第7話手料理


はぁー、結構寝たんじゃないか? 時間的にまだバイトまで、余裕だな。


 さっさと、昼ご飯食べて、バイトにでも行くか。遠山さん昼ご飯、どうするんだろう。


 そういえば、さっきからいい匂いがするんだけど。


 「あっ、やっと起きたんだ。」


 そこには、エプロン姿の遠山さんが、料理をしていた。


 「えっと、料理してるの?」


 「あっ、ごめんね。勝手に、台所使っちゃって。」


 「いやいいよ。全然、使ってないから。」


 料理をしたのだって、ここに引っ越して数日だけだから。途中で、めんどくさくなって、弁当に変えたんだよね。


 「だよねー。調味料だって、ほとんど未開封のもの、ばっかだったし。」


 「だって、作るよりも買った方が、楽だったし。」


 男子なんて、1人暮らししたら、大抵弁当か外食しか、選択肢がないんだから。


 「そんなことしてると、栄養バランスが偏って、いつか病気になっちゃうよ。」


 「大丈夫だって、ちゃんと野菜も食べてるし。」


 「それでも、コンビニ弁当はダメ。なので、今日から私がご飯を作ります。」


 そっか、今日から作るのか……えっ。


 「遠山さんが作るの?」


 「そうだけど、なにか不満なの?」


 「いや、こっちは作ってもらう側だし、文句なんてないけど。」


 女子の手料理、初めて食べるんだけど。


 「そうだ、なにかアレルギーとかある?」


 「アレルギーはないけど。それより、今日から作るの? 明日からとかじゃなくて?」


 「うん、今日からだよ。」


 食材なんて、なんにもなかった気がするけど。


 「食材は、なかった気がするし、両親が男の家で、ご飯を食べるなんて、許可しなさそうだけど。」


 「そんなこと、ないよ。お母さんに、篠原君の家に行ってくる、って言ったら、「なら頑張ってきなさい」って言ってたし。」


 それは、たぶん好きな人のことだと思って、そんなこと言ったんでしょ。


 「お父さんは……」


 お父さんにも言っちゃったの!? それは、だいぶやばいよ。絶対に、会ったら殺されるぞ。


 「そうだ。「節度を守って、付き合いなさい。」って言ってたから、大丈夫って言っておいたよ。」


 なにも大丈夫じゃないよ。アウトだよ。あぁ~どうしよう。


 「ソ、ソッカ。」


 「食材は、篠原君がバイトに行ってる間に、買ってくるつもりだよ。」


 「そっか。なら、家の鍵とかいるよね。ちょっと待ってて。今、スペア持ってくるから。」


 「えっ、いいの? そんな簡単に、家の鍵渡しても。」


 あっ、そっか。普通は、家の鍵なんて渡さないよな。でも、


 「遠山さんに、渡したとしても、悪用なんてしないでしょ。」


 「そっか。うん、しないよ。」


 なんで少し、嬉しそうなんだ?


 「なら持ってくるよ。」


 「ちょっと、待って。先昼ご飯食べないと、冷めちゃうよ。」


 「昼ご飯作ったの? 袋麺しか無かったはずだけど。」


 「うん、だからちょっとだけアレンジした、手抜きみたいになっちゃったけどね。」


 アレンジ!? そんなんで、手抜きって。


 「そんなことないよ、ありがとう。」


 「うん、ささ、早く食べて。」


 んっ、おいしい。いつも作るのより、断然こっちの方がいい。


 「ねぇねぇ、どう?」


 「おいしいよ。いつものより、こんなにおいしいなら、いつでも食べたいよ。」


 「そっかそっか。えへへ〜。」


 遠山さん、なんだか嬉しそうだな。

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