第14話 制御できない

「うれしそうだな?」


「うん、だってご主人様にいっぱいナデナデしてもらうの久しぶりだもん!」


 アンズは元気いっぱいに答える。

 彼女と接しているとこっちまで元気をもらえそうだな。


「それで? 鉄道に乗らないならどうするの?」


 冷静な感じでココに問われると、とっさに何も言えなかった。


「どうしようかな」


 せっかくだからどこか行きたい気持ちもあるし、他のあやかしたちと会ってみたい気持ちもある。


 パッと思い浮かぶ選択肢がいくつもあるので、何からすればいいのかわからないのだ。


「みんなは何をして過ごすんだ?」


「えーっと日なたぼっこかな。ご主人様いないとやることなかったから」


「そうね。昼寝ばかりしていたわね」


 アンズとココからそれらしい答えが返ってくる。

 ミヤコはと言うと微笑むばかりで何も言わない。


「そっか。みんなで遊べるところがあればいいんだけどな」


 アンズはダッシュや動き回れれば何でも好きだが、ココは狩りが好きというわけじゃなかった気がする。

 

 正確に言うとやるかやらないかはその時の気分次第って感じだ。

 伯父さんは猫はそんなものとか言ってたっけ。


「あるよ? ユウエンチだったっけ? 人間さんが遊んでるのを見て羨ましかったからって作ったみたい」


 アンズが無邪気な顔で意外すぎる言葉を放った。


「遊園地があるのか」


 神戸にはハーバーランドがあったけど、あそこは遊園地って感じじゃなかったと記憶しているんだが。


 何か何まで人間の世界にそっくりにする必要もないか。

 

「行ってみる?」


 アンズが小首をかしげながらたずねてみる。


「行ってみたいがここから近いのか?」


「駅からそんなに離れてないよ」


 アンズの答えを聞いて俺の腹は決まった。


「じゃあ行ってみようか」


「わーい!」


 アンズが手を叩いて喜ぶ。


 いちいち大げさな気はしているが、こんな反応をしてもらえるのはこっちもうれしいな。


「ふん、お子様ね」

 

 なんてココが憎まれ口を叩く。

 しかし彼女の尻尾と耳を見れば感情の動きがバレバレだ。


「興味津々なのバレてるぞ?」


 ニヤリと笑って指摘するとココは真っ赤になって顔を手で隠す。


「反則にゃー」

 

 と小声でうめく。


「ココちゃん、クールな女の子だったのに感情ゆれゆれだね」


 アンズがほえーと感想を漏らす。


「主人に会えたことがうれしすぎて、制御がきかなくなっておるの」


 ミヤコがニヤニヤしながら評する。


「ち、違うもん! この人のこと世界で一番大好きなんて思ってないんだもん!」


 ココは一生懸命否定したが、どこからどう聞いても完全な自爆だ。

 誰も何も指摘せず、三者三様にニヤニヤしながら彼女を見つめる。

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