第15話勉強 1
週末は平日と変わらず、遠山さんと過ごしていた。変わったことといえば一緒に本を読むようになったことくらいだろう。
もちろん、遠山さんは本を読むだけでなくちゃんと勉強もしている。それに対して和人は、勉強どころか学校の課題にも手をつけていない。
和人は典型的な宿題の最後の方にまわす人間だ。そして最終日泣きながら宿題を終わらせる。
学校のテストの課題でも、前日の夜にやっている。それなのに、赤点を取ったことは無い。だから余計にやらない。
そんなのを遠山さんは見逃すことなく。
「篠原君、夏休みに入ってから勉強しる?」
「まぁ、ぼちぼちかな」
「嘘はよくないよ。私と1日中一緒にいるのに、よく言えるよね」
そう言って、遠山さんは肩を竦める。
「だって、夏休み最後の週の土日にやればいいかなって」
「それでやらないんですよね、分かりますよ。そんなのだと、赤点を取る事になるよ」
「テスト2回あったけど取らなかったし、大丈夫じゃないかな」
なんだか遠山さんの目が、ダメな子を見るような目になってきた。
「課題テストや二学期のテストは、範囲が多くなるんだよ。そんなこと言ってると本当に取る事になるよ。だから、今すぐ勉強しよ」
「えぇーと、ならこの本読んだらね、ってあぁ」
「それがダメって言ってるじゃん」
そう言って、僕の持っていた本を取って、頬をぷっくり膨らます。
「午前中は勉強して、午後からはバイト、夜はご飯を食べて寝る。わかった?」
「いやでも、本読む時間は?」
「問題文も文章だから、同じだよね」
「いやいや、違うでしょ。本は物語で、問題文は悪魔の文字って言うか、とにかく違うでしょ」
「なら、問題文を物語っぽく思えばいいじゃん」
そんな無茶な。学生とって問題文は、読みたくない文章ナンバー1だよ。
「なので、この家にある本は全て没収。さっさと本がある場所に案内して」
「没収って、結構本多いから出来ないと思うよ」
「それなら、全部リビングに積めば大丈夫だから」
リビングに置くって、傷むんじゃ。
「本が傷むのが心配なら大丈夫。そこは、日陰の所に置けばいいから。まぁ、でも動かすのは後にして、勉強道具とか全て持ってきてね」
「それって遠山さんが教えてくれるのかな?」
「そうだよ」
まぁ、遠山さんは学年でも確か1位だったから、教えることもできるんだろうけど。
「それで、本はいつ読めるようになるんでしょうか?」
「うーんと、私が頑張ってるなぁーって思ったら、ご褒美に読ませてあげる」
基準が曖昧過ぎる。
それから篠原の勉強の日々が始まったのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます