第13話 魔女"カリオスティア" 登場

城に現れる樹化異の群れ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈



(オシリス城)


ジャスミン姫を連れて部屋の外に出る、島華国王子の珀麗考(はくりきょう)と騎士ソフィア・オリヴァー。



珀の指示でオシリス城で最も安全な部屋へと向かうことになる。



ジャスミン姫の案内の元、3人は国王の寝室を目指した。


ジャスミンが言うには、兄の寝室の奥には隠し階段があり、外へ出られるようになっている。






(オシリス城 食堂)



ソフィアたちが寝室に向かい、食堂の横を走り抜けようとした時だった。


食堂に向かってくるハイラト国王は何かに怯えているようだった。



珀はハイラト国王の背中をゆっくりと摩る。

「大丈夫ですか、ハイラト国王?」


ハイラト国王はジャスミン姫の顔を見ると思いきり抱きしめる。

「ジャスミン!良かった、ジャスミンは生きてた、良かった!」


ジャスミン姫はハイラト国王に怯えている理由を尋ねる。

「兄様、一体何があったのです?」






ハイラト国王が話そうとした時、ハイラト国王の背後に1匹の蛇がいることに気がつく。


蛇は体を変形させ、蛇の口から人間の女性が出現する。


黒いマントを羽織った、長髪の黒髪をなびかせ、大きな蛇の杖を持った女は薄ら笑みを浮かべる。

「御機嫌よう、ハイラト国王。君の大事なヘスティアがこのような姿になったのがショックだったかな?」



珀は黒い魔女に向かって真相を問う。

「貴女はとても変装が得意なようだ、元ヘスティア妃。本当は何者なんだ、君は?」



黒い魔女は笑いを押し殺す。

「くっふふふ。私は"カリオスティア・スリラー"、呪術団(じゅじゅつだん)を率いる魔女さ」



カリオスティアの名を聞いたソフィアは手が震え始める。

「カリオスティア...、まさかあの魔女だというのか...?」



カリオスティアは笑いが我慢できなくなる。

「くはははははは。私も有名になったものだ。しかし、この城の騒動は時間稼ぎに過ぎない。つまり私が戦うまでもない。だからコイツらと楽しみな」


カリオスティアは杖を2回地面につくと、2人の男が脇に現れる。



1人は騎士の鎧を身にまとった男、もう1人は顔を黒のマントと仮面で隠した男。




カリオスティアは2人の男に告げる。

「子奴らを殺し、王国を混乱に導け。無理はするな、あれができれば戻ってこい」



『カースト ワープ』

カリオスティアは杖から黒い光を放つと、光の中に吸い込まれるように消えてしまう。




「待て、魔女!」

ソフィアは慌てて黒い光に飛び込もうと向かっていく。



ナイフを持った仮面マントの男が接近し、ソフィアの首元にナイフを突きつける。

「ケヒヒヒヒ。楽しもうぜ、お嬢さん」



ソフィアは足元に魔法陣を出現させ、全身に騎士の鎧を纏い、両手剣を右手に出現させ、男に向かって斬りかかる。


「貴様と楽しんでいる暇などない!」

ソフィアは男の左肩から真下に斬りつける。



しかし、仮面マントの男の体は緑色の粘液になり、体が分裂する。

「俺は人間じゃない、改造人間。カリオスティア様から力を授かりスライム人間になったのだ」


スライムの男はソフィアの鎧の体に分裂した体を纏わり付かせる。



ドロドロとしたスライムにソフィアはパニック状態になる。

「くそっ!何だこの液体は!?」


ソフィアは思いきって鎧を脱ぎ捨てる。



しかし、隙を作ったソフィアの顔面をもう1人の騎士の男が斬りかかる。

「騎士とは思えぬ、隙がありすぎだ」


ソフィアの顔を捉えると思われた騎士の大剣は、ソフィアの甲冑だけを斬り、目の前でピタリと止まる。



「少し遅かった、すまない」

ソフィアの前に立つ珀は、素手で大剣を受け止めていた。



「小僧、俺の相手を武器無しでするつもりか?」

騎士の男は珀に尋ねる。


珀は笑顔で騎士の男に返答する。

「もちろん、僕は君に斬られる心配がないからね、絶対に」



騎士の男は珀の言葉を聞いた途端、大剣を水平に振り、珀の首を狙う。


珀は騎士の男の頭上に飛び上がる大飛躍をすると、騎士の男の脳天をかかとで蹴り潰しにかかる。

『硬皮(こうひ)・雷蹴(らいしゅう)』



落雷のような轟音をあげ、珀の蹴りは地面を破壊し、騎士の男を1階へと蹴り落とす。



珀は穴の方を指さしながらソフィアに話しかける。

