」

神鹿はオーロラ王女に言う。


戸惑うオーロラ王女の元にソフィアが近寄ってくる。

「オーロラ王女、行きましょう。私も共に行きますから」


オーロラ王女はソフィアの言葉に頷くと、螺旋階段に足をかける。



果てして、城で何が!?┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈







━━━━━━━━━━━━━━━



(緑聖国 王都ビクトルグリーン ロス城前)



城の門の前にて...。


シヴァはDW(ドラゴンウォーリアーズ)のギルドマスターからの連絡を受け、門の前で待機していた。




すると、門の前に1人の男が近寄ってくる。


「待たせたな、シヴァ」

やってきたのは、肩まである癖のない髪を頭の上で束ねた男、先輩の"イーサン・ブレッド"であった。


「イーサン、いったい何があったのさ?」

シヴァは急な連絡の真相を尋ねる。


「ここに魔女カリオスティアがいる。ユグの鷹がようやく"呪術団(じゅじゅつだん)の本拠地を見つけた」

イーサンは鞘から太刀を抜きながら話す。


「突撃するのかい?」

シヴァは地面に魔法陣を描き、朱殷の槍を取り出す。



「当然だ、行くぞ!」

イーサンは先陣をきって城の門を蹴破り、中へと侵入する。




「シヴァ、私と希麗(きれい)は裏から回る」

紅覇(くれは)はシヴァに話しかける。


「分かった、中で合流よろしくさ!」

シヴァはエドとカリティアを連れて正面から中へと侵入する。



「よし、行きましょう。紅覇ちゃん」

希麗は紅覇に呼びかけると城の裏側へ回る。






┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈



(ロス王城 正面入口)



正面入口を入ったイーサンとシヴァたちは驚愕する。



「これは...」

イーサンは驚きの光景に言葉を失ってしまう。




そこにいたのは、樹化異(きかい)にされた大量のゴブリンたちであった。




緑聖国(りょくせいこく)の山奥には多くの獣人(じゅうじん)たちが棲んでいる。


中でも、ゴブリンやエルフといった種族は数がかなり多い。







大量のゴブリンたちに指揮をとる謎の男。

「やはり来たか、DW。いや、イーサンよ」


謎の男は被っていたフードを取る。




イーサンは男の顔を見て仰天する。

「親父...。いや、殺人者メゴ!」



メゴはイーサンに話を続ける。

「久しぶりだな、息子よ。まだ狩人を続けていたのだな。父さんは尊敬するよ」



イーサンは黒刀の太刀をメゴに向けて構える。

「お前が親父面するな!テメェはここで狩りとる!」



イーサンはメゴに向かって突っ込んで行く。

「シヴァ!ゴブリン共を任せる!」




シヴァは槍を地面に突き刺し、魔法を唱える。

「ここは慈悲なき魔界、『聖火・業火煉獄(ごうかれんごく)』」


シヴァが魔法を唱えると、炎の魔法陣が城の地面に描かれ、樹化異たちだけを黒炎の炎で巻き込んでいく。




塵になっていく樹化異たちの間を駆け抜け、イーサンはメゴに向かって斬りかかる。




「また会おう、息子よ」

メゴはイーサンの太刀が首に触れる寸前で、ポケットから小さな袋を取り出して、煙を出して姿を消してしまう。



イーサンは消えた煙に向かって黒刀を振るう。

「クソが!」






次の瞬間、城の奥のフロアにある玉座に続く扉が爆発する。


爆発と共に、爆煙がエントランスに立ちこもる。



カリティアは埃に咳き込む。

「げほっ、げほっ...。何なのよ...、これは...」


エドは目を押さえる。

「煙で何も見えないっス...」






爆煙に紛れて、女医ジェガルタと研究医ルーシェアが姿を現す。



シヴァは2人に違和感を感じる。

「嫌な予感がするさ。まさか...!?」





女医のジェガルタと研究医ルーシェアの後ろから国王が姿を現す。



イーサンはジェガルタとルーシェアに黒刀の刃先を向ける。

「お前らの素性はバレている。悪いが狩らせて貰う!」




研究医ルーシェアは1歩前に歩み寄ると、地面に魔法陣を描き、大きな杖を取り出す。

「悪いが貴様ら雑魚の相手をしている暇はないのでな。それに今から面白いショーが始まる、存分に楽しむがいい」


大杖を持ったルーシェアの姿は変形し、次第にその姿は"魔女カリオスティア"になる。



シヴァは魔女カリオスティアを指差す。

「やはり君の正体は魔女だったのか!逃がす訳にはいかない!」




魔女カリオスティアは杖を持っていない右手で口を隠して笑う。

「ふっははははは。悪いが逃げさせてもらう。首なら次の機会にしてくれ。まあ、次があればだがな?」


カリオスティアは杖を空高く掲げると、女医ジェガルタを連れ、地面から湧き出す煙の中に消える。





カリティアは国王を指差しながら怯え始める。

「し、シヴァ...。あ、あれ...!?」


シヴァはカリティアが指差す方向に目を向けて驚愕する。





開花の樹化異に変貌を遂げた国王。


しかし、体長は3メートルを超え、さらに全身の色は真っ白であった...。





恐怖の白樹化異...!?┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈





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