第3話道中

 「えっ、ごめん聞き取れなかった。もう1回言ってくれない?」


 「えっと、私も家に行って、片付けて手伝ってあげるよ。」


 「もちろん、遠山さんの家の事だよね。」


 「違うよ。篠原くんの家の事だよ。」


 聞き間違えじゃなかった。なんで、昨日あったばっかの、俺の家に来ようとしてくるの?


 「僕って、昨日あったばっかだよね。」


 「うん、そうだよ。昨日、ここの道出会ったばっかだよ。」


 「会ったばっかなのに、僕の家に来ようとするの? 襲われるとか、考えないの?」


 「襲うの?」


 「いや、襲わないけど。普通に考えて、昨日あったばっかの人の、家になんか行かないよ。」


 「それは、一般的な人でしょ。私は、違うのです。」


 「いや、胸を張って言われても。男の家だよ。少しはためらおうよ。」


 「だって、篠原くん、私のこと襲わないんでしょ。なら、大丈夫だよ。」


 昨日、あったばっかの人を、信用するなんて、大丈夫か? いつかそのうち、痛い目に合うよ。


 「ほら、歩きながら話そ。」


 「いや、まだ家にあげるなんて、まだ言ってないけど。」


 「まだってことは、あげてくれるんでしょ。」


 「けど、時間も時間だし、親が心配するんじゃないの?」


 「大丈夫、大丈夫。友達と遊んで、遅れて帰るって言うし。大丈夫だよ。」


 「わかったよ。けど、今からコンビニよるからね。」


 「まさか、襲う気なの!」


 「いや、襲わないよ!」


 「冗談だって、そんなびっくりしなくても。」


 遠山さんと話してると、心臓に悪い。


 「なら、なんでコンビニ行くの?」


 「あぁ、夜ご飯買いに行くんだよ。」


 「夜ご飯? 自分で料理しないの?」


 「する時もあるけど、週に1回あるかないかだよ。ほかは、コンビニ弁当か外食かな。」


 自分で料理するのって、疲れるからやりたくないんだよね。


 「それって、体に悪くないの? そんな、ほぼ毎日コンビニ弁当なんか食べて。」


 「いや、慣れればなんともないよ。もう、3ヶ月くらい、同じ生活だからね。」


 「慣れてるからって、体には悪いんだよ。栄養価も偏っちゃうし。」


 「大丈夫だって。最近のコンビニ弁当は、栄養価が高い物もあるし、足りなかったら何か買えばいいんだし。」


 「コンビニで?」


 「そうコンビニで。」


 なんで、そんなジト目で見てくるんだ? 男の1人暮しって、こんなもんじゃないのか?


 「猫のことより、篠原くんの方が、心配になってきたよ。」


 「猫より僕のこと? なんで。」


 「そんな、偏った生活なんて、ダメだからだよ。」


 「大丈夫だって。男の体って、女子より頑丈だから。」


 「えぇー、そんなこと言ってると、風邪引いたり、怪我するよ。」



 まぁ、そんな話をしてコンビニから帰って、僕の家に着いた。


 「ここが、篠原くんの家?」


 「そうだけど、なんで驚いてるの?」


 「いや、だって1人暮しって言ってたよね。」


 「そうだよ。」


 「なのに、なんで一軒家に住んでるの? 普通は、マンションとかそういった所じゃないの、普通は。」


 「僕もそう言ったけど、親がどうせ住むなら、一軒家の方がいいからって、それにここに、家族で泊まりに来ることもあるんだから、マンションとかだと、狭いでしょっていって、一軒家になった。」


「何それ。篠原くんの家の両親って、豪快な人なんだね。全然、篠原くんと性格、違うね。」


 「僕でも、そう思うからね。」


 父さんは、まだ落ち着いてるけど、母さんの方は、すごく豪快な人だ。というか、言動が子供っぼいんだよな。


 「まぁ、そんなことは、置いといて早く入ろ。暑いからね。」


 「なんだか、緊張してきちゃった。」


 「なんでだよ。さっきまで、家に入る気満々だったのに、ほらさっさと入ろ。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る