第6話 接触前準備

ここは……どこ……?



手も、足も、どこも動かせない。



ただ、視界だけが広がっている。眼前には、昨日出会った赤髪のワーウルフ、かなり大きい薙刀を持ってる。



もう一人は………白い長髪で、槍を持った男の人。



二人は戦い始めた、僕の目では追えないくらい速い攻撃。



しばらく二人は戦い、白い長髪の男が薙刀の刃で体を貫かれた。



大量の血を吐き出し、倒れ込む白い長髪の男。



全く知らない人のはずなのに、それを見た僕の心はとても嫌な感情でいっぱいになった。



彼が死んだ悲しみ、なにもできない自分への怒り、悔しさでぐちゃぐちゃになった。



赤髪のワーウルフは、とどめを刺すつもりなのか白長髪の男に近づく。



やめろ……やめろ!その人に近づくな!



自分ではそう叫んでいるつもりでも、声が出ない。



すぐにでも走ってあの赤髪のワーウルフをぶん殴りたい、けど、体は動かせない。



赤髪は薙刀の刃を、倒れている白長髪に向け振り下ろした。



ああ………やめろ……やめろ…………………!





















「やめろお"お"お"お"お"お"お"!!!!!」


「び………びっくりしたぁ………!大丈夫かぼっちゃん……?」


「え………?あれ…………?あいつは……?赤髪の、ワーウルフは……?」


「え………?あいつなら昨日見て去ったきり会ってないでしょ?」


「大丈夫ですかぼっちゃん?何か怖い夢でも見たのですか……?すごい汗です。」


「え………?あれ……夢……か。夢………。そっか。そっか……。」


どうやら僕は夢を見ていたようだ。


すごい汗をかいている。狼でもこんな汗かくんだな……。


ゴールドさんはめちゃくちゃ酔ってたせいかまだグースカ寝ている。


しかし、あれはどんな夢なんだ。知らない二人が殺しあってて赤髪が勝っただけ、僕はただの傍観者。


そうだよ、戦ってる二人どっちも知らない人じゃん!


何をそんなに怯える必要があったんだか!


「あはは!昨日お酒飲んだせいか変な夢見ちゃったよ。あー寝覚め最悪ー。スズネー、一緒に川に水飲みに行こー。」


「ハハ、切り替えが早いですね。良いですよ、行きましょう。私もお酒のせいか少し頭痛がしますし。」


さ、今日もレベルアップしてさっさと僕も人間の姿を取り戻すんだ!こんな変な夢に惑わされてる場合じゃないよね!


さっさと顔洗って朝ご飯食べよ~っと!




















さて、朝から驚かされたが……。

とりあえずまだグースカ寝てるゴールドさんを叩き起こしてひとまずみんなで朝ごはんにすることに。


そして、昨日のことを踏まえて今日からどうするかを話し合うことにした。


「あ~頭いった~。あーつまり、魔王軍のお偉いさんが来てアタシたちを勧誘したと、んで一旦保留にして帰ったと。カウちゃん達の方はその直前、謎の赤髪のワーウルフに会ったと……。昨日は随分色んなことがあったのねぇ~。」


「あなたが泥酔して二人をお酒で眠らせたのも追加してください。そしてゴールドさんは今後禁酒とします。良いですよね……?」


「え~!久々のお酒おいしかったのにぃ……。」


「酔っ払ったせいで危うく魔王軍の傘下になりかけたんですよ!?ちょっとは反省してくださいね……?」


「………………はい…。」


うし、とりあえず飲んだくれ狼は黙らせることができた。


さて、それを確認できたことで改めて傘下入りをどうするかだが……。


「んじゃみんなが正常な状態ということで、改めて質問するよ。魔王軍傘下に入ることに賛成の人、いる?」


…………反応無し。つまり、全員反対と。


「だ、だってだって!僕達天下のpack of wolvesだよ?例え魔王軍といえども下に就くのは気にくわないよ!」


時々思ってたけど、ぼっちゃんって腰巾着な風を吹かせることが度々あるよな………キャラには合ってるけれども…。


「昨日の話を聞く限り、彼らも決して強制はしていませんでした。ならば、私達が魔王軍の傘下になることが今の生活よりもメリットが無いのであれば、無理に入る必要は無いかと思います。」


「アタシも、傘下ってのは嫌だな~。友達なら良いけどね!」


「ま、私も傘下っていうのは嫌です。同盟関係とかなら対等だからありだとは思う。私達は、まだこの世界に来て日が浅い。知ってることが少な過ぎる。だったら、少しでも情報を持っている人達と関係を持つことは悪いことでは無いと思うんだ。」


明らかに格上とは言え、話ができないことは無い相手だった、というよりもむしろこっちの話をしっかり聞いてくれるような相手だった。


だからむしろこっちの意見は尊重してくれると思ってみて良いだろう。


まあもしそれで処刑!とかならそれはそれで意見を変えざるは得ないんだけどね?


