第11話 ダンジョン攻略11日目

ア「起きるのじゃ!」


アヌビスは俺の鳩尾にパンチしてくる。


レ「ぐへっ、いきなり攻撃するな!」

ア「何度殴っても、ダメージ0だと起きないからじゃ!」


すでに起こそうとしたあとらしい。


レ「あー、そういえばみんなで寝るからって時計のアラーム切ったんだった。」


そう思って時計を見ると、まだ6時だった。


レ「いつもより早いじゃないか!何で起こすんだよ!」

ア「すでに皆が起きておるぞ?」


言われてみれば、見渡すとすでに闇の壁も解除され、布団が片付けられていた。皆はそれぞれの部屋に行っているみたいだ。


レ「くっ、共同生活の弊害がこんなところにも・・・。」

ア「早く、朝食の準備をするのじゃ!」

レ「とりあえず、着替えさせろ。」


俺は小部屋に戻ると、自分が着替えると同時に、アヌビスも着替えさせる。洗面所で歯磨きを終えると、皆が大部屋に集まっていた。


ヤ「おはようございます、源さん!」

イ「・・・おはようございまふ。」

ワ「おはよう。」

レ「おはよう、皆。」


イルナはまだ眠そうだな。アヌビスはすでに挨拶を終えたようで、いそいそとテーブルを用意していた。よし、朝食にするか。アヌビスは相変わらずのホットケーキで、俺は久々にサンドイッチとコーヒー、弥生は鮭定食に、イルナはハンバーグとコーンスープ、ワルキューレは何故かステーキを頼んだ。ご飯を美味しくいただいて、今日の予定を相談する。


レ「今日は6階に再戦でいいよな?」

ヤ「そうですね、万全の態勢です!」

ア「我はいつでも準備は良いぞ!」

イ「・・・がんばります。」

ワ「私は、ちょっと用事がある。今日はメィルに着いて行ってもらうがいい。」

レ「えー、あいつじゃもう足手まといだろ?」

メ「ひどい、お兄ちゃん!いつも陰ながら応援してるのに!」


いつの間に転移してきたのか、メィルがウルウルした目で見てくる。


レ「実際、何あってもメィルじゃ対処できないだろ?アヌビスより弱いんだし。」

メ「その時は、転移して誰か呼んであげるから!」

ヤ「たまにはいいじゃないですか。ワルキューレさんも基本的には手を出さないんですし。」

メ「そうだよ!もっといってやってお姉ちゃん!」

ア「ふっ、足手まといは要らぬ。」

メ「むきーっ、あんたには言われたくない!」


騒がしいやり取りがあったが、千里眼で見ているか近くで見ているかの差でしかないため、連れて行く。しかし、何で護衛を強化しようとした次の日にワルキューレが護衛から外れるんだ?


俺達がダンジョンへ入ると、ラヴィ様から声をかけられた。


ラ「昨日の襲撃の事もありますので、護衛を付けさせてください。」


ラヴィ様がそう言うと、カジノで見たバニーガール姿のラヴィ様が出てきた。


ラ「私のステータスの10分の1の分身です。仮にロキエルが来ても何とかなるでしょう。形無様、鑑定してみてください。」

ヤ「はい、鑑定!」


ラヴィ(分身)


レ「これなら、どんな悪魔が来ても怖くないぜ!」

ヤ「それ、フラグになったりしませんよね?」

レ「嫌なこと言うなよ。でも、ケルベロちゃんの10倍くらい強い分身だぞ?」

メ「これで仮にケルベロ様が襲ってきても大丈夫ですね!」

ラ「当然、メィルは護衛の対象外ですし、ワルキューレが居ない今日1日限りの措置ですけどね?」


ラヴィ様が念を押すと、メィルは「ひぃぃ」となげいていた。

再び6階に来ると、ガーゴイルが以前の場所に戻っている。


レ「今度は、イルナ頼むぞ!」


イルナはコクリとうなずくと、ネクロマンシーでスペクターを召喚した。メィルはフヨフヨと天井付近に浮いている。


ヤ「メィルちゃん、ここのモンスターは飛びますので、離れていると危ないですよ?」


メィルは「そうだった!」とラヴィ様の分身の側に隠れる。護衛対象じゃないから守られないかもしれないけどな?


俺は一番近くのガーゴイルにスラタン刀と叩きつける。ガーゴイルに0ダメージ。


レ「やっぱり俺の攻撃力じゃ無理か。」


攻撃を受けたガーゴイルが動き始めた。俺はスペクターを盾にする。ガーゴイルは、スペクターに噛みついた。スペクターに0ダメージ。噛んでも無駄だと悟ったガーゴイルは、火魔法を使った。スペクターに0ダメージ。


レ「よし、アヌビス、弥生、頼む。」

ア「任せるのじゃ!闇の球!」


アヌビスは闇の球をガーゴイルにぶつける。


ヤ「じゃあ、とどめは私が!投擲武器操作!」


弥生は手裏剣を3つ投げると、カカカッとガーゴイルの頭、胸、銅に刺さる。ガーゴイルはコアになった。


レ「この調子で頼む!」


俺達は複数体現れたガーゴイルに対しても、噛みつきは俺かスペクターが受け、魔法はアヌビスかスペクターが受けることによって、ダメージを負うことなく倒せた。調子よく進むと、新しく、ライオンとヤギの頭を持つモンスターが現れた。弥生が素早く鑑定をかける。


キメラ(合成獣)


キメラは俺に火魔法を、スペクターに風魔法を使ってきた。スペクターに0ダメージ。俺は炎に包まれた。


レ「魔法を同時に使えるのか! くそっメィルを盾にしたい!」

メ「私は関係ないよ!? と、透明化!」


メィルはとばっちりを受けたくないと、透明になって隠れたようだ。くそ、看破スキルを覚えたい。


イ「・・・幸い、ガーゴイルより少し強いくらい。スペクターで両方防げます。」


さすがに、首を伸ばさない限り同時に噛みつくことは無いだろ。魔法だけ気を付けることにする。


レ「そうだ、ゾンビアタック!」


キメラが噛みつくために近づいてきたことをいいことに、攻撃特化型零ゾンビを作ると、逆に噛みつかせる。怒ったキメラがゾンビに噛みつく。噛みついたライオンの横から、ヤギが風魔法で風の刃をゾンビに当てる。攻撃特化型零ゾンビは消滅した。しかし、その隙を利用して、ワーウルフに変化した弥生が攻撃した。狂ったようにキメラが火の玉と風の刃をあたりに飛ばしまくる。


メ「あわわわわ、危ないです!」


見えないが、メィルも巻き添えを食らいそうだったみたいだ。俺はスペクターの陰に、弥生はアヌビスの陰に隠れた。おそらくメィルはラヴィ様の陰に隠れただろう。ラヴィ様は飛んでくる風の刃をデコピンで消した。ラヴィに0ダメージ。


ヤ「やわらかいから、ガーゴイルより倒しやすいです!」


弥生は手裏剣を投擲武器操作で投げると、キメラの胴体に刺さった。


ア「我もやるのじゃ!闇の球!」


闇の球は口を開けたライオンの口に入ると、キメラはよろけた。その隙に、弥生は腕輪を鞭状にしてキメラに巻き付けると、背中に乗ってクナイを刺した。キメラは飛行して振り落とそうとするが、弥生は離れない。キメラは背中に手も魔法も届かないようだ。


ヤ「これで止めです!」


弥生は手裏剣を投擲武器操作でキメラのお尻の穴に刺す。キメラはコアになった。


レ「結構なオーバーキルだな、弥生。」


見ているこっちの方が痛そうだった。


ヤ「だって、そこが一番攻撃しやすそうだったんです。あ、この手裏剣はもういりません。」


弥生はそう言うと、落ちていた手裏剣をアヌビスの魔法で消滅させてもらった。ところで、モンスターってトイレするのかね? ダンジョンにトイレはあるけど、モンスターが使用した形跡は無いんだよな。食事すらしてないだろうし。あ、答えは別に要りません。心を読めるラヴィ様が居ることを思い出して、心の中でそう断っておく。


