ミステリ系短編まとめ
青谷因
『仇敵』
積年の恨みとも言うべきか。
長き年月をかけようやく、にくき仇敵を討ち取った。
何度も生まれ変わりながら。
そのおかげで、姿かたちはもはやあの頃とは似ても似つかないものに成り果ててしまっていたが。
私は私の心のままで、あいつと何度もめぐり合っては、獲り逃がし続けていた。
それでも、諦め切れなかったのだろう。私の魂とやらは。
愛しくも、憎憎しいあいつのことを。
しかしながら、年月とは残酷なものだ。
あいつも、変わってしまったらしい。
かつての、強い眼差しは、ギラギラとしたまぶしさはそこになく。
弱弱しく何かに寄りかかりながら、かすかに聞こえる息遣いで、そよ風にすらおびえているその様に。
少しばかり失望すると共に、憐憫の情さえもがこみ上げてきた。
まったくもって、可笑しな話だ。
あれほど、お前に人生のすべてを狂わされたというのに。
何度も死に変わりながら、ここまで追いかけてきたというのに。
虚しさしか、残らないとは。
きっと。
俺もお前も、やつらに上手く利用されたのではないだろうか。
ミステリ系短編まとめ 青谷因 @chinamu-aotani
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