第3話 ご飯を食べよう
まずは味噌汁をひと口飲むとホッとする味だった。
気のせいか母さんの味に近い気がする……味噌汁なんてココもアンズも飲んだことないはずだから偶然かな?
「美味しい」
「当然でしょ」
ふんとココが鼻を鳴らす。
「ココちゃんの愛情がたっぷり入ってるもんね」
アンズがニコニコしながら言うと、
「なっ!? ちょっ!?」
ココが大いに慌てて真っ赤になってじたばたしている。
ばらしたアンズに悪意はまったくなさそうだからかえってタチが悪い。
ココも気の毒に。
思わず同情していると、
「見ないでばかぁ!」
涙目になって顔じゅうが真っ赤なココに抗議される。
とんだとばっちりだけど、あまりにも可愛いので理不尽さも許容できた。
ココってこういうタイプの猫だったよなぁとなつかしく思える。
「な、なにニコニコしてるにゃ?」
恨めしそうににらんでたココがちょっと動揺した。
「料理がなつかしくて美味いものばかりなんだから、俺に対する愛情をたしかめることができるなぁと」
人間の女の子相手だったら恥ずかしすぎてとてもこんなこと言えはしないのだが、相手はココだ。
一緒に寝たし夜遅く遊んでそろって母さんに怒られたココだと思うから平気で言える。
「にゃ? にゃああ!?」
ココは悲鳴をあげた。
「よかったね、ココちゃん。想いが通じて」
おやっと思ったがアンズの発言でなるほどと思う。
ご飯を食べ終えて腹がいっぱいになると、だんだんと外のことが気になりはじめた。
アンズとココのインパクトの強さに思わず忘れかけてたけど、冷静に考えると今の状況ってツッコミどころしかないんだよな。
「さっきの答えだけど」
というアンズの発言で意識が彼女に向く。
「アンズたちは今はお水を飲んでれば大丈夫なの。だからご主人様、お水飲んでもいい?」
彼女はこっちを見上げるように聞いてくる。
ココも表情をとりつくろってこっちを凝視していた。
「ああ、もちろん」
「やった、ココちゃん一緒に飲もう?」
「うん」
アンズは喜んでココと連れだって水道に行き、水を出して二人で水を飲む。
……料理は普通にやっていたのにコップに入れて水を飲むということはできないのか?
ふたりの行動を見て何だかアンバランスなように感じる。
聞いていいのかどうか迷ったので何も言わず見守った。
「一緒に水を飲めばよかったのに」
と言うとアンズがふり向いて言う。
「ご主人様がゴハンを食べてからじゃなきゃダメなんだよ。アンズたちは後」
そう言われて犬はたしか食べる順番が序列に影響するらしいと、昔伯父さんに聞いたことを思い出す。
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