「そーそー!同盟関係!アタシもそんな感じが良い!」


「まあ同盟、友達なら気軽にしゃべれるもんね!」


「そうですね、対等な関係ならこちらとしても都合が良いと思います。もし次に接触してきたことがあったら、同盟ならこちらも了承できると伝えるのが良いと思います。」


「オッケー、じゃあ次にマリスとゼルトが来るらしい3日後には同盟ならオッケー、下に就くのは不可って伝えるとしよう。」


おし、魔王軍関係についてはひとまずこれで置いておこう。


じゃあ次は今日の動きか。


「ゴールドさん、それで昨日は結局服を作れるだけの材料集められたの?」


「もっちろん!バッチシ!ちゃんと足りるようにかなり多めに採ってきたよ!」


「オッケー、じゃあ今日は四人でレベル上げしに行きますか!」


「うん!あ、でもその前に僕昨日の狩りでグレーターに進化できるようになったから進化してからでも良いかな~?」


「だったらアタシがここに残るからカウちゃんとスズネちゃんで狩りに行きな?アタシはすでにワーウルフだからレベル上げの優先度はそっちが高いし。進化してからは万能嗅覚で二人の匂いを追って合流するから心配はご無用よーん!」


「なるほど、それなら問題無いと思います。一人でも多く早めに、慣れた人間体になれるワーウルフになった方が良いですからね。」


「そうだね、目標の一つでもある森を抜け出すか縄張りを作る、これの為には仲間を探さなくちゃいけないけど、その仲間を見つけるのが狼の体じゃあものすごく大変だからね。早く進化するに越したことは無いね。」


「じゃあとりあえず、これからはレベル上げしながらおんなじ転生者、もしくは狼仲間を探すってことで異議無しかな?」


「異議な~し。」


「そうしましょう。」


よし、簡単だがやることは決まった。ならば、後は実行あるのみ。


私とスズネさんは、さっそくキャンプを後にして狩りに出かけるのであった。





















「ふあああぁぁぁ……。ハレ……?ここはどこだい……?」


「ようやくお目覚めになりましたか……?ゼルト様。ここはあなたの自室ですよ。」


「お、マリスくん!おっはよ~。わざわざここに運んでくれたのかぁ~、やっさしぃなぁ~。」


はぁ……この人は全く、二日酔いのせいで我の後ろにいる恐ろしいお方に気づいていないのか………。


「やぁゼルト………おはよう……。」


「ん……?あ、魔王様~!おっはようございま~す!」


この人魔王様が怒ってるのに気づいてないのか!?そんな態度で接したら!


「ゼルト、お前なぁ………。」


「アハハハ!お酒勝手に持ち出したのは悪かったですって~。それよりも、例の狼ちゃん達とはうまくまた話し合いの場を設けたんで、大丈夫ですよ~。許してくださいよ~♪」


この人、ベロベロになってすぐ寝たと思ったのに、ちゃっかり我がまた話し合いの約束をしたことを聞いていたのか………?

食えない人だな……。


「たく……お前って奴は……。はぁ……しょうがない。それよりもだ。ヨ……ゲヘナがどこにいるかを聞きに来た。」


「ゲヘナですか?あ~アイツなら多分ずっと執務室に籠って書類仕事っすよ。お堅いアイツだから他の事務仕事やりに色々回ったりもしてるだろうからわかんないっすけど。」


「………そうか、分かった。……………例の狼の件だが、なるべくなら強引でも良い、こちらに引き入れるのだ。」


「………?俺はそのつもりですけど……。まあたしかに珍しい存在なことには間違い無いですけど、魔王様がそんなに警戒する存在なんですかね~?アイツら。まあゴルちゃ……ゲフンゲフン!金色の狼ちゃんとかは面白くて好きだけど。」


