第19話 世界一の図書館
病気で寝込む国王┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
(緑聖国 王都ビクトルグリーン)
「父上...」
緑聖国(りょくせいこく)の王女である"オーロラ・ヨハネス"は国王である父の寝床の横に座る。
「オーロラ...、いたのか...」
国王の体はかなり弱っていた。
不治の病にかかっており、ここ1年間は寝たきりの状態が続いている。
国の政治は、大臣の"ジェマー"が代わりに行っていた。
国王の寝室に1人の女が入ってくる。
彼女は、"ジェガルタ"。国王の専属医を務めている。
「国王陛下、お薬をお持ちしました」
ジェガルタは緑一色の錠剤を3粒、国王に手渡す。
ジェガルタが来てから国王の容態は少しずつ良くなっていた。
話すこともできないほど衰退していた国王の病が、今では娘のオーロラと会話ができるほどだ。
「(怪しい...)」
オーロラ王女は常に女医ジェガルタのことを疑っていた。
国王の寝室を覗く1人の男。
研究医"ルーシェア"。かつて白聖国で生物教授として人獣の研究の第一人者である。
果たして、彼らは何者なのか...!?┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
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(緑聖国 王都ビクトルグリーン"グリーンライブラリー")
世界一の蔵書を誇る巨大図書館"グリーンライブラリー"
世界のあらゆる書物が存在するグリーンライブラリーの大きさはまるで博物館のようであった。
一面に広がる本の数々、そのジャンルは多岐に渡った。
医学、科学、歴史、経済から魔法学、錬金学、薬学、音楽など全てのジャンルを取り扱っていた。
グリーンライブラリーでは、一切の持ち出しを禁じている。
その代わり、グリーンライブラリー内のホテルで本を好きなだけ読むことができるようになっていた。
そんな中、学習エリアにて本を山のように積み上げている人物がいた。
シヴァの元で働く情報屋ゾロロである。
「はあ、ダメだ...。何が何だか...」
チームシヴァは、ケモンによって壊された(※シヴァが壊した)家の修復の間、樹化異や生命樹の情報を求めてグリーンライブラリーを訪れていたのだ。
ゾロロの横で山のようにある本を片っ端から読み漁るシヴァ。
ゾロロはシヴァに尋ねる。
「読むのが早いな、どうやって読んでいる?」
ゾロロはシヴァのことをよく見ると本の背表紙を眺めて触るだけを繰り返していたのだ。
「お前、読んでないのかよ!」
ゾロロはシヴァに呆れる。
「何言ってるのさ、内容はちゃんと理解しているさ。学校時代に得意だった魔法があって、それが"速読術(そくどくじゅつ)"さ!本を背表紙触るだけで理解する魔法。その日しか置いてなくて今ではもう無い本なんだけど」
シヴァはゾロロと話しながらも本の背表紙に次々と触れていく。
ゾロロは不安になる。
「本当に大丈夫なのか、こんなので...」
シヴァはゾロロに笑顔を向ける。
「大丈夫さ!」
ゾロロはため息をついて右隣のシヴァから左隣に視線を向ける。
ゾロロの隣で必死に薬学の勉強をする希麗(きれい)と、料理本を読むエドの姿があった。
「お前ら、何してるの?」
ゾロロが2人に尋ねる。
2人はゾロロの方を見ることなく呟く。
「えっ、休憩中」「休憩っス」
ゾロロは読んでいる本を机に置いて呟いた。
「ダメだこりゃ...」
ゾロロの前に座るカリティアは眼鏡を取り出して真剣に本を読んでいた。
ゾロロはカリティアの読んでいる本を覗き込む。
「ちょっと、何よ!」
カリティアが本を胸に隠すと、ゾロロに本のタイトルが見える。
「"怪盗ファントム"!?って小説じゃないか!」
ゾロロはカリティアに怒る。
「あっ、怪盗ファントム!知ってるさ!」
シヴァは立ち上がってカリティアに話しかける。
「うそっ!ホントに!めっちゃ面白い!ってか結末言わないでよ」
カリティアも立ち上がってシヴァと小説の話を始める。
「お前ら!ちょっと真剣に...」
ゾロロはカリティアとシヴァに怒りかけた時だった。
机の方にソフィアと紅覇(くれは)が嬉しそうに本を沢山持ってやってきたのだ。
「ソフィア、紅覇!お前たち、その本は何だ?」
ゾロロは2人に尋ねる。
ソフィアと紅覇は顔を見合わせてからゾロロの方を向いて答えた。
「世界の絶品デザート集」
「よし、お前ら全員ちょっと来い」
ゾロロの怒りは頂点に達したのだった。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「全く、ゾロロは酷いさ。何もゲンコツすることでもないさ...」
シヴァは頭を押さえながら要らない本を戻しに向かっていた。
「仕方ないです。沢山の本を前に私自身、舞い上がってしまった。深く反省しております...」
ソフィアも純文学の小説を両手に抱えて歩いていた。
ソフィアは本を戻す途中、1冊の本から目が離せなくなる。
「"国境なきサーカス団"?」
本を戻し終えたシヴァはソフィアの元にやってくる。
「ソフィア、ここにある本も戻しておくさ」
ソフィアはシヴァを呼ぶ。
「シヴァ、この本を見たことありますか?」
ソフィアはシヴァに"国境なきサーカス団"の本を見せる。
シヴァは何か思い出したようにソフィアの方に近づいていく。
「見たことあるさ。昔、父と母がよく読んでくれた本さ。凄い悲しい最後だから僕はあまり好きじゃないさ...」
ソフィアが本を棚に戻そうとした時、本から1枚の写真が地面に落ちる。
シヴァは写真を拾い、表を向ける。
ソフィアはシヴァの見る写真を覗き込む。
「何の写真でしょう?」
シヴァは首を傾げる。
「さあ、かなり古い写真さ...」
ソフィアとシヴァは写真を見て違和感を感じる。
写真の真ん中にいる男性と女性の顔が自分たちの顔によく似ているのだ。
シヴァは写真を指さして話し出す。
「これ、僕の父さんだ...」
ソフィアはシヴァに言う。
「ほ、本当ですか?これが、シヴァの...?」
シヴァはさらに写真について話す。
「滝壺の寺院(たきつぼのじいん)で過ごしていた時さ。覚醒児の僕は本当の両親の顔を知らなかった。真実の泉で顔を覗き込むとそこに写ったのはこの人の顔だったのさ」
ソフィアは写真の端にいる2人の男女を指さして言う。
「シヴァ、この2人。居酒屋にいたフィッシャーとピクシーではありませんか?」
シヴァはさらに写真を見て驚く。
「ホントだ。しかも、この人は僕の村の村長、この人はホワイトスクールに通ってた頃の下宿先の家主さ...」
シヴァとソフィアが2人で写真を眺めていると1人の少女が現れる。
「お兄さん、お姉さん...。そっくり...」
眼鏡をかけたポニーテールの少女は2人の顔を見て感嘆する。
少女はシヴァとソフィアの元に近寄ってくると、シヴァの持っている写真を見てからもう一度同じことを呟く。
「ほら、やっぱり似てる...」
ソフィアは少女の身長に合わせてしゃがみこむ。
「お嬢さん、お名前を聞いてもいいですか?」
「私はクロエナ。クロエナ・ジョバンニ」
クロエナは胸に手を当てて名を名乗る。
「おーい、クロエナ。そろそろ帰るぞ」
クロエナの元に金髪の派手な男が近寄ってくる。
「あっ、おじちゃん!じゃあ、またね」
クロエナは元気よく手を振ってシヴァたちに別れを告げる。
「知り合いか?」
派手男が尋ねる。
「ううん、さっき知り合った人たち」
クロエナは派手男の太ももに抱きつく。
「そうか。この子がお世話になりました、では失礼」
派手男は見かけによらず丁寧な対応をしてシヴァとソフィアの元から去っていった。
「素敵な2人でしたね、シヴァ」
ソフィアは2人の姿に心が温まる。
「うん、ホントにそうさ」
シヴァも2人が仲睦まじく去っていくのを見つめる。
「ここにいた!イチャついてないでさっさと戻ってきて手伝え!」
ゾロロの怒号が図書館中に響き渡る。
果たしてあの2人は何者なのか?
写真の人物は誰なのか?┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
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