レ「疲れたし、お昼も近いし、一旦戻らないか?」

皆「賛成!」

レ「ちなみに、メィルが転移で送ってくれたりは?」


俺がそう言うと、透明化を解いたメィルが、ラヴィ様の後ろから現れる。


メ「まあ、戦闘の手助けじゃないし、今となったら帰還の巻物なんていくらでも購買で交換できるし、いいですか? ラヴィ様。」


メィルは一応ラヴィ様に確認を取ると、「結界を強化したので転移できませんよ?」言われたので、あるいてエレベーターに行って食堂へ向かった。


今日はみんなで同じ物を食べようと、わんこそばにした。結果から言うと、やるんじゃなかった。人外組に勝てるわけないわ。まあ、勝つ必要もないから、腹いっぱいになったら勝ちだ。


ヤ「もう、お腹いっぱいです!」

イ「わ、私も、お腹、いっぱい、です。」


弥生はいつも通りに、イルナは珍しく苦しそうなくらい食べたようだ。ちなみに、アヌビスは100杯で食べるのをやめ、メィルは101杯で「勝った!」とアヌビスに対抗していた。その後、アヌビスがメィルに闇の球をぶつけたりして争っていたが、ワルキューレが槍を取り出すとピタリと止まった。

お腹がいっぱいすぎるので、1時間ほど食休みした後、再び6階に行く。ガーゴイルとキメラはそんなに苦戦する事なく倒せるようになり、そろそろ体感的に6階の中間に差し掛かる頃、コツコツとハイヒールで歩く音と共に、新しいモンスターがでた。ボンテージに黒い鞭を持ったサキュバスっぽいモンスターだ。弥生がさっそく鑑定する。


ブラッドサキュバス(妖魔)


ブ「オホホホホッ、さあ、可愛い豚を調教してあげるわ! 魅了!」


見た目通りの女王様サキュバスは、魅了を唱えた。


ヤ「また魅了ですか! 今回は誰ですか?!」

イ「私・・・かも。」


イルナが手を挙げて答える。本当に魅了されているのか? いつも通りの様な気がするが。


ブ「あらあら、あなたはワンちゃんね。ほら、三べん回ってワンと言いなさい。」

イ「はい。とてとてとて、ワン。」


イルナは四つん這いになるとくるくると3回まわり、ワンと言った。」


ヤ「か、かわいい! イルナちゃん、かわいいよ!」

レ「おい、正気に戻れ二人とも。」


俺はイルナの頭を殴って正気に戻す。


イ「いたい、気がする。」


イルナは頭を押さえているが、正気に戻ったのかどうか判断がつかない。


レ「弥生、イルナの魅了は解けたか?」

ヤ「鑑定! えっと、まだですね。」


まだ魅了は解けていないようだ。


ブ「さあ、行きなさい、私の可愛いワンちゃん。ついでに、眷属召喚。」


ブラッドサキュバスは血魔法で鎌を作ると、イルナに渡した。さらに、蝙蝠が複数体現れて襲い掛かってくる。


ヤ「蝙蝠は任せてください! 投擲武器操作!」

レ「俺はイルナを正気に戻す!」

ブ「そうはさせないわ。」


ブラッドサキュバスは鞭で俺を拘束した。ブラッドサキュバスと俺の防御力がぴったり同じなため、ダメージは受けない。


レ「残念だったな、俺にダメージを与えるには、攻撃力が足りないようだな。」


俺は攻撃特化型零ゾンビを作ろうとしたが、作れなかった。


ブ「何かしようとしたのかしら? 残念だけど、MPはすべて吸わせてもらったわ。ついでに、HPも貰うわね。HPドレイン。」


俺からどんどんHPが吸われていく。


レ「アヌビス、ヘルプ!」

ア「分かったのじゃ、闇の球!」

ブ「甘いわね!」


ブラッドサキュバスは鞭を引き寄せると、俺で闇の球を防いだ。


レ「死ぬ、マジで死ぬ!」

ア「あわわ、し、真闇!」


アヌビスはブラッドサキュバスの目をふさいでくれたので、俺は何とか鞭から逃げ出す。


ブラッドサキュバスは蝙蝠に変身すると、真闇から抜け出した。


ブ「めんどくさい魔法を持ってるワンちゃんね。魅了!・・魅了?」


こうしている間、蝙蝠を倒し終わった弥生は、イルナの鎌をかるがる回避して様子を見ている。イルナの素早さって10しかないからな・・・。


そして、ブラッドサキュバスの様子がおかしくなってきた。目がうつろになり、うつむく。


レ「何が起きているんだ?」

ア「何が起きているか分からぬが、隙だらけだぞ? 闇の球!」


アヌビスは容赦なくブラッドサキュバスに闇魔法を当てる。ブラッドサキュバスは吹っ飛ばされてゴロゴロと転がっていく。壁にぶつかって止まると、白目になり、口から泡を吹き始めた。


