第11話 島華国 皇太子"珀麗考"
朝を迎える砂漠の王国┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
(黄聖国 首都"オシリス" 王城前)
シヴァは今回の依頼主である黄聖国の"大臣シンバル"の元へ向かっていた。
オシリス城は世界最古の城、城の頂点の屋根がドーム状になっており、紺碧に塗られた屋根は白い城をより鮮やかに見せていた。
城の門の中に入り、シヴァとソフィアは任務遂行の報告をする為、城の扉の前で大臣が来るのを待っていた。
ソフィアは門に施された天使の彫刻に見惚れる。
「実に美しい彫刻ですね」
シヴァもソフィアと同じように城の門を見たり、城の庭を見る。
「天使の模様が多いような気がするさ」
ソフィアもシヴァと同じように様々な場所に目を向けてから呟く。
「確かに。天使を模した絵が非常に多いですね、特に女性の...」
シヴァとソフィアが話していると城の扉が動き始める。
2人はすぐに城の前で並んで立つ。
城の扉から現れた女性の従者は、シヴァとソフィアを中に招き入れる。
「大変お待たせ致しました。どうぞ、中でお待ちください」
シヴァとソフィアは従者の指示に従って、城の講談室に案内される。
講談室の中は赤のカーペットに白に金の細工が施された長いテーブルが置かれていた。
眼鏡をかけた女性従者はシヴァとソフィアに謝る。
「もうしばらくお待ちください。大臣を呼んでまいりますので...」
ソフィアは女性従者が部屋を出ていくの前に一通の報告書を渡す。
「大臣がお忙しいのでしたらこちらの報告書をお渡しください。我々の場合、直接渡す必要はありませんから」
女性従者は報告書を受け取る。
「承知致しました。報告書をお渡し致しましたらもう一度伺いますので、恐縮ではございますがこちらでお待ちください」
女性従者は報告書を持って大臣の元へ向かった。
シヴァはソフィアに報告書のことを尋ねる。
「報告書って直接渡さなくてもいいのかい?」
ソフィアはシヴァに話す。
「はい、狩人条約上問題はありません。しかし、シヴァの場合、監視下にありますからこの方が問題ないかと」
シヴァはソフィアに感謝する。
「わざわざ気を遣わせて申し訳ないさ。ありがとう、ソフィア」
ソフィアは少し嬉しくなる。
「いえ、感謝されるほどでもありません」
シヴァとソフィアが話しているところに誰かが部屋に入ってくる。
従者だと思ったシヴァは扉の近くに歩いていく。
扉が開いて中に入ってきた人物を見たシヴァは、あまりの衝撃に声が漏れる。
「わぁ...、珀!?」
部屋の中に入ってきたのは、島華国(とうかこく)の王子である"珀麗考(はくりきょう)"であったのだ。
珀は部屋に入ると、シヴァの肩を何度も叩きながら話し始める。
「久しぶりだね、シヴァ!君に会えるのを楽しみにしていたよ」
ソフィアはシヴァに近寄っていき尋ねる。
「シヴァ、彼とは知り合いなのですか?」
シヴァは珀の背中に手を回してソフィアの方を向く。
「うん、僕の友達さ!それも飛びっきり信頼のおける友達さ!滝壺の寺院で過ごしていた時に知り合った8人の中の1人、"珀麗考(はくりきょう)"さ!」
珀はソフィアに礼をする。
「はじめまして、島華国皇太子の珀麗考(はくりきょう)でございます。以後お見知り置きを」
丁寧な挨拶をされたソフィアは慌てて珀に挨拶する。
「白聖国(はくせいこく)の侯爵オリヴァー家、騎士ソフィアです」
珀はソフィアが貴族であることを聞き、疑問に感じる。
「侯爵?なるほど、つまりはシヴァは狩人に...?」
シヴァは珀に親指を立てて狩人であることを伝える。
「もちろんさ!」
珀はシヴァが狩人になったことを心の底から喜ぶ。
「そうか、良かったね!」
シヴァは珀について尋ねる。
「そうだ、珀!どうして君はここにいるんだい?」
珀は胸を張って堂々と語る。
「黄聖国の姫君と婚約を理由に聖大陸(せいたいりく)へ渡航に来た。実際に目で見るのが最も理解しやすいからな」
シヴァとソフィアは珀に同時に尋ねる。
「ジャスミンと結婚するの!?」
2人の迫力に押され、珀は壁際まで後退する。
「どうしたのだ、2人とも。ジャスミン姫と知り合いなのか?」
シヴァは珀に近づいて話す。
「ホワイトスクール時代の同級生さ。いやぁ、おめでたい!珀とジャスミン、お似合いさ!」
ソフィアは目を閉じて珀とジャスミンの夫婦像を浮かべる。
「ジャスミンは誠実な方です。きっと2人は幸せになりますよ!」
珀は首を横に振ってシヴァとソフィアに話す。
「結婚しないよ。彼女も私もそれを望んでいない。そうだ!折角だしジャスミンの部屋に行こう、きっと彼女も喜ぶだろう」
シヴァは頷いて珀の後を着いていく。
「うん、行こう!ジャスミンと会うのは本当に久しぶりさ。卒業式以来だから...、半年ぶりさ!」
ソフィアはシヴァに尋ねる。
「シヴァ、従者の方の報告はどうするのです?」
