第15話 あやかしランド
アンズたちの案内で駅の横をくぐり抜けてベイエリアにある遊園地へとやってくる。
位置的にはハーバーランドに近い感じだが、さすがに何から何まで一緒というわけじゃないか。
白いゲートの右隣に「あやかしランド」というシンプルな看板が出ていて、制服を着た兎頭が立っている。
「ぴょんぴょんさんこんにちはー」
「おやアンズさん」
ぴょんぴょんという名前はどうなんだと思ったが、あやかしたちにとっては普通なのかもしれないな。
アンズは知り合いらしく愛想よく話しかけてる。
ぴょんぴょんは赤い瞳をこちらに向けてきた。
「おや、ニンゲンさんですね? もしかしてアンズさんのご主人様ですか?」
「何で解ったんですか?」
いきなり言い当てられて驚いて聞き返してしまう。
「いや、アンズさんがご主人様以外のニンゲンさんと仲よくするなんて、まして一緒にここに来るなんてありえないかなと」
「もっちろんだよ!」
ぴょんぴょんの言葉にアンズは力いっぱい答える。
「アンズってもしかして俺が知らないところだと、かなり武闘派だったりしないか?」
俺が言うとアンズは気まずそうに口を閉じて目をそらす。
「今さら気づいたの?」
ココはふんと鼻を鳴らした。
「私だって正直あなたと家族認定されてなかったら、関わりあいになりたいタイプじゃないわよ」
「そ、そんなことないよ」
アンズがあわてて俺のところに寄ってくる。
「アンズはいい子だもん!」
「俺にとっていい子なのは事実だからそれでいいや」
死に別れたはずのペットが目の届かないところ何をしていたかなんて、責任を取れと言われても納得できない。
「ほっ」
俺が怒らなかったからか、アンズは安堵して胸を撫でおろす。
たわわな果実が上下してて、現実なんだなぁとあほなことを考えた。
「ニンゲンさんはこの辺初めてですか?」
話が落ち着いたところを見計らってぴょんぴょんが話しかけてくる。
「そうですよ。というかあやかしの国に来たばかりです」
ここにいると認識してまだ数時間程度しか経過していないはずだ。
「おや、そうでしたか。それじゃあやかしチケットはお持ちじゃないですよね」
「あかやしチケット?」
知らない単語を出されて困惑する。
「はいはーい。こんなのだよ、ご主人様!」
アンズが元気よく言いながらポケットから白い紙を取り出す。
可愛らしいピンクの肉球らしいスタンプが押されたものだ。
「ここで暮らしているとあかやしチケットをもらうチャンスがあるんで、頑張って集めてください。そうすると使える場所で使えます」
なるほど、何が言いたいのかは理解する。
あやかしチケットをもらえるチャンスがどこにあるのか解らないが、アンズが持ってるなら彼女に聞けばいいだろう。
「今回はアンズがご主人様の分も出す! いいよね?」
「持ち主の同意があるなら問題ありません」
ぴょんぴょんはそう言ってアンズが差し出した二枚のチケットを受け取る。
「ご主人様の分ならいいよ! アンズが全部出す!」
と本人(あやかしは人なのか?)は主張した。
何でうれしそうなんだとは言わないでおこう。
こっちの世界で俺は無一文扱いの可能性が高いんだから、自力であやかしチケットとやらを手に入れるまで彼女の好意に甘えるしかない。
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