第7話 ミヤコちゃん

 さてどこを探そうと思った時、スマホを取り出す。


 誰もいなくなったんならアプリのサービスはすべて終了してるんじゃないか?

 もしも無事な人がいるならSNSで発言しているかもしれない。


 そう思ってスマホの電源を入れてSNSアプリをタップしたが、応答はなかった。


 いろいろアプリをタップして起動させようとするが、どれも動かない。

 SNSはもちろんそれ以外のアプリは何一つ動かなかった。


「マジかよ……」


 ネットすら見ていなかったからこの異常な事態に気づかなかった。

 ……最後に見たのは何日か前で、それまでは何ともなかったはずだが。

 

 本当にいったい何が起こったんだ?


「人間さんが持ってる道具だね? 何に使うの?」


 アンズは不思議そうにスマホ画面をのぞき込む。

 スマホも知らないのか……まあいいや。


 それよりもピンチなことがある。


「マジで人がいないなら食料なんてないんじゃないのか?」

 

 あやかしの国なんだっけ?

 あやかしって水しか飲まないんだとしたら、当然食料なんて持っているはずがない。


「それに今気づいたけど、動物たちもいないな……」


 近所の家の飼い犬や野生のカラスやハトといった生き物たちが何もいない。

 外に出た時の違和感は単に人がいないってだけじゃなかったんだ。


 俺とアンズとココしかいないと言ったほうが正確な現状だった。

 あやかしの国と言うなら、あやかしはいても不思議じゃないんだが。


「あやかしになった子たちしかいないよね」


 アンズがさらりと言う。


「お前たち以外にもあやかしになった動物はいるのか」


「んー、よくわからないけど」


 返ってきたアンズの答えは何とも頼りないものだった。

 まあ説明されたところで俺に理解できたとは思えないんだが。


「とりあえず飯だな……水と電気はあるんだから後は飯さえあれば」


 一応引きこもり用の保存食ならまだ残っているはずだが、補充ができないかもしれない可能性が怖い。


 できれば早めに何とか突破口を見つけたいんだが。


「魚も鶏もいないならどうやって肉を確保すればいいんだよ」

 

 人がいないなら野菜も果物もダメなんじゃないか?

 ……控えめに言って今の俺ってメチャクチャやばくないか?


「大丈夫だよ。ミヤコちゃんがいるから」


「ミヤコちゃん? 誰だそれ?」

 

 また突然知らない名前が出て来たのでアンズに聞き返す。


「んん? ミヤコちゃんもあやかしだよ」


「それは予想できる」

 

 ズレた感じのアンズの答えにそう応じる。

 俺以外に人は残ってないというやりとりからそうだろうなとは思ったんだ。

 

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