第3話 3つの目標

35匹のハイエナゾンビvs一匹のLv1のヒヨッ子狼……勝てるわけ無いだろうがぁ!!


「このハイエナ達は、おそらくこの焼いた肉の匂いにつられて来たんだろうねぇ。こいつら、体がすでに腐ってるせいか、日夜腹を空かしてるんだよね。そのせいでよく獲物を横取りしようとするけど、アタシが進化前のLv1でも倒せたし、いけるいける!」


「んな無茶なぁ!いくらステータスがおんなじでも、その体の動かし方は私はサッパリなんですってぇ!てか数!数おかしいじゃないですか!?」


「んじゃあ弱点だけ教えて上げるよぉ。そいつらは体の中心に、見た目も固さもガラスみたいな魔力の塊っぽいのが埋まってて、それを壊せば一撃だよー。」


「弱点教えられて私が素直に戦うと思いますか……?」


「たく!そんなこと言ってても、ハイエナ達は待ってくれないよー。ほら、さっそく一体目が。」


「え?ぎゃあああああ!!!」


気付くと頭上には、こちらに飛び掛かってくるハイエナが!いやだ!痛いのやだぁ!


昼間にトラに尻尾踏まれただけでかなり痛かったんだ!お腹噛まれたりしたら私痛みでノックアウトだぞ!


かといって、ゴールドさんは一切手伝う素振りも無いし……やるしかないか。


相手は35匹、弱点はお腹のコアっぽいやつ。真横から爪か牙で攻撃すればいけるか?ならば、動きを読んでいこう!


私からは攻撃せず、ハイエナの攻撃を待つ。すると、真後ろからハイエナが襲いかかる!



だが、それもお見通しだ!私は咄嗟に右に回避、からの左向いて真横を通るハイエナをガブリ!!!



ぐえええええええ!!!くっさあああああああ!!!



やっぱゾンビだ、腐ってるわこいつ……。


だが、そのハイエナは倒れる。よし!良いぞ、このまま一匹ずつ減らせれば……。


しかし、もちろんハイエナがそんなに優しい動きをずっと繰り返すわけもなく、今度は三体同時に襲いかかってきた!



さてどうする?



とりあえず、こいつらの攻撃意外と遅い。てことでホイッと、簡単に避けられる~。



だが、こっちも攻撃できない。正確には攻撃はできるが、一体のハイエナ攻撃中にもう一体のハイエナに攻撃されてしまうからだ。



さっきは適当に解析しすぎて私自身を解析するということを忘れていた。そのせいでステータスは分からないが、おそらくハイエナとどっこいどっこいかそれより下。



つまり、一撃でも食らえば重傷。



ステータスにも、スキルにも頼れない。つまり、今頼れるのは、己自身の立ち回り!やるしかねえ!



とにかく避けながら、同時に複数倒せる攻撃方法を考えよう……。ゴールドさんは……くっそぉ……肉を自分が作った穴蔵に避難させてやがる……!



ん……?なんだ?数匹くらいが、後ろの方で何かを見て動きを止めている。というより、何か食って……げぇ!仲間の死体食っとる……!



おいおい……カニバはあんまり好きじゃないってか好きな奴の方が少ないだろうけど……。まじでなんでも食うじゃん。



ん……?なんでも食う……?………あ!てことは、なんか食べれるもの囮にして、それ食ってるのに夢中なハイエナ達を攻撃すれば倒せるんじゃ……?



てかあの死体食ってるハイエナ倒せるだろ!おらぁ、てめえらくそまずいけど威力高い攻撃こっちも噛みつきだからやってやるわ!



てことで一気にガブガブ!くさいいぃぃぃぃ!!!



死体の匂いに夢中なおかげで、他のハイエナも攻撃する私を気にも止めず、自分が食べる順番になるまでただうろうろしているのみだった。



よし、私がハイエナを倒せば倒す程、ハイエナの死体も増えて、それにハイエナが夢中になる!ナイスなからくりの誕生!おっしゃあ、このまま残りの30匹弱、全員私の経験値じゃあああ!!!


そうして、たまに攻撃してくるハイエナをかわしつつ、死体の貪りに夢中なハイエナを倒してを繰り返して十数回、すでに二、三時間は経っただろうか……。


途中で一回チラ見したが、あの金狼………ふつーに寝てやがる。くそ……これ倒し終わったらハイエナの肉を口に突っ込んでやる……!


さあ、なんとか倒しまくって残り三匹……ふむ、お馬鹿なハイエナくんは、ようやく先に私を倒した方が良いことに気付いて戦闘態勢を取ったか。


だが、時すでに遅しというやつよ!お前らの仲間を倒しまくったおかげで、私はすでに4Lv!最早お前らの攻撃を食らっても、ちょっと痛いくらいなんだよぉ!


てことで食らえい!ステータスアップにより威力が高くなった爪攻撃ぃ!


速度ももちろん上がっていたため、たった三匹のハイエナでは、私捉えることなど不可能であった。


ザザシュ!!!


マンガならカッコいい字体で書かれるであろう音を響かせ、見事、ラストハイエナズ、撃破ぁ!!!


『経験値が一定以上獲得されました。それにより、レベルが上がり、Lv4からLv5にアップしました。』


おっしゃあ!ついでにレベルアップー!!!カウワードな私でも、やればできるんだよぉ!!!


まあでも、正直今回のハイエナくん達はめちゃくちゃ弱かった。というより、頭が弱かった?


やはり知識の無い野生の動物なんてこんなものか。こんくらいの奴らなら、たとえステータスがまあまあ上の奴でも、工夫すれば案外楽々攻略できるのではないかな?


さて、何はともあれ、もう明け方だな。起きる時間だな。ということでね、私いきなりあんなゾンビのハイエナ達の群れに放り込み、一人肉を避難させグーグー寝ているあの金狼さんには……レベルアップのお礼に、私が初めての狩りで手に入れたお肉を、ごちそうしなくちゃねぇ~!!!


レベルアップのステータスアップで、気持ち鋭くなった爪でハイエナゾンビの肉を一口サイズ(ちょっと大きめ……ニヤニヤ)に切り分けて、それを運ぶ。(口で運ぶのは匂いがきついから、ちゃんとグースカ寝ているギルマスの前で切り分けたよ!)


さあ……………お目覚めの時間ですよ………我らが、ギルドマスター……!


「さあ、私の努力の結晶、どうぞ召し上がれやがれくださいこの鬼畜狼ぃぃぃぃ!!!」


私は一口サイズ(大きめ)のハイエナゾンビミートをグースカいびきをかいている口に放り込む。そして、ポロっと落ちないよう、しっかり口を閉じてあげる。


すると、数秒して、ちょっとずつゴールドさんが震えてきて……そして………。


「………………!?!?!?に、にがいくさああああああああああああいいいいい!?!?!?!?」


この世界に転移して初めて、私は大爆笑しました。ああ、知り合いが一緒にいる幸せ、こういうことですかねぇ~。(どういうことだよ……!)











「二度とやるんじゃないよカウちゃぁ~ん???」


おかしいなぁ………どうやら私の一晩かけて作り上げた努力の結晶はお口に合わなかったようで………。


「だって……だって、私がせっかく死闘繰り広げている最中に、あなたは肉を避難させたり、グースカ眠ったりで、腹が立って……。」


「だからってあんなこの世の食べ物じゃない肉を口に放り込むなやゴラァ!」


ひぃ!ひどい!この人グレーターフォレストウルフの固有スキルの『威嚇』で説教してくる!ステータスハラスメントだ!ステハラだ!


「はぁ、まあもう良いや。それより、レベルはどうなった?」


「あ、え~と、おかげさまでLv5です。」


「結構上がったねぇー!それで、その『解析』のスキルはどうなった?」


「あ~えっと、あのハイエナとか解析してから見てませんしあんまり上がって…………あれ?Lv4まで上がってる。」


「ああ、そりゃそうだよ。だって自分がレベルアップすればスキルに経験値が入ってレベルアップするからね~。」


「またそういう重要なことを後に言うんだからこの人は……。」


「まあまあ、それでステータスはどんぐらいになったのさ、カウちゃんは。」


「あ、そういえば自分をまだ解析してはいなかったですね。してみますか。『解析』!」



個体名:カウワード Lv5

種族名:フォレストウルフ

能力値:HP-91MP-18攻-60魔攻-30防-72魔防-75速-98

所持スキル:気配察知Lv1 嗅覚Lv4 解析Lv4

スキルpt残量:300pt



うおお!見える項目増えてる!持ってるスキルと残っているスキルpt量を把握できるのかあ!良いね!これ敵がどんなスキルがあるかで色々対策とかできるし!


「すごいですね!解析大当たりかもです!スキルも見れるようになりましたよ!」


「へぇ!すごいじゃん!あ、じゃあアタシのも見てよー!」


「もちろんですよ~。それ!『解析』!」



個体名:ゴールド Lv.3

種族名:グレーターフォレストウルフ

能力値:HP.370MP.10攻.189魔攻.34防.93魔防.88速.273

所持スキル: 気配察知Lv5 嗅覚Lv8 身体強化弱Lv9

威嚇Lv5 大胆Lv2 王格Lv1

スキルpt残量:0



「ほぉ……これがアタシのステータス、そしてスキルねぇ……自分でも把握してないものが結構あるわ~。」


「それを文字として見れるのは良いですねぇ!んで、この速度強化と物攻強化、気配察知と嗅覚このフォレストウルフ固有のスキルですかね?それらは私も持ってますし、強化系のスキル、私はまだ弱ですけど……。」


「経験上、大抵のスキルは10Lvになれば勝手にその上位のスキルに進化するっぽいよ。だからステータスに差があるんじゃないかな?にしても、他は見たら分かるスキルが多いけど、この大胆ってやつと王格ってスキルはいまいち分かんないな~。」


「んー、スキルの説明とかを見れれば良いんですけどね、10Lvまではあるってことなら、解析を上げていけばなんとか見れるようにはなりそうですけど。」


さて、スキルの確認も無事終わり、これからやることから決めないといけないな……。その前に……。


「あの、ゴールドさん、一つだけ良いですか?」


「ん?どーした?」


ぐぎゅるるるるううぅぅ……。


「…………朝ごはんに、しません…?」


「プッ……アハハハハハ!そうだね!カウちゃんは一晩中戦ってたわけだし、そうしよっか!」


ということで、何をするにも腹が空いてはなんとやらってことで、まだ日は昇ったばかりだけど、少し早い朝食にする私達なのであった。






















「ゲプゥ……もう食べられないですぅ……。」


「うわぁ……備蓄分の肉半分食べたねカウちゃん……。」


一晩中戦ったせいか、お腹がペコペコだった私は、残っている肉をとにかく食べて、備蓄半分、約鹿三頭分は食べたとのこと。


「その食いっぷりは、この世界に来ても引き継いでるんだね。」


「そうっぽいですね……。まあ、今みたいに備蓄がある時に脳死で食いまくるのはこれで最後にしますよ。さすがにこのサバイバル生活でそんなバクバク食べる程食糧無いですしね。今狼だから食べられる物限られてるし……。」


「さて、じゃあお腹も満たされたことだし、これからやるべきことを考えようか!」


そうして、私達は、今日に至るまでのゴールドさんの生活も踏まえた上で、やるべきことを考えた。それが、この3つだ!!!


1.食糧収集、及び経験値集め

これは多分最優先事項だと思う。生きるには食う!これが必須!そして、食うためには狩る!この狩りによって経験値を稼ぐ!なるべく倒すならスキルを使う!これによってスキル強化を期待できるから!


そして私はしばらくLv10を、ゴールドさんもLv10を目指し、次の進化を目指す。とにかく強くなって生き抜く!それが最優先!


2.仲間を探す

私とゴールドさんが巡りあったのが偶然だとは思えない。少なくとも、あの時私、ゴールドさんとクエストを回っていた他の三人はこの世界に来ているだろう。


じゃなきゃ、異世界転移でさえ奇跡的なのに、さらにその転移した異世界がおんなじ世界で、おんなじ魔物になってるとか確率おかしいからね!


だからこそ、きっとこの世界のどこかに、ギルド『pack of wolves』のメンバーは生きている。おんなじ狼かもしれないし、別の生き物かもしれないけど!そのメンバーを探して、合流して一緒に行動!おんなじ異世界転移したメンバーじゃなくても、森にいるフォレストウルフを仲間にできたりしたら、それはそれで心強いんだけどねぇ。


仲間は多い方が良いからね!


3.この森から抜け出す&この森に縄張りを作る

まずこの森めちゃくちゃ広いらしい。以前ゴールドさんも、この森を一旦抜け出したくてすんごく高い木を登って、この森を眺めて見たらしい。すると、どうやら一番近いところで木々が無くなっていた場所は、地平線ギリギリとかなんとか。


要は日本で言うと県一つ分はかるーくあるとのこと。北海道レベルかもしれないとかなんとか……ひぃ!


まあそんな森の中は、魔物の巣窟になっているらしくて、強い魔物はそれぞれ縄張りを持っている。以前私を襲ったあのトラくん達が良い例だね。


そんな縄張りだらけの森の中、私達は縄張りを持たない遊牧民、縄張りは一歩足を踏み入れるだけで敵と判断される。だから、他の魔物も縄張りには十分気を付けている。


私はそんなセンサー式の地雷が至るところに張られている戦場を、丸腰でお散歩~状態だったわけですわ。そりゃトラくん達も見境無く襲ってくるよね。だからこそ、そんなヒヤヒヤな旅人状態から抜け出す為にも、私達もこのフォレストウルフの縄張りを作れば良いじゃないかということになったのだ。


だからこそ、これを作るには仲間探しは前提の必須事項になる。たった二匹の縄張りなんて、あって無いような物だもんね。




さて、ざっとこんなものかな!(ずいぶん長くなっちゃったけど。)


んで、今まで散々言ってたけど、前々から気になってることが一つあったんだよね。


「ゴールドさん、私達って、結局異世界なのか異世界なのかどっちなんだろう?」


「へ?なんで?転移じゃないの?」


「いや、だってさ、私達は今まで勝手にあの頭痛の後眠ったのは、って表現してたけどさ、もしあれが、頭痛によるだった場合、転生になっちゃうじゃん?どっちなんだろう?」


「うーん、まあそれはアタシはどっちでも良いんだけど……。」


そうですよね、実は私もそうなんです。


「けど、あのアタシ達を眠らせた頭痛はなんだったのかなー?っていう疑問は、ちょぴっとだけあるよ?」


まるで頭が割れるような痛み、あれは本当に痛かった。


「たしかに、あれなんだったんでしょうね?……………まあ、今はなんも分かりませんし、とりあえず、当面の目標、食糧、レベルアップ、仲間探し、この三つを頑張りますか。私達がこの世界に来た理由なんていつか分かりますって。」


「んーーー……それもそっか!よし!じゃあさっそく森の動物や魔物狩りと行きますか!」


「オーーー!!!」




















「ねえねえ、マリス、あのフォレストウルフおかしいよ。群れてるししゃべってるし、お肉も焼いてる。ねぇ……あのお肉取ってきちゃだめかな?」


「ダメに決まっているだろ!我々は、魔王様にとって優秀な配下となりそうな魔物を監視し、その眼鏡にかなった者を配下にするのが目的なのだ!奴らが、我々魔王軍にふさわしい人材となるまで、関わりを持たず、ひっそりと、影から見守るのだ!それが我々スカウトマンの役目なのだぞイトメア!」


「んもう!マリスのお説教長いし硬いことしか言わないからキラーイ。」


「フン!なんとでも言え。だが、奴らに関わりを持つのはいけないぞイトメア。」


「なんでよ~?ワタシ達が直接稽古して強くして上げた方がすぐ配下になるじゃん!即戦力を手に入れられれば、魔王様もワタシ達を認めて、すぐに幹部昇格じゃないの!そうなれば、魔王様もワタシ達もハッピーじゃん!」


「はぁ……あのなイトメア?ああいう将来有望な魔物というのは、皆総じて知恵を持っている。もし我々が稽古して強くなったとしよう、その時、我々より強くなり、我々を邪魔だと言わんばかりに殺し、魔王様の敵となりうる者を作ってしまう可能性だってあるのだ!それに、もし奴らが、勇者やその仲間、また精霊の女王に仕える聖なる魔物だとしたら、それこそ我々の身が危ないだろう!」


「はぁ……?要はビビってるの?」


「な……何をバカなことを言う!?わ……我とて魔王様に仕える魔人。それに、そこらの軍の雑兵とは違い、こうしてスカウトマンという役職を担っているのだ!あのような犬っころに負ける程、よ、弱くは無いわ!」


「ふ~ん、あっそ。まあただ、そういう魔物を見るだけで楽な仕事だけなら、ワタシは全然構わないんだけどー。」


「ふむ……分かったようで何よりだ。それでは、我は今日見つけたあの狼共の報告をしてこよう。良いなイトメア、お前はとにかく奴らの監視だ。良いか!絶対、絶対に関わるんじゃあないぞ!監視は3日交代だ!それでは、また会おう。」


「はいはい、分かったわよーう。行ってらっしゃーい。……………行ったかな?フフフ、ワタシがそう簡単に引き下がるとでも思った?どちらにしろ、即戦力にしてやれば良い話じゃーん。もしこっちに反逆するなら、早めにお強い人呼んで退治してもらえば良いわけだし……。と、ちょうど良さそうなのがいたわね。スキル『魅了』!」


「ぐ……グオ?グオオオオ!」


「はいはい、良い子良い子~。よし、良い子ちゃーん、お仕事だよ~。二匹で動いてる狼ちゃん達を探して~…………………殺してきて♪」


「グオオオオオ!!!」


「ヨシヨシ、探しに行ったかな?即戦力にするなら簡単な話、レベル上げれば良いんじゃん?あれくらいの奴倒せれば一気にレベル上がるでしょ?それで、強くなったところをワタシの『魅了』で……フフフ!ワタシって、やっぱりてーんさーい!!!」





















「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ、ハッ……!」


まるで本物の狼のような息遣いで走る私達。まあ、本物の狼なんですがね。それよりも、一体いつになったら、ヤツを撒くことができるのか……!


「ねぇ!ハァ……ハァ……どうするの!?あいつ全然諦める気配無いよ!」


「そうですね……ハァ……ハァ……!あの崖!あそこを登ることができれば追い付くことはできないのでは……!?」


「は!?いやいやいやいやムリムリムリムリ!あんな崖僕じゃ登れないよう!!!」


「クッ………では、私がぼっちゃんをくわえて登るしか……!」


「無理でしょ!さすがにそれ無理でしょ!」


「ではどうすれば……!」


目の前は崖で行き止まり!横に逃げるか!?いや、それではぼっちゃんが巻き添えになる!こうなったら……!


「ぼっちゃん!私が囮になります!その間に逃げるのです!」


「え!?いやだ!無理だよスズネ!!!僕がスズネ無しでは今なんにもできないこと、スズネが一番知ってるでしょ!?」


「くっ!しかし………もうこれしか……ハッ!?」


気付くと、ヤツは、その獣は私達の前まで追い付いていた。そして、その大木のように大きな腕を、こちらに振り下ろしてきた。


「ここまでか………!」


その時だった、ヤツの腕に向かって飛び込む、一匹の、金色の狼が見えた……。


「『身体強化』!か~ら~の~……『チャージクロウ』!!」


「グオ!?」


かなりの威力であろうその獣の拳を、爪の攻撃により相殺した……!


「ふぅ……!間一髪!ほら!遅いよカウちゃーん!早くサポートォー!」


「進化前の個体と進化後の個体じゃあ、ステータス全然違うんだから、勘弁してくださいよ……!」


「さて……大丈夫?あんた達!」


ああ……私達は……助かった……のですね……?神様、この世界に私を連れてきた憎き存在よ、今は、今だけは感謝します!


姿形は変わっても、その大胆な戦い方、来てくれるだけで安心する雰囲気、そして、象徴とも言える……その金色の毛並み!


その心強さから、私は安堵の涙を流しながら、その名を呼んだ!


「ゴールドさん……!!!」

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