珀はソフィアに話しかける。
「安心なされ、騎士ソフィア。私が話をつけておこう。3階の角部屋にジャスミンはいる、先に行っておいてくれ、後で向かおう」
珀はそれだけ言い残すと部屋から出ていった。
シヴァはソフィアに手を出して誘う。
「ソフィア、行こう!ジャスミンに会いに!」
ソフィアはシヴァの手を掴んでジャスミンのいる部屋へと向かった。
(黄聖国 "オシリス城" ジャスミン自室)
扉をノックする音が聞こえる。
窓辺の椅子に座り読書をするジャスミンは本を閉じ、部屋の外の者に話す。
「どうぞ、入って」
部屋の扉が開き、ジャスミンは入ってきた人物に目を疑う。
「うそっ...、信じられない...。シヴァ様...?」
部屋の中に入るシヴァとソフィア。
シヴァはジャスミンの姿を見つける。
「ジャスミン!久しぶりさ!」
シヴァがジャスミンの元へ歩いて近づいていく。
ジャスミンはあまりの嬉しさにシヴァの元へかけていき、シヴァの胸に抱きつく。
シヴァはジャスミンの抱擁に少し顔を赤らめる。
「ジャスミン、久しぶりさ。寂しかったのかい?」
ジャスミンは少し涙目になってシヴァに話し始める。
「あの...、シヴァ様...。私は...、別の男性と婚約するのです...。本当にごめんなさい!」
シヴァはどうしてジャスミンに謝られているのか理解できなかったが、ジャスミンの結婚を祝福する。
「どうして謝るのさ!これはおめでたいことだ、君を祝福しに来たのさ!」
シヴァはジャスミンの両手を握る。
ジャスミンはこの時、ソフィアも部屋の中にいることに気がつく。
「シヴァ様、後ろのお方はあのソフィアさんですか?」
シヴァはジャスミンにソフィアとの関係を話す。
「そうさ!僕の監視で来ているのさ」
ジャスミンは心の中で思った。
「(な、何と...!?シヴァ様の監視?つまりはシヴァ様とずっと一緒にいなければならない夢のような立ち位置。許さない、私の夢の位置を奪った女狐め...)」
ジャスミンは鋭い視線でソフィアのことを凝視する。
シヴァはジャスミンに尋ねる。
「ジャスミン、どうかしたのかい?」
ジャスミンは満面の笑みでシヴァの方を見つめる。
「何でもありませんわ」
シヴァとジャスミンが話す中、珀が部屋の中に入ってくる。
「話をしてきたよ、シヴァ。ここに報告に来るらしい」
珀はシヴァに報告書の件を伝える。
シヴァは珀の方を向いて話す。
「ありがとう、珀」
ジャスミンはシヴァと珀が話す姿を見て心の中で思う。
「(私の好きな人と、私を好きな人の会話...。どうすればいいのでしょう...?これぞ、三角関係...)」
次の瞬間、珀はシヴァに異変を伝える。
「樹化異がいる。それよりシヴァ、すぐに"地下の遺跡(ちかのいせき)"に向かってくれ」
シヴァは珀が伝えるより前に窓を開けていた。
「分かってるさ!ソフィアはここにいておくれ、珀と一緒にジャスミンを守っておくれ」
『鸞鳥(らんちょう)』
シヴァは空中を蹴って、空を高速で動いて首都にある"地下の遺跡"へと向かった。
ソフィアは窓からシヴァに向かって叫ぶ。
「シヴァ、何があるのです!?」
混乱するジャスミンの元に珀がやってくる。
「姫君、私の傍を離れないでください」
ジャスミンは珀の言われたとおりに体の後ろに張りつくように立つ。
すると、部屋の中に誰かが入ってくる。
先程の女性の従者であった。
「シヴァ様、ソフィア様、お待たせしました」
ソフィアが従者に話しかけようとした時、珀は女性に大きな声で話しかける。
「それ以上近づくな!お前はもう人間じゃないだろ?」
『魔眼(まがん)・乱視界(らんしかい)』
珀は魔法を発動すると、従者はその場で目が回りふらつき倒れる。
「あれ?視界が揺れて...」
女性は最後にこの言葉を残し、手足が樹木に代わり樹化異になる。
『霊手刀(れいしゅとう)』
珀は人には見えない手刀で樹化異の首を斬り落とす。
混乱するジャスミン姫とソフィアに珀は冷静に伝える。
「ここは樹化異の巣窟だ。姫を安全な場所に案内します」
(地下の遺跡)
フードを被った謎の男が地下の遺跡に現れる。
地下の遺跡の入口で座る男は地面に両手をついて魔法を唱える。
「真の自由の為に、"Treedom(ツリーダム)"!
『バースト ブレイク』」
男の魔法と共に地下の遺跡の入口が破壊される。
男の肩には"Treedom"の文字が...。
訪問者、襲来!┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
-----------------------------
※ジャスミン・ミハエル※
ホワイトスクール時代のシヴァの同級生。
虐められていたのをシヴァに助けて貰ったのをきっかけにシヴァに思いを寄せている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます