第21話 和国の少年"神鹿仙師"
城を訪れる1人の少年┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
(緑聖国 王都ビクトルグリーン)
車を走らせるカリティア。
少し大きな魔動車(まどうしゃ)の中にて、シヴァたちはオーロラ王女の話を聞くことにした。
情報屋のゾロロはオーロラ王女に質問を投げかける。
「王女、いったい城で何があったのですか?」
オーロラ王女は両手共に膝の上で握り締める。
「父は...、不治の病にかかっているんです。父が病気にかかってから国にやってきた女医と研究医が作った薬を飲み続けた父は、次第に調子を取り戻し、今では何もなかったかのように元気になったのです」
エドはオーロラ王女に尋ねる。
「元気になったのならいいことじゃないんっスか?」
オーロラ王女は首を横に振る。
「手術も検査も何もしないで、薬だけ支給するんです。大臣に相談しても全く相手にして貰えず...」
希麗(きれい)はオーロラ王女に話す。
「えっ、薬だけで治す!?絶対に無理、ありえない!」
ソフィアはオーロラ王女に話す。
「オーロラ王女、我々は誰を倒せばいいのですか!?」
ソフィアのやる気満々の目を見て紅覇(くれは)は呟く。
「ソフィア、目が怖い...」
オーロラ王女はソフィアに話す。
「恐らく女医と研究医は何かを調べているに違いない。きっとあの2人よ、何かを隠してる!」
車内で話す中、カリティアは皆に告げる。
「そろそろ城に着くよ。って何!?」
男が車の前に急に現れる。
カリティアは急ブレーキをかける。
車内の皆は体を強く打つ。
カリティアはフロントガラスを見ると、立っていたはずの男が消えているのである。
「あれ?あの男は?」
カリティアは男がいないことが不思議になって車を降りようと横のガラスを見る。
「こ・ん・ば・ん・は」
車の前に現れた男が運転席の横に現れる。
「ぎゃー!!出たー!!」
カリティアは叫び声をあげる。
「君は誰だい!?」
シヴァは急いで車から降りる。
「誰って、何言ってるの? 神鹿仙師(かみしかせんし)、久しぶりだな、我が"同志"よ」
和柄のジャケットに裾の大きなパンツ、髪は後ろで束ね、おまけに錫杖(しゃくじょう)を手に持った和人が立っていた。
ソフィアも車を降りて神鹿(かみしか)に話しかける。
「貴様のような男は知らん!今は時間がない、そこをどいて...」
「神鹿!」
シヴァはソフィアの言葉を遮って神鹿の元へ近寄っていく。
神鹿は近寄ってきたシヴァの肩を叩きながら話し始める。
「よっ、シヴァ!樹化異について色々と調べた。どうしても納得がいかないことが俺にはあった。"どうして詩音(しおん)の魂はこの世にあり続けているのか"だ。で、それを調べようとこの国の図書館を目当てにやってきた」
シヴァは神鹿に尋ねる。
「神鹿、でもどうして城にむかっていたんだい?」
神鹿はため息をつく。
「はあ...。さっき狩人らしき女が眼鏡をかけた男に連れられて城の中に入っていった。アイツの顔は何回も新聞に出てるから間違えないぜ」
オーロラ王女は神鹿の前にやってくる。
「ルーシェアについて何か知っているのですか!?」
神鹿は頭を掻きながら答える。
「いや、知らねぇ。ただ秘密の地下があることは知ってるぜ」
オーロラ王女は神鹿の手を握って頼み込む。
「お願いです。私をそこへ連れて行って下さい!」
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(城外酒場 地下)
神鹿、オーロラ王女、ソフィア、ゾロロの4人は酒場に存在した地下水路から城の方へ向かった。
水路は両脇に歩行できる道があり、真ん中が川のように水が流れていた。
ソフィアは歩きながらゾロロに尋ねる。
「ゾロロ、シヴァは?」
ゾロロはソフィアに教える。
「マスターのユグレッドから急に連絡が入ったらしい。理由は分からんが上で待つらしいぞ」
ゾロロは神鹿に尋ねる。
「お前を信じていいんだろうな?神鹿...」
神鹿はゾロロに名刺を渡す。
「俺は和国で"特殊魔導機動部隊(とくしゅまどうきどうぶたい)"ってのに所属している。安心しろ、俺らは強い。それに"同志(どうし)"のことは絶対に裏切らない」
ソフィアは神鹿がシヴァのことを"同志"と言ったから信じることに決める。
暗い地下水路を進んでいると少し開けた場所に出る。
閉鎖的だった通路とは違い、球体で広々とした空間になっていた。
水路も心持ち広くなって奥へと流れているように感じる。
おそらく城の真下に来た証拠であろう。
神鹿は急に足を止めて話し出す。
「そこにいるんだろ?出てこいよ」
神鹿の呼びかけに応えて1人の男が現れる。
オーロラ王女は男の姿を見て驚愕する。
「大臣...!?」
ソフィアたちの前に現れたのは、緑聖国(りょくせいこく)のジェマー大臣であった。
ジェマー大臣はオーロラ王女に話し始める。
「これはこれは王女様、物騒な連中をつれて何をされているのですかな?」
オーロラ王女はジェマー大臣に尋ねる。
「それはこちらのセリフよ!貴方はここで何をしていたの!?」
ジェマー大臣はかけていた眼鏡を拭き始める。
「決まっているではありませんか。人体実験ですよ」
オーロラ王女は大臣が発言に理解できなかった。
「待って...。人体実験!?何のこと!?」
ジェマー大臣は手元のスイッチのレバーを下げる。
すると、水路の奥に明かりが灯される。
そこには、無数の樹化異と1匹のハーピーが檻の中に閉じ込められていた。
オーロラ王女はジェマー大臣に問いかける。
「それは何だ!?何をした、貴様!」
ジェマーはほくそ笑む。
「さあ?ご自分で確かめてみては?」
ジェマーはレバーの下のボタンを押す。
警報音を鳴らしながら、檻の中から大量の樹化異と1匹のハーピーが飛び出す。
「さあ、お前たち!愚か者どもを喰い殺せ!」
ジェマー大臣は嬉しそうな顔を浮かべる。
しかし、ジェマー大臣の背後からハーピーが足の鋭く尖った爪で、心臓と頭を突き刺す。
血吹雪を上げながらジェマー大臣は暗い水の中に落ちていく。
ハーピーは狂気的に笑いながら人語を話し始める。
「ぎゃはははははははは。死んだか?死んだ!次は...、お前たちだ!」
ハーピーはオーロラ王女と目を合わせると、鷲の飛行速度でオーロラ王女の元に飛行する。
「オーロラ!危ない!」
ソフィアは慌てて庇おうとしたが、間に合わない。
「くそっ...」
ゾロロも鎖を投げようとするが、間に合わない。
『大地演舞(だいちえんぶ)・羅生門(らしょうもん)』
神鹿は錫杖で地面をつくと、魔法陣が出現する。
すると、オーロラ王女の前方の地面がせり上がり、目の前に巨大な門が創造される。
ハーピーは門に体を強く叩きつけて、地面に倒れ込む。
ハーピーは神鹿に問う。
「お前、何者だ!?」
神鹿は錫杖を回しながら答える。
「鳥女に名乗るつもりはない。戦闘苦手何だよな...」
神鹿はソフィアの方を向いて話し始める。
「多分だけど城が危険だ。王女を連れて早く向かえ」
ゾロロは神鹿に話しかける。
「そんな余裕はない。よく回りを見ろ!樹化異に囲まれた...」
ゾロロの言ったとおり、神鹿たちは樹化異に四方を囲まれていたのだ。
逃げ場のない状況...、そんな時だった。
水路の奥から魔導式(まどうしき)の水上ボートが近寄ってくる音が聴こえる。
「樹化異!貰った!『爆(ばく)・斬(ざん)』」
水上ボートから飛び降りた1人の女は持っている大剣を振り下ろす。
飛んでもない破裂音と、爆風、水しぶきをあげて樹化異を吹き飛ばす。
水上ボートを運転していた男がボートから降りながら言う。
「おい、もう少しマシな登場があっただろ?」
吹き飛ばした女は笑いながら言う。
「はっははははは。そんなの派手な方がカッコイイに決まってるだろ!」
ゾロロは現れた2人を見て納得する。
「なるほど。応援に駆けつけたわけですね。レベッカさん、グフォルさん」
地下水路に現れたDW(ドラゴンウォーリアーズ)のレベッカとグフォル。
緑聖国での戦闘開始!┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
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