第2話金狼は、頼もしい味方であり、最大の敵
呆然とする私の目の前で、金色の狼は瞬く間にトラを一匹、また一匹と倒していく。
何よりすごいのが、全て峰打ちで仕留めており、無駄な殺生をしていない……。かっけぇーーー!
だが、やはり私の尻尾を踏んで私を捕まえたあの黒いトラは、一段と強いようだ。
金色の狼でも苦戦を強いられている。…………どうする?何故あの狼が私を助けてくれたのかは分からない。
だが、今のうちに逃げちゃえば、少なくとも私は助かるのでは……?
情の欠片もねえなお前は!とか言われそうだが、知らん知らん!なんせ命掛かってるんで!こんなとこで死ぬわけには…………。
…………はぁ…………。考え直せ私……。たしかに今の私は狼、こうして動物の争いを見ても元人間としては獣の殺し合いを見ても、別に怯えたりはしない。だが、立場を考えてみろ。
狼、つまり私とおんなじ種族。
今の状況を振り返ってみれば、あの人はヤンキーに囲まれていた私を助けてくれた恩人!そんな人が、てこずっているところで逃亡決めるなんてどう考えてもクズだな。
このままじゃ私、映画とかで助けてもらった癖にすぐ逃げるクソザコと同じじゃん。
それは、嫌だな。
何より、恩人が、私を助けてくれた恩人があのトラに殺られたかもしれない、そんな背徳感背負いながら生きるのはちょっと耐えられないかもしれない……。
ならどうするカウワード!お前の持ち味、戦闘を有利に進める動きを!そのクソザコ戦闘能力を補う作戦を考えろ!そして、あの金色の狼手伝うんだ!
辺りを見回し、何か使えそうな物が無いか探してみる。
すると……そこら一帯の木にはツルがあるじゃないか。これで、うまくトラップでも作れないか?
ええい、作れないかじゃない、作るんだよ!やったれカウワード!お前ならいけるいけるー!!!
うろ覚えのサバイバル知識で、木のツルをどんどんと色んなところに結んだり、少ない体力でも、ジャンプすれば案外木の上にツルを引っ掻けることもできた。
そして、簡易的ながら、おそらくトラップ完成!これちゃんと作動するかなぁ……?
いや、もうやるしかない!金色の狼も、だいぶ疲労が見える。すぐにでもこっちにトラをおびき寄せて、倒してしまわねば!
どうやったらトラはこっちに来るかな?小石でも当ててみる?てまず投げられないし当ててもそれくらいじゃこっち来ないだろ。
うーん、まずいぞ、おびき寄せる方が難しいんじゃ……。ここは、あの金色の狼さんに協力をしてもらうしかない。けど、どうやって気付かせる?こっちにおびき寄せろ!って。
あ、待てよ?もしかして、狼同士だから、狼語通じる?だとすれば………。
私は、残る気力を振り絞り、全力で息を吸って、全力で、叫んだ!
「こっちに、トラをおびき寄せてくれぇ!こっちに、逃げて来るんだー!」
他の生き物からしたら、ただのでかい遠吠えに聞こえたりするのかもね。けど、ちゃんと金色の狼には聞こえていたんだろう。
私の叫び声を聞いてすぐ、こっちに走ってきてくれた。
遅れて、黒いトラも追いかけてきた。さすがに、同胞に重傷を負わせた奴を、みすみす逃がすつもりはないらしい。
だが、こちらとしては好都合。あとは、あの狼が合図に従ってくれるのを祈るのみ。
まだだ………………まだ………まだ……………!ここ!!!
「今だ!その草むら飛び越えて!!!」
「!」
かなりギリギリの合図。正直自分でも中々鬼畜な合図タイミングだと思う。けど、なんでだろう?この人(狼だけど。)には任せられる気がした。
そして、私の期待どおり、その狼はしっかりとその草を飛び越えてくれた。
後に続くトラは、そんなことをせず草むらに直進。その瞬間!私の作ったトラップが作動!
草むらに隠してた小さい落とし穴にはまりバランスを崩したところで、落とし穴に引っ掛かれば同時に踏んでしまうように設置された木のツル。
これを踏んだことにより、周りに引っ掻けていたツルが瞬く間にトラの体に巻き付くようになっていたのさ!
急な出来事で、じたばたと四肢を動かすトラだが、そんな隙を金色の狼さんは見逃すはずもなく……。
ザシュ!!!
見事、その大きい爪でトラに峰打ちを決め、この戦いに終止符を打つのだった。
はぁ~、良かったー!なんとか二人とも無事に生き残った。………あれ?私なんでこんなことになっていたんだっけか……?
グギュルルルルルゥゥゥゥ~。
あ………お腹空いてたんだったね……。あれ……?危険が、去った、安心感からかな……?体に、もう力入んないや……。あ、だめ……もう立て……な…………。
ばたりとその場に私は倒れ込んだ。
アハハ、結局これ餓死コース?………まあ良いか。最後は恩人、いや、恩狼が生き残ることもできたし、カウワードの名前も、少しは返上できたりした………かな……?
そこで、私はまた意識を手放した。今度は、ほんとに死を感じて……。
…………クンクン、ん?なんだこの匂いは……めっさ良い匂い……!これは、しばらく行ってない焼き肉の匂い?あれ?もしかしてさっきのって結局夢だった……?ただものすごくお腹空いてた私のリアリティ抜群の夢だった?
そう思い目を開ける。
眼前には、焚き火、そしてなんらかの動物がその火でじっくり焼かれている光景。
空はすっかり暗くなっていて、辺り一面には木々が立ち並ぶ…………夢じゃなかったああああああああ!!!泣泣泣
夢であって欲しかった!あんな怖い思いしたのが現実とか嫌だよおおおおお!!!とは言ったものの、とりあえずなんとか生きてるな私。
めっちゃ頭クラクラしてもうすでに死にそうだけど……。
まずここどこ?私がさっき気絶したのって見通しの良いエリアで、トラくん達と一緒にぱったり倒れ込んじゃったのよね。
それが、何故か焚き火で肉焼いてるキャンプポジションに来ているわけで。
考えられるのは、誰かが運んだ?運んだとすれば、あの金色の狼……でもなんで?あの狼にとっては、二度も私を助けたことになるけど、メリットとか全然無いよな?
は!まさか、私を、自分専用の奴隷とか舎弟にして一生こき使うつもりなのでは……!?
「お!目を覚ました!良かった!すごいお腹の音鳴ってたから、なんも食べて無いんでしょ?お肉焼いといたから、食べて良いよ!」
おっと、噂をすればなんとやら。
さっそく金色の狼さんのお出ましだ。
めっちゃ親切にしてくれるやんこの狼。
ま……まあとりあえず、食べるか。
どんな思惑があるにしろ、今は食わないと死ぬ……。
体力限界の私は、フラフラとした足取りで肉の元に向かう。
あ、そうだ、しっかりとこういう時は感謝を込めて……ね。
「………いただきます。」
「!」
なんか金色の狼さんが反応してる気がするけど、まあたしかに狼界でいただきますとか言わないし珍しいことではあるわな。
ああ、待ってそれよりも、久方ぶりの、肉ぅ!!
うんま!絶妙に柔らかくて、ジュワットジューシーィィィィィ!!!!!
ああ、染み渡る。
空っぽの骨身に、肉汁が染み渡るぅぅぅ…………!
「ハハハ!ずいぶんおいしそうに食べるじゃん!ほんとにお腹空いてたんだね。いっぱいあるから、ドンドン食べな~。」
とりあえず、返事する余裕も無いほど、私は肉にかぶりつく。
コクコクとだけ頷き、とにかくお腹いっぱいになるまで目の前にある肉を、食らって、食らって、食らいまくったのだった……。
ふぅ………。肉で腹いっぱいになった……。幸せってこういうことを言うのだろう……。辛い現実ではあるが、その中では夢のような時間だった。
さて、食事も一段落したところで、この狼さんには色々聞きたいこと盛りだくさんだな。何から聞こうかなー?
と、質問を考えていた私に、金色の狼が逆に聞いてきた。
「君さ、もしかして元々人間だった?」
…………!?!?!?え!?なななななんだって!?
「はい!?ななな、なんでそのことを!?」
なんだこの狼、急に怪しくなってきた。
なんかの能力者?そういう魔法とかが実は使えたり?
驚く私に、狼はニヤニヤしていた。そして、こう続けたのである。
「だって君、狼のくせに焼いた肉を大して不思議がらずに食べるし、さっきのトラを引っ掻けたあのトラップも、人間並みの知識が無いと作れないでしょ。そんで聞いてみたらその動揺!もう人間確定じゃん!アッハッハッハ!」
な……なるほど、そこは盲点だったかも。
たしかに狼とか他の肉食動物が、焼いた肉食ってるのなんて見たことねえな。
ん……?でも、この人私が目覚める前から肉焼いてたよな?
あれ……?てことは……?
「もしかして、あなたも元人間……ですか?」
「うん、そーだよー。」
まじか……!?まさかのおんなじ境遇の人がここにもう一人!?すっげえ偶然……。偶然で片付けられるレベルかこれ?
「す……すんごい偶然ですね。」
「だねー。私もこの体になってまだ一ヶ月でさ、おんなじ人間だったって人初めて会ったから心強いわぁー!アタシさ、こう見えてもコミュ障でさー。あんまし会話とかうまく無いんだよー!でも何故か、君は懐かしい感じがしてさ。素直に話せるっていうか。」
「たしかに!私もすんごいコミュ障なんですよ!けど、なんかあなたからは、そんなに気まずい雰囲気も感じなくて、むしろ話しやすい友達っていうかなんていうか!」
「分かるー!ネッ友ていう感じだよねまさに!」
「そうそうネッ友!」
「「アハハハハハ!!!」」
ん???そんな楽しい会話の途中で、ふと私の頭に疑問符が浮かぶ。
こんなコミュ力無い私が会話できるのなんて、うちのギルドメンバーくらいしか思い付かないんだけど……。
「あのーすみません、実は私あるVRMMOをやってる時に気絶して、気付いたらこの狼になってたんですけど……もしかしてあなたはどうやってこの世界に?」
「あ!ほんと!?あたしも!おんなじ!まさにそのVRMMO!『
「え!?ちょちょちょちょ、待ってください待ってください、なんなら自分もそのゲーム中に気絶したんですが!」
「え!?うそ!?…………ねえ、せーので、プレイヤーネーム言ってみる?」
「………言ってみますか……。」
「じゃあいくよ、せーの!」
「カウワード!」 「ゴールド!」
「「あ…………ええええええええええええええ!?!?!?!?」」
どうやら、私を救ってくれた、命の恩人、いや、今は命の恩狼は、ギルドpack of wolvesのギルドマスター、ゴールドさんだったようです……。
「ハハハハハ!!!まさかカウちゃんだったとはねぇー!なんか懐かしい雰囲気だと思ったよ!」
「いやあ私も、まさかゴールドさんだとは……。なんとなく似てるなぁとは思いましたけど。」
しばらくお互いに驚きの余韻が隠せない私達。
けど、この異世界でまさか知人に会えるとは……。安心感がすごい!
「いやぁ……ほんと、右も左も分からない状態でゴールドさんと会えたのは助かります。自分はまだなーんにも把握してないんで。」
「なんにも?さすがにそんなこと無いでしょー!この一ヶ月間どう生き延びたのさ!」
「へ?一ヶ月?」
「え?」
そういえば、ゴールドさんさっきもここに来て一ヶ月とか言ってたな……。
「いや、少なくとも、私はこの世界に来てまだ1日しか経ってないんですけど……。ここに来てすぐあのトラの集団に襲われましたし。」
「う……うそぉ!?アタシここに来てもう一ヶ月くらいは経ってるよ!?」
むむ……?どういうことだ……?たしかに私がここに来る前、異種族世界をプレイしていた時気絶したタイミングは、少なくともゴールドさんと同じのはず。
あの時痛みで苦しんでいたのは、一緒にクエスト周回していた五人で、その中にゴールドさんもいたのだから。
ここから考えられるのは……。
「この世界に転移したタイミングが、それぞれ違ったりするんでしょうか……?」
「ま……まあそれしか考えられないよね?」
うーーーむ…………どういうことだ……?転移のタイミングが違う?いやまず、おんなじ世界の知人がおんなじ異世界に転移してきている時点で普通じゃない。(いやまず異世界転移自体普通じゃないんですけど……。)
うーーーーーん???
「まーこの話は一旦置いときましょう……。正直、転移したタイミングとかどうでもいいです!結局今は、私達はこれからどうしましょうっていう話しですからね!」
「それもそうねー。そうだなー、じゃあカウちゃんは来たばかりってことは、またレベルとかスキルの概念も知らないのよね?」
「へ?レベル?スキル?」
「そーそー、ま、順々に教えて上げるよー。」
いきなりゲームみたいになってきたな。
まあ異世界転移ってことは実はスキルとか魔法はあるんじゃないかとちょっとわくわくしていたし、興味はめちゃくちゃあるよね!
「いーですねー!聞きたいです!」
「よーし、じゃあとりあえず、私がこの一ヶ月間で分かったこと、全部教えて上げよう!」
そうして、ゴールドさんの、異世界講習会(?)が始まった。
「あー、まず私はこの世界に来てから、水と食糧を集めようと思ったわけよ。どんな姿であれ、それさえあれば生き残れるからね。そんとき、なるべく弱そうな動物を狩っていたのよ。さっきみたいなトラとかに喧嘩売ったらそれこそ即死だし。」
「私は喧嘩売ってすら無かったんですけどね……。」
「なーに言ってんの!あの見晴らしが良いエリア、あれあのトラ達の縄張りだからね?トラが襲ってきたのは、縄張りに侵入した動物を排除しようとしただけよ!あいつら個々のステータスもまあまあ高いから、縄張り近くは動物なんてほとんど歩いてないから。」
あーーー……だから全然あの周り動物がいなかったのね……。たまたま私はあのトラの縄張りに侵入していた……と。
縄張りってことはもっといたのか……。ゴールドさん来なかったらまじ死んでたな私……。
「んで、話を戻すけど、そうやって食糧集めの為にどんどん動物を狩っていたわけよ。そしたらある時急に、頭にこんな声が響いたのよ。『フォレストウルフ のレベルが、1から2に上がりました』てね。」
「なるほどぉ……?それによってどんどん強くなったってことですね?」
「そうそう!その声が聞こえたと思ったら、ちょっと体が軽くなった気がしたからね。そんときはよく分からなかったから、無視してまた動物を狩り続けたわけ。そしたら、またおんなじように声が聞こえてレベル3に上がりました、て。レベル3に上がったとき、さすがに体も気のせいどころじゃないくらい軽くなったから、あ、強くなってるじゃん!て気付いたのよ。」
ふむふむ、つまりレベルが上がると、ゲームで言うステータス的なのものが上がって強くなれるって感じか。
「なるほどぉ。それで、もうひとつのスキルの存在にはどう気付いたんですか?」
「うん、実はねーこれはすっごく偶然だったんだけどね。頭の中で、レベルがあるならスキルとか魔法もあんじゃね?とか思ったわけよ。そしたら、ポン!とね、自分の目の前になんか出るわけよ!電子ボードみたいなのが!」
「電子ボード!?しかもいきなりですか!?」
なんじゃそりゃとか思いつつ、じゃあ自分にもできるか……?と思い、私は心の中でスキルが欲しい!と唱えた。すると……。
ポン!
