第18話 精霊魔法使いが集う場所

ソフィア、命の危機┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈



(ノースタウン シヴァの家)



シャワー室でスライムに飲み込まれるソフィア。


「(えっ、えっ!?)」

突然の登場でソフィアは恐怖のあまり泣くことしかできなかった。



スライム男のケモンはソフィアの体を品定めするような下衆な眼差しで見る。


「良い女だな。どうだ?俺の女になるか?」

ケモンはナイフを取り出すとソフィアの太ももにナイフをあてる。



ケモンがソフィアに手をあげようとしたその時だった。





『聖火・炎駒正拳(えんくせいけん)』

左の腕が真っ赤な瑞獣の麒麟(きりん)の形をした炎で覆われた拳がケモンの顔を殴る。


ソフィアを助けにシヴァがシャワー室にやってきたのだ。


シヴァは力を込めすぎたせいでケモンを家の外まで吹き飛びしてしまう。



シヴァはケモンになど目もくれずソフィアにタオルを被せる。

「ソフィア、無事かい?」


ソフィアはシヴァの体に抱きつく。

「シヴァ...。ありがとう、ありがとう」


ソフィアは涙を流しながらシヴァの胸に飛び込む。


シヴァは怯えるソフィアを力強く抱きしめる。







(ノースタウン 酒場街の広間)



ケモンは脇腹から溢れ出す血と、全身に負った火傷の痛みに耐えながら夜道を歩いていた。



「ちょっと、そこのアンタ」

1人の美人なショートカットの女が話しかけてくる。



ケモンは鼻の下を伸ばして女の声かけに応じる。

「へえ、良い女。何だ?」



ショートカットの女はケモンに話す。

「アンタさ、私が誘ったら言うこと聞いてくれる?」



ケモンは女の言っている言葉の意味が理解できなかった。

「どういう事だ?俺と呑みたいのか?」



ショートカットの女はケモンに尋ねる。

「なに?飲みたくないの?サービスするよ」



ケモンは唇を舐めると、ショートカットの女に近づいていく。

「いいぜ、遊んでやるよ」




ケモンは心の中で思う。

「(アホな女だ。俺から金を騙し取る算段だろうがお前は俺のスライムに飲み込まれて死ぬんだ。久しぶりの女、騎士の女は諦めてコイツに乗り換えるか)」



ケモンとショートカットの女の駆け引きの勝負が始まる。






勝負は一瞬で着いた。



ケモンは何もする間が全く無かった。



気がつくとケモンの首は地面に落ちていた。



「(おいおい、どうなってやがる?スライム男の俺が何故再生しない!?)」

ケモンは状況を理解するのが遅すぎた。



「アンタはアタシの家族を傷つけた。その時点で生きてる価値なんて無いんだよ。だから、死にな」

妖刀を片手に現れたショートカットの女は、DW(ドラゴンウォーリアーズ)のギルドマスター、ユグレッド・クリスタルであった。



太刀を鞘に納めるユグレッドにケモンは尋ねる。

「貴様、何者だ...?」



ユグレッドは魂が消えかけているケモンに言う。

「天才だよ」



「何だ、それ...」

ケモンは首から血を吹き出してその場に崩れ落ちる。




「事実だよ」

ユグレッドは緋色のコートを揺らしながら酒場街を後にする。





狩人ギルド内で理解していることがある。


貴族が決めた狩人ギルドの強さを現す指標は全くもって外れている。



世界で最も敵に回してはいけない集団"DW"。


中でも現ギルドマスターの異名は世界の強者なら誰もが知るほど有名である。




"天才 ユグレッド・クリスタル"




単純な力比べをして彼女の右に出る者はこの世にいない。












━━━━━━━━━━━━━━━



(謎の空間)