レ「おい、なんか見た目がヤバいことになってきてる!」

ア「わ、我のせいではないぞ! 多分!」

ラ「離れてください」


ラヴィ様がそう言うと、ブラッドサキュバスの腹が割れて、中からムキムキのミノタウロスの様な姿のモンスターが出てきた。服はブーメランパンツだけだ。


カ「あ・た・し、爆誕!」


ミノタウロスの様な見た目で、背中には蝙蝠の様な羽が生えている。そして、マスキュラーポーズをとっている。


ラ「カリヴィアン・・よね?」

カ「そうよ、お久しぶりね、ラヴィちゃん。少しは強くなったかしら?」


カリヴィアンはそう言うと、マッスルポーズをとった。


ラ「なぜあなたが?」

カ「愚問ね、あたしはあたしの好きなように生きるのよ!」


カリヴィアンはダブルパイセップス・バックのポーズをとる。


ラ「そろそろポーズをとるのをやめてもらえないかしら?」

カ「分かったわ。」


分かったのか。まあ、ムキムキのお姉言葉のミノタウロスのポージングなんて見たくないからな。


ヤ「鑑定!」


カリヴィアン(悪魔)


カ「ああん、この感触は・・・鑑定ね。いいわよ、じっくりあたしを見て頂戴!」


カリヴィアンはアドミナブル・アンド・サイのポーズをとる。弥生は吐きそうな顔で見ている。弥生がステータスを教えてくれたが、これはラヴィ様の案件だ。俺達の手には負えない。


ラ「ポーズをとるのを止めてって言ったでしょ!」


珍しくラヴィ様が怒っているな。


カ「そんなに怒らないでよ、もう。た・ん・き・ね!」


カリヴィアンはラヴィにウィンクする。ラヴィ様は飛んできたハート型のウィンクを右手ではじく。ラヴィに0ダメージ。あれ、攻撃だったのか・・。ラヴィ様はカードを構えると、カリヴィアンに投げる。


カ「あん、か・い・か・ん!」


攻撃されて喜ぶ奴に攻撃したくないのは俺だけだろうか?


カ「ところで、なんでみんな服を着ているのかしら? 肉体美が見られないじゃない。魅了!」

ラ「皆、逃げて!」


ラヴィ様はそう言うが、素早さ的にも逃げられない。ラヴィ様は抵抗に成功した様だが、俺達が魅了に抵抗できる確率はほぼ0だ。俺はスーツを脱ぎ、装備を投げ捨てると、トランクス1枚になった。


ヤ「あれ、何で私、服なんて着ているのかしら。」


弥生はそう言うとワーウルフに変化した。ああ、それは全裸だな、一応。


ア「我は、暑いのじゃ。」


アヌビスはそう言うと、シャツ1枚になった。


イ「私も・・脱ぐ。」


イルナはそう言うと、苦戦しながらもメイド服を脱いでいく。中学生の様な見た目に寄らず、黒いブラに黒いセクシーなパンツだった。Aカップかな?


メ「お兄ちゃん、後で弥生ちゃんに殺されるかもね?」


そう言うメィルも魅了にかかったのか、スポーツブラっぽいのにカボチャパンツでセクシーさ0だ。


レ「メィル、セクシーさ0だな。」


ああ、何でか口に出してしまった。メィルのこめかみにビキリと血管が浮かぶと、俺に光の球を飛ばしてきた。アヌビスの闇の球を受けたのと、ブラッドサキュバスにHPを吸われていたのを合わせて、HPが残っていなかった俺はコアになってしまっていたようだ。


その後の全裸大戦というエロい展開については、俺は見ることはできなかった。後で聞いた話では、唯一全裸を免れた素早さに勝るラヴィ様が、なんとかカリヴィアンを撃退したようだ。