なんと、まじでなんか出てきた!
「うわあ!?まじで出た!」
「そうそうそれだよー!それは、ゲームのスキルボード的な存在っぽいね。スキルの簡単な説明と名前、そして今持ってるスキルポイントが書いてあるだけだよ。」
「てか他人にも見えるんですね……?えーと何々?スキルポイント残量100、解放可能スキルが……えー身体強化、属性解放、魔力上昇、ふむふむ。」
「ちなみに私は身体強化を取った。いざというときはこれ使えば、少なくともあのトラくらいならカウちゃんでも勝てるようにはなる。ただ、一番弱いスキルですら、解放するために必要なのは最低でも100ポイント必要っぽいから、気をつけて。」
「なるほどぉ……。ちょっとじっくり見てみます。」
「うんうん、じっくり考えなあ。」
うーむ、一番下のスキルとはいえ、結構面白そうなの多くて迷うなあ。ゴールドさんと同じく身体強化で、ガンガンレベルアップして他のスキルもバンバン解放!とかも良いし、魔力上昇で魔力を手に入れて魔法を習得するのも中々……うーん!めっちゃ迷うな!
と、そこで私はひとつのスキルに目を引かれた。
「『解析』……?」
「あー、そのスキルね。私は戦闘用のスキルばっかり取ってたからさ、全然分かんないんだよねそのスキル。」
「説明見る限りでは、情報収集用のスキルっぽいですけどね。」
情報収集、それは戦闘において、相手の弱点や動き等、物事を有利にするためには必須のもの。
それは、戦闘の指揮を一番経験している自分が一番自信を持って言える。
だから私は奥の手、ダークホースといった、事前に与えられていない予想外の事態というのはすごく嫌いだ。
スパイを送るのも辞さないくらい嫌い!
だからこそ、この何も分からない世界で、このスキルは私と相性ピッタリなんじゃね?
よし決めた!スキル『解析』!いただきまーす!
そうして、このスキルボードなるものを電子機器のごとくパネル操作をしていった。
『スキルポイント100ptを使い、スキル:解析 を習得します。Yes/No?』
もちろんYes!
『スキルポイント100ptを使い、スキル:解析Lv1 の習得に、成功しました。』
来たあー!!!
「ゴールドさん!スキル『解析』!習得できましたよ!」
「お、良いねー。」
「これどうやって使うんですか?」
「うーん、アタシはとりあえず身体強化!て唱えたらできたから、カウちゃんもそれでいけるんじゃない?」
「分かった!やってみます!えーとじゃあ、ゴールドさんに向かって~………『解析』」
さて、まだLv1だからあんまり期待はしていないが……おお!なんか色々浮かび上がってきた!
個体名:ゴールド Lv.3
種族名:グレーターフォレストウルフ
能力値:HP.370MP.10SP.250攻.189魔攻.34防.93魔防.88速.273
おお!すごい!名前と、レベルと、ステータスも分かるのか!かなり有能じゃん!HPは体力、MPは魔力量だと分かるし、魔攻は魔力攻撃力、魔防は魔力防御力とかかな?けどSPってなんだろう?