小さな滝が流れる謎の空間。


4つの大きな岩、自然のドーム、選ばれし者のみ入れる空間。


見たことない花、見たことない草、陽の光が差し込まないにも関わらず、常に明るい空間。








そこに1人の男が現れる。


白髪の身長の大きな老人、肉体は健在で背筋は全く曲がっていない。


長い髪を後ろで束ね、趣味の葉巻を咥えている。



老人は座禅を組む蜥蜴のような生物"サラマンゴル"の石像の上に座る。






老人に続いて青い髪に大きな瞳、実った胸に立派な下半身、実に妖艶な美女が現れる。



美女は人魚の石像の頭の上に登る。





老人は美女に話しかける。

「マリン、元気そうだな」


美女マリンは老人に笑顔で話す。

「まあ、お気遣い気持ち悪いですわ。大賢者イフリート」


大賢者イフリートはマリンの胸を見ながら尋ねる。

「で、今日こそワシを強く抱擁して...」



大賢者イフリートは最後まで話す前に、後ろから現れた茶髪の少女に頭を踏まれる。


風を纏い、空を飛びながら茶髪の少女は、妖精の石像の背中に座る。



マリンは茶髪の少女に話しかける。

「御機嫌よう、ベリンダママ。いつもの不機嫌な顔、素敵ですわ」


ベリンダはマリンに応える。

「マリンの方こそ、呪われた男のお世話、お疲れ様」


マリンは常に笑った顔を崩し、ベリンダを睨みつける。

「ベリンダママ、言葉には気をつけなさってよ。次言えば殺して差し上げますわ」


大賢者イフリートは手を挙げて述べる。

「はい!ワシはマリンでもベリンダでも殺されても良いぞ!」


ベリンダとマリンは大賢者イフリートのことを汚物を見るような目で見る。



大賢者イフリートは石像を指で触りながらいじける。

「そんな目で見なくても...」




「全員揃っているようだな」

眼鏡をかけた小柄な老人は巨人の手のひらの石像の上に座る。



「何だ?勝手に話進めやがってゲノモスがよ」

大賢者イフリートはゲノモスが現れると途端に不機嫌になる。


「貴方は相変わらず私がお嫌いですね、大賢者殿」

ゲノモスは淡々と話を進める。



「今日集まった理由は既に知っておられるでしょう。5人目の適合者に関してです」

ゲノモスの意味深な発言に他の3人は硬直する。


「5人目?どういうこと?」

ベリンダは目を細めてイフリートの方を見る。



イフリートは腕組みをしながら話す。

「ワシの魔法に打ち勝った奴がおる。彼は間違いなく適合者だ」


マリンは笑顔を取り戻して話す。

「イフリート様も引退ですね。やはりあの少年への適正は間違いではなかったということになりますね」



ベリンダはマリンに尋ねる。

「マリン、知ってたの?」


マリンはベリンダの方を向いて頷く。

「はい、もちろんですわ。彼が認める魔導師の1人ですから」



大賢者イフリートは新しい葉巻に火をつける。

「いいか、お前たち。この件で最も重要なのは"この中に裏切り者"がいるってことだ!」



大賢者イフリートを含め、4人の顔が一気に強ばる。



ゲノモスは話し出す。

「しかし我々は認めねばならぬ。彼が例え異端であったとしても、彼もまた選ばれし者である」


ベリンダは言う。

「ここで決めるのは賛成か、反対か。そうでしょ?」


マリンは頷く。

「そうですわね、賛成か反対かの投票でしたわ」


大賢者イフリートは尋ねる。

「よし、じゃあ賛成の奴は右手を挙げろ」



イフリートの呼びかけから4人は同時に右手を挙げる。



大賢者イフリートは言う。

「よし、全員賛成だな」



ゲノモスは告げる。

「では、ここに承認しよう。"シヴァ・グリフィン"、彼を新たに"炎の精霊魔法使い"であることを!」



集いし4人の魔導師、彼らこそ世界でたった4人の選ばれし者、"精霊魔法使い"。



そしてこの場所は、"妖精島(ようせいとう)"





異例の5人目...!?┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈





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※精霊魔法使い


世界に4人しかいない魔法使い


『人とは違う種族から、人が産まれる。

その子供が精霊魔法使いである』


彼らは人ではなかったが、シヴァは人として産まれた。



果たして、これは何を意味するのか...?

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