「彼は私が引き受ける。君たちは安全な場所へ向かってくれ」


珀は騎士の男を追って下へと降りていってしまう。




残されたソフィアはスライムの男に向かって両手剣を構える。

「ジャスミン、貴女は逃げて下さい。彼は私が相手にします」


ジャスミンをおいてハイラト王は一目散に逃げる。


ジャスミンは逃げることをせず、怯え始める。

「ソフィアさん、樹化異が...」


ソフィアは後ろにいるジャスミンの方を見ると、無数の樹化異が背後から歩み寄って来ていたのだ。



スライムの男は嬉しそうに笑う。

「ケヒヒヒヒ。お前たちに逃げ場など無い、ここは樹化異の巣窟。お前たちは樹化異に殺されて死ぬんだ」



ソフィアはスライムの男を睨みつける。

「何を言っている!?懸命に生きる我々人間の人生を貴様らの好きにはさせない。お前たちの自由になどさせてたまるか!」



スライムの男は笑みを崩さず告げる。

「ケヒヒヒヒ。殺れ、樹化異たちよ」




スライムの男に合わせて樹化異たちは両腕を一斉にジャスミンに向けて伸ばす。


ソフィアは慌ててジャスミンを庇おうと向かう。


がら空きのソフィアの背後を狙ってスライムの男がナイフを差し向ける。







絶体絶命の危機、次の瞬間...。




ソフィアとジャスミンの体に鎖が巻き付き、天井に引っ張られる。


天井には穴が空いており、ソフィアとジャスミンは気がつけば3階の書斎に着地する。



『ツインチェイン アームモード』

ソフィアとジャスミンを助けたのはゾロロの鎖であった。


ソフィアの目の前には紅覇(くれは)や希麗(きれい)たちもやってきていた。


ゾロロはソフィアに城の状況を尋ねる。

「おい、ソフィア。これはどういう状況だ?そこら中に樹化異がいて、身動きとれないぞ」


カリティアはゾロロと違ってソフィアを抱きしめる。

「ソフィちゃーん、無事で良かった!本当に心配したのよ!?」


エドはソフィアとジャスミンに何故か紅茶を差し出す。

「良かったっスよ。俺達もシヴァに言われて飛んできたんっス!まあ、まず飲んでくださいっス」


希麗はエドの紅茶を飲みながらソフィアに話しかける。

「そお、この紅茶本当に美味しいの。ねえ、ソフィアちゃんも飲んでみて」


ソフィアは希麗とエドの突飛な行動に戸惑う。

「希麗、エド...。ここは樹化異の巣窟になっているのですよ?紅茶は後にしましょう...」



ジャスミンはこの時感じた。

「(シヴァ様の仲間...?嘘でしょ、何て個性...)」



そんな中、紅覇は立ち上がり戦闘態勢をとる。



すると3階の床に空いた穴からスライムの男が飛び出してくる。

「それで逃げたと思っているのか?」


出てきた瞬間、紅覇はモグラ叩きをするかのようにスライムの男を再び2階へと蹴り落とす。




スライムの男はもう一度穴から現れると紅茶を飲んで落ち着く光景を目の当たりにする。

「よし、お前たち...。って何してんだ!?」


スライムの男は紅覇にもう一度蹴り落とされる。



希麗は紅覇に紅茶を差し出す。

「紅覇ちゃん、蜂蜜入りの紅茶ができたわよ。さぁ、こっちで飲みましょ」


紅覇は蜂蜜の言葉を聞くと目を輝かせて希麗の横に座って紅茶を飲み始める。




スライムの男は再び穴から出現する。

「おい!調子に乗るんじゃねえぞ!お前ら!」


紅茶を飲みながら全員に冷たい視線を送られるスライムの男。



「いや、何してるんだお前ら!おかしいだろ、こっちは殺しに来てるんだぞ!?」

スライムの男は怒鳴る。



エドは紅茶セットを片付ける。


ゾロロは冷静に立ち上がり、皆に告げる。

「よし、逃げるぞ」


ゾロロの一言で一斉に立ち上がりスライムの男から逃げる一同。



とうとう怒りが頂点に達したスライムの男は燃え上がるような感情を爆発させる。

「待てゴラァ!お前ら全員ぶっ殺してやらァ!」






逃げろ!チームシヴァ!┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈






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※呪術団(じゅじゅつだん)


91年事件以降、現れていなかった樹化異(きかい)を再び復活させた集団。


魔女カリオスティアは、この集団のリーダーである。

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