第16話勉強 2


 「それで勉強なんだけど、なんの教科が苦手なの?」


 「そうだなぁ。数学とか物理とか、化学とかかな。何やってるのかよくわからないし」


 公式を覚えても何を使うのかわからないし。


 「そうなんだ。特に何が苦手とかある? 例えば、数学のどこの分野とか」


 「特にないです。全部ができないので」


 そういうと、遠山さんが肩をすくめてこっちを見てくる。


 「全部って」


 「いや、公式とかはわかるんだけど、何を使うのかわかんないんだよね」


 「それならたくさん問題を解けばいいんだよ?」


 そうは言っても解く前に力尽きるからなかなか進まないんだよな。


 「でもさ、問題を解こうと思っても、わかんないからできないんだよね」


 「だから、私が教えてあげるんでしょ。ほら早く、宿題を開いて」


 「わかったかけど、お手柔らかにね」




 一時間くらいやってるけど、遠山さんは勉強を教えるのがうまかった。


 わかんなくて詰まってても、ヒントをくれて解くことができた。


 「遠山さんって、教えるのうまいんだね。おかげで少しずつだけどわかるようになってきたよ」


 「初めて教えるけど、大丈夫そうでよかったよ」


 「初めてって」


 遠山さんはバツが悪そうに眼をそらした。


 「だって、友達に教えることなんてなかったんだもん」


 だもんって、初めてでよく教えようと思ったな。まぁ、それでも教えるのはうまいんだけど。やっぱり勉強できる人何でもできるんだね。


 「そ、そんなことより、もうすぐ夜ご飯だから作ってくるね」


 そういって、小走りでリビングの方に行ってしまった。


 でも、遠山さんに勉強だったり、ご飯だったり、遠山さんがいなくなったら普通の生活が出来なさそうだな。


 それに、だんだんと僕もこの生活に慣れつつあるんだよな。


 ご飯だできるまでもう少し勉強してるか。

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