第8話 座敷童
「部屋に戻ればいい。ミヤコもあそこに来るはずだから」
俺の部屋があやかしの集合場所になってるってことか?
理由は解らないがひとまず戻ってみよう。
他の人なんて、世界なんてどうでもいいと思って引きこもってたが、だからといってこんな展開になるとは夢にも思わなかった。
なんて考えながら部屋の前まで戻ると赤い着物を着たおかっぱ頭の少女がいた。
アンズやココに負けず整った顔立ちは日本人形を連想させる。
年は十二歳くらいでココよりもさらに年下に見える。
アンズが高校生くらい、ココが中学生くらいとすれば、三姉妹みたいだな。
「戻ったか。アンズ、ココ」
「うん! こっちの人がアンズとココちゃんのご主人様だよ!」
笑顔でアンズが紹介すると少女は淡々と言った。
「見れば解る。おぬしは絶対に主人以外に尻尾をふらないだろうからな」
たしかにアンズは家族以外にはけっして懐かなかったし、ご飯をもらっても食べない頭のいい子だったな。
あやかし化した状態を見てると頭がいいかどうかぐらつきはじめたが。
そう思っていると少女は俺を見る。
「ワシはミヤコという。人間たちは座敷童と呼ぶそうだが、理解できるか?」
「座敷童なら知ってるよ」
妖怪とかのたぐいで特に有名な存在だ。
住み着いた家に幸運をもたらす能力を持つというが、本当かな?
「知ってるなら話は早い。ワシは人がいる家に住むあやかし。おぬししか頼れるものはいない。よろしく頼むぞ」
座敷童ってそういう存在なのか。
それなら俺しかもう頼れる相手はいないっていうのも解る。
「……事情は解ったけど、ミヤコがいれば食料は大丈夫という理由が解らない」
俺が疑問を告げるとミヤコは「ああ」と言った。
「ワシの能力じゃな。おぬしが生きていくのに必要な幸運をもたらすことができる。要するにワシがいるかぎり水や食料がなくなる可能性はないということ」
「すごいな」
そうつぶやいてからハッとする。
「もしかして俺の家の電気や水が普通に使えるのも?」
「ワシの能力じゃよ」
ミヤコの答えに納得した。
つまり彼女がいないと俺は死ねそうだということも。
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