正直我も同意見だ。


魔王様と対等に戦える者はこの世に指で数えられる程しかいない。勇者並みの強さを持つ者でなければ……。


その質問に対する魔王様の返事は、意外なものだった。


「お前ら…………狼という生物を、侮らない方が良い。油断すれば、お前らの喉元にも奴らの牙が差し迫っているやもしれんぞ。」


そう言って魔王様は部屋から出ていった。


まるで狼を怖がっている様にも聞こえるあの発言。


やはり、あのフォレストウルフ共はただ者ではないということなのか……。

改めて、ややこしい者達をスカウトしようとしているのかもしれないな。


キョトンとするゼルト様に軽く会釈をし、我は空間魔法でまたあのフォレストウルフ達がいる森に戻り、監視を続けるのであった。











『経験値が一定以上獲得されました。これにより、Lv9からLv10に上がりました。一定のレベルに達したことにより、進化が可能となりました。』


「よっし、来た来た進化可能!」


四人合流し狩りを続けていた私達、ついに私もワーウルフへの進化が可能となるレベルに達した。


「おっし!じゃああとはぼっちゃんか!」


「僕もあと2レベル上げられればな~。」


「もう少しですもんね……もう一つくらいアルムコングの群れにでも挑みましょうか?」


うーむ、どうしたもんか。


ちょうど日も落ちてきて辺りは暗くなってきたしなぁ。そろそろキャンプに戻るのが賢明かな。


そう言おうとした時、ゴールドさんがいきなり意見を出した。


「カウちゃんとスズネちゃんは先にキャンプに戻って進化しときな。アタシとぼっちゃんで最後までレベル上げしとくよ。」


ぼっちゃんが、まじで言ってんのかこの人と言いたげな表情でゴールドさんを見つめる。


「え?でも危険じゃない?もう日が落ちて視界も悪くなるし……。」


「だーいじょーうぶ!進化するなら少しでも早い方が良いでしょ?それに、ぼっちゃんが進化してくれないと服が作れないから、ぼっちゃんは特に早くレベル上げをした方が良いと思うんだ!」


あーなるほど………レベル上げもあるけど一番は服か……。

ぼっちゃん的には疲労困憊で早く休みたいだろうけど、衣服は私達も着る必要があるため頑張って欲しいところ……。


というわけで、ここは止めた方が良いはずだけど私は止めずにそれを承諾する。


「あーたしかにそうかもね。じゃあ私とスズネさんはお言葉に甘えてキャンプ地に戻って進化でもしてくるとするよ。」


ぼっちゃんからこの裏切り者と言わんばかりに視線を感じている気がするが気のせいだろう……。


私エスパーじゃないからちゃんと声で聞かないとワカンナイナー。


スズネさんはぼっちゃんに憐れみの目を向けてから、私と共に歩き出した。


チラッと後ろを振り向くと、いってらっしゃ~いと前足を振っているゴールドさんと、疲労とこれから味わう苦労を悟り絶望の表情を浮かべていた。


彼女には………まあ……頑張って欲しい……。




















キャンプ地へ向かう道中のことだった。スズネさんが唐突にあることを聞いてきた。


「カウさん、いきなりこんなことを聞くのも変な話なのですが、よろしいでしょうか?」


「ん?どうしました?」


「カウさんは、前世に未練ってありますか……?」


「………前世……?」


うーむ、急だなぁ………。


未練ねぇ……。そらあ親の事とかペットのハムスターの事とか、考えたら結構あるけれど………そこまでの未練も無いんだよねぇ。


あ、でも好きなマンガの最終回見れないのは残念だなぁ……!


……………いや、多分スズネさんはそんなレベルで未練なんて聞いていない。というより、私とスズネさんでは生活のレベルが違う。


スズネさんはリアルでは大企業の社長の息子さん、要は御曹司だ。


それ故か、言葉遣いから立ち居振舞いなどが所々上品である。

きっと幼い頃から教え込まれた賜物なのだろう。


そんなスズネさんが、いきなり亡くなった世界線。

ネットニュースとかその話題で持ちきりだろうなぁ……。なんせ原因不明の突然死なんだから。


すでに数年後には、会社を任せるぞと父親直々に言われていたらしく、会社の為にゲームを休むことも多かったスズネさん。


そんなスズネさんに比べ、親への気持ちや夢も何もかも中途半端で特に人生に思い入れの無い自分が受けて良い質問なのか?


ここは……一番未練があるペットの事でも言っておこうかな……?


「まあ、強いて言うならペットのハムスターのことですかね?アイツの世話役いなくなったから誰か引き継いでくれると嬉しいんだけど……。」


「なるほど………ペット………ですか。」


「ごめん、私の軽い人生じゃあスズネさんには何一つ良い話しはできそうにないや……。」


自分で言ってて、改めて自分の人生が浅過ぎることに気づくのなんか悲しくなるなぁ……。


「な、何を言ってるんですか!そんなことありませんよ!こちらこそ、急に変な質問をしてしまいすみません……。」


「いんや、大丈夫だよ。寧ろ、不安にならない方が極々少数だよ。特にスズネさんは企業の御曹司、自分がいなくなった前世に不安を感じるのはしょうがないよ。」


「カウさん……。」


「けど、私は別に未練があったとしてもその未練はすっぱり忘れてると思うなぁ~。」


「…………どうしてですか?」


「だって、結局どうなったんだろう、戻りたい!って願っても戻れるわけじゃないし、悩むだけ無駄かなって……。あ!いや、スズネさんの悩みを決してバカにしてるわけじゃないんだ!これは、私の持論であって……。」


「フフ……大丈夫です。むしろありがとうございます。カウさんと話したお陰で心が少し軽くなった気がします。」


「そ………そう?それなら良かったけど。」


「この世界に来てから私は、ずっと目標という目標もなく着いてきて、前世の未練を抱えたままうやむやな気持ちで、今日までカウさん達と共にいました。けれど、今日カウさんと話して新たな目標も見えました。」


どことなく晴れやかに笑うスズネさんの顔が見えた。


特に強がっていたりとかは無さそう………かな?


「…………そっか!役に立てて私も嬉しいよ!」


そこからは、お互いこの世界で何をしたいかを語り合いながら歩いた。


そんな話をしていると、キャンプ地はあっという間であった。


そこから、魔物に気づかれないように身を隠す用の近くの洞穴に入りそこで私達は進化を開始した。




















数時間して目覚めると、いつの間にか帰って来ていたのかゴールドさんと、おそらく進化途中のぼっちゃんが隣で寝ていた


自分は、どうやら進化が完了したようだ。


一応、見れるようになった箇所も増えてるだろうし、解析しときますか!


『解析』!



個体名:カウワード Lv1

種族名:ワーウルフ

状態:正常

能力値:HP-389MP-270攻-296魔攻-303防-309魔防-301速-300

所持スキル:敵影探知Lv5 万能嗅覚Lv2 解析Lv8 魔力増加Lv7 魔力操作Lv6

強化爪Lv9 強化牙Lv6 幸運Lv3 腐蝕攻撃Lv1 指揮Lv3 士気向上Lv1 念話Lv1

魔法:風魔法

スキルpt残量:300pt



おお!すごい!見ない間に結構増えてるねぇ~ステータス。


そして、私は少し特殊なスキルも覚えてきたと思う。その代表例がこちら、『指揮』。


こちらは、なんと念話無しだと使えない特殊スキル……。


その為、急遽300ptを犠牲に『念話』のスキル取得。


まず、『念話』はお察しの通りテレパシーですな。お口から声を出さずとも、心の声だけで会話が可能となる。


そしてこちらの『指揮』、こちらのスキルはどうやらこの『指揮』を持つ何者かが『念話』を通してメッセージを飛ばした者が、HP、MP等の ステータスが上昇するという全体バフスキルとなっている。


うん!元戦闘指揮官の私にはぴったりのスキルだな!


どうせならと思い、指揮と同じ念話無しだと腐るスキルである士気向上を取得。


これで私が念話会話した人にはさらにバフを重ねがけできるわけで……。


私達はおそらくほとんどが集団行動だし、結構有用なスキルなのではないかと思っている。


まだ先だとは思うけど、結構強い敵との勝負をする時が楽しみだな~。


フフフ、度重なる狩りにより、私も獣としての本能が目覚めてしまったのかな……。臆病者のカウワードがまさか、血を求めるなんて……ね。


ぐぎゅるるるぅぅぅぅぅ……………。


ちげえわこれ、ただ単にお腹空いて体が肉を求めているだけだわ……。


他の皆が起きるまでまだ時間がかかりそうだな。


よし!皆が起きる前においしいお肉を焼いていてあげようかな、私が!私、優しいなぁ~。



















コンコン。


お偉いさんの立場にいるにも関わらず、俺は扉をノックした。

丁寧な日本人の性かねぇ。


「どうぞ。」


「仕事中に悪いな、サン…… アルビトよ。少し話があってだな……。」


「……………フフフ、今ここには魔王軍の配下はいません。いつも通り話しましょうよ、ムラマサさん。」


ぎこちない俺の口調に気を遣い、いつも通り話そうとサンちゃんは提案してくれた。


さすが、ギルド1気が利く男だな。

他人への配慮は相変わらず顕在だ。


そう、この書類仕事で缶詰めになっているお偉いさんは俺と同じギルドに所属していた、この世界では数少ない仲間の一人の転生者だ。


俺はある日、いつも通りVRMMOのゲームをやっていた。

その時、ひどい頭痛により気絶したところまでは覚えている。


そこから目覚めてからが問題だ。


俺は、次に目覚めた時にはなぜか魔王となっていたのだ。


仰々しい玉座に座った状態で、隣にはこちらを見つめるおそらく大臣だと思われる者に見つめられながら、俺はその世界の住人、しかも絶対重要な立場である魔王として生を受けていた。


いや、多分言ってもわからないだろう、だって本人の俺でさえよく分かっていないからな……。


とりあえず今分かっている事と言えば、魔王軍の中でもNo.2に匹敵する存在、魔の災禍パンドラと呼ばれる最高戦力。


そのうちの二柱のうちの一柱、アルビト・ハーヴェスターがおなじく転生者であってその知り合いの一人、サンディーことサンちゃんということ。


そして、俺の立場はそれより上……一番偉い魔王ということ…………。


いやいやいやいやいや!なんで!?!?


せめてNo.2とかならサブギルドマスターやってたから、ああ……そうか……って少しは納得したかもしれないけど、魔王て!


目覚めたらいきなり社長やってるみたいなもんだぞこれ!


そうしていきなりよく分からず魔王になって目覚めてから約3ヶ月が経った頃のことだった。


魔王軍に各地を探らせていた所、大陸南にある世界樹が守られている大森林、ユグラージ森林にて少し異質なフォレストウルフが発見されたと報告が入った。


どうやら、格下であるはずのそのフォレストウルフ達は、格上のグレーターアルムコングを仕留めることに成功したらしい。


この世界に来てからまだ俺は日が浅く、その勝負がどれ程すごいものなのかはわからない。


だが、俺にわざわざ伝えるということはきっとそれほどすごい結果だったのだろう。


そういうわけで、一応俺はその狼達への接触を許可した。


接触許可の翌日、早速部下であるマリスという男から報告が入った。


その報告の内容に、俺は驚きを隠すことができなかった。


それは、その狼達四匹の名前。


ゴールド、カウワード、スズネ、ボッベル。


間違いない、pack of wolvesのギルドメンバーだ!


そして決めた。会いに行こうと。サンちゃんと一緒に会いに行こうと。


そうと決めた俺は、書類仕事で忙しいにも関わらずサンちゃんの部屋に訪れたというわけだ。


事情を説明し、俺はサンちゃんと交渉する。


「どうだ?サンちゃんも久しぶりに皆と話したいだろ?」


「……………会いたいのは山々なんですけど、生憎この書類仕事の量がもうすごくて……。せっかくですがお断りしておきます。それに、彼らが生きているのなら、また会いに行く機会もできるんでしょう?だとしたら、僕はその日を待つことにします。」


「そうか……悪いな、書類仕事ばっかり押し付けてしまっていて……。次は、必ず一緒に行こう!」


「ええ、もちろんです。皆さんには、僕は元気でやってますと伝えておいてください。」


「わかった、伝えとこう。」


サンちゃんが行けないのは残念だが、悲しんでもいられない。


そうと決まれば俺も仕事を片付けなければな!


仕事をスッキリサッパリ終わらせて、気持ちいい気分で皆と会うぞー!!うっし、久しぶりに仕事やる気出てきたぞぉ~!!!

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