ラ「蘇生が終わりました。」


俺は目が覚めると、残念ながら皆普通に服を着た状態だった。その思いが表情に出たのか、弥生の顔が少し怖い。


ヤ「源さん、さっさと服を着てくださいね?」


そう言って弥生はスーツを俺に投げつけてきた。俺は服を着ると、これからどうするかを話し合った。


レ「もう、悪魔の襲撃は無さそうか?」

ラ「現状では、悪魔がこちらで受肉するには時間がかかるため、そうそう現れることは無いかと思います。試験を続けてもらって結構ですよ。」

メ「ここをクリアすれば、あと少しだよ! がんばってね、お兄ちゃん、お姉ちゃん!」


メィルは1500年もこの時を待ったのだ、何があろうとクリアして欲しいのだろう。


イ「・・・私の下着、どうだった?」

レ「その話、むしかえさないでもらえる?!」


その後の話で、探索を続ける事になった。カリヴィアンとの戦闘は、思ったより時間が経っていなかったようだ。


しばらく探索すると、「クエェェェ」と言う鳴き声とともに、新たなモンスターが飛んできた。これは俺も知っている、グリフォンだ。弥生はグリフォンの攻撃を避けて鑑定をする。


グリフォン(合成獣)


グリフォンは、いきなり巨大な竜巻を起こし、通路全体に攻撃してきた。


メ「あぶなっ、私、退避するね!」


メィルはそう言って、壁の向こうに隠れた。この攻撃には、もともと回避主体でHPも少ない弥生もきつそうだ。


ア「むむむっ、あと闇魔法があと1ランクあれば闇の壁が使えるんじゃが。」


闇の壁というと、魔法防御の壁か。ちらりとラヴィ様を見ると、「これですか?」と自分に張ってみせた。


レ「イルナ、スペクターで防げ!」

イ「・・・わかった。」


イルナはネクロマンシーを使うと、スペクターを召喚し、風魔法を防いだ。


レ「飛行が厄介だな。一方的に攻撃される。」

ヤ「私に任せてください!」


弥生は、手裏剣を棒手裏剣に変化させ直すと、投擲武器操作でグリフォンに投げた。


ヤ「こいつの弱点はきっとキメラと同じです!」


そう言うと、棒手裏剣はグリフォンのお尻の穴にズブッと入った。見ているこっちの方が痛く感じるが、この世界ではダメージ判定としか扱われないので苦しむという事は無い。しかし、お尻の中に違和感があるようで、徐々に低空飛行になってきた。


レ「今だ!」


俺は攻撃特化型零ゾンビをグリフォンに飛び掛からせると、物量で押しつぶす。


ア「真闇!」


アヌビスがサポートに真闇を使ってくれたおかげで、ゾンビの攻撃が全てクリティカルになる。グリフォンはコアになった。


レ「そこそこ強いモンスターにも勝てるようになってきたな!」

ヤ「そうですね、コアも結構たまってきたので、ステータスをあげますか?」

レ「イルナも使うか?」

ラ「試験対象者以外は、コアを使っても経験を得ることはできません。」

イ「・・・残念。私、強くなれない?」

ラ「あとで登録することにしますか? メィル?」

メ「はい! よろしくお願いします!」


メィルはピンと背筋を伸ばしてハキハキと返事する。ラヴィ様に逆らうというルートは無い。


ダンジョンを出てからメィルにビジネスホテルの前まで転移してもらう。メィルとラヴィ様は俺達がホテルに入るのを見た後転移していった。俺達はイルナの分を残して、コアを使うことにした。格上だからか、結構ステータスがあがった。


レ「ついでに、増えたMPでアヌビスも作り直すか。」

ア「よろしく頼むのじゃ!」


復元したアヌビスは、12歳くらいの姿になり小学校高学年か中学生くらいに見える。ステータスも元の10分の1となっていた。また、闇魔法が1あがり、新たにMP自動回復(小)が増えた、武器、防具の性能が良くなっていた。


ア「ふむ? もともと持っていなかったスキルが付いたのじゃ。」

レ「俺が持ってるスキルだからか? それとも、アヌビスが経験したからか?」

ヤ「私も、投擲を覚えましたし、アヌビスちゃんにはもともと素質があったんですよきっと!」

レ「神装備は自動でサイズが変わるからいいけど、パジャマはもう着れなさそうだな。」


見た感じ、身長が150cmくらいで、バストもBだろう。


ヤ「アヌビスちゃんのブラジャーも要りますね。ケルベロちゃんの所に行きましょう。」

ア「ぶらじゃーとは何