「どうどう?何が分かった?」
「んーと、名前、レベル、ステータスは分かりました!Lv1でも結構分かりますね!てかゴールドさん完全に近接アタッカーって感じですね。」
「アハハ!まあそういうスキルしか選んでないしね!狼だし!」
「というかゴールドさん、グレーターフォレストウルフって、なんでゴールドさんだけ上位種族なんですか?不公平ですよー。」
「ああ!そういえば言うの忘れてたね!アタシ達はどうやら、一定までレベルアップすると進化が可能らしいんだよね。」
「進化!?結構重要じゃん!そんな重要事項忘れないでくださいよお!」
「アッハハ~、ごめんごめん。」
この人、戦闘になると頭回るのにこういう時結構抜けてるんだよなあ。
「で、その進化なんだけど、私は最初、カウちゃんとおんなじくらいの大型犬サイズだったわけー。そのサイズで10Lvになったら、急に頭に声が響いてね、『一定条件を満たしたことにより、上位種族へと進化が可能となりました。実行いたしますか?Yes/No』て感じでね!」
「ふむふみ、レベル進化ですか。なんか有名なゲームっぽいですね。」
「そうそう、んで、特殊なのが、進化には選択肢があってねー、この今の私、『グレーターフォレストウルフ』と、『フォレストハイウルフ』だったね。アタシは、でかくて強いのが好きだから迷わずグレーターの方選んだけどね!」
「ゴールドさんぽいですね…。なるほど進化かぁ。それでステータスも結構高いんですね。しかし、このスキルのLv1ってやつ、要は使えば使う程レベルが上がるとかで良いんですかね?」
「だと思うよ!アタシの身体強化も、使いまくって今はLv7だからね!その解析も使いまくればレベル上がって、敵の持つスキルとか見れちゃったりするんじゃない?」
「おお!それ良いですねぇ!んじゃあいっぱい使ってみますか!」
ということで、周りの草木をとにかく解析しまくる。解析解析解析解析ぃ!!!
出てくるメッセージは、『木』、『木』、『雑草』、『雑草』、たまーに『薬草』。
けど、名前が出るだけで、図鑑みたいにどんな薬草でどんな効能があるかとかは出ない。ま、レベル1だしこんなもんか。
とまあ適当にバンバン解析しているところで、たまたま解析エイムが木々の間の暗闇にいってしまった。
我ながら見事なクソエイム。
すると、何故かそこに解析が反応した。
種族名:ハイエナゾンビLv3
能力値:HP.61MP.0SP.48攻.65魔攻.3防.41魔防.34速.66
種族名:ハイエナゾンビLv2
能力値:HP.56MP.0SP.45攻.60魔攻.2防.38魔防.31速.60
種族名:ハイエナゾンビLv4
能力値:HP.66MP.0SP.50攻.68魔攻.4防.45魔防.40速.69
種族名:ハイエナゾンビLv2種族名:ハイエナゾンビLv3種族名:ハイエナゾンビLv2……………………………………………………。
うひい!?なんかめっちゃ反応してるううううううぅぅぅ!?
一度に入った情報量が多すぎたのか、すごく頭も痛いぃぃぃ……。
「ゴールドさんやばいです!なんか、なんかめっちゃいるぅ!」
「んー?何々どうしたの?て、あらら、囲まれてるねぇ……。」
解析に反応した数匹は、ただの先頭集団であった。そいつらに続いて、一匹、また二匹とこのハイエナゾンビなる魔物は現れて、最終的に解析に反応した数は……。
「合計……35匹……。」
すると、頭にまた声が響いた。
『スキル:解析Lv1は、一定以上適切に使用されたため、Lv2に上がりました。解析Lv2は、一定以上適切に使用されたため、Lv3に上がりました。』
わぁい、数が多かったおかげで一気に解析が3までレベルアップぅ……いや、やばいやばいやばいー!!!
「ちょ!やばいですってゴールドさん!逃げましょう!身体強化とかあったでしょ!あれ使って私を乗せて逃げ………。」
「なーに言ってんのさ!あんたも男でしょ?あいつら、結構簡単に倒せるザコなんだし、経験値稼ぎにちょうど良いでしょうが!ほら、いっくよー!」
そう言いながら、爽やかな笑顔で、私を前へ押し出すゴールドさん……。ああ……いきなりこんな世界に送り込まれていて忘れていた………。この人……スパルタやったわ………。今日が……命日か………。悔いは……あるある!超あるぅ!我が生涯一片も悔い消せてないぃぃぃぃ!!!
「いやだ!やめて!ゴールドさん!やだぁ!ギルマスぅ!!!」
さあ、地獄の夜が……始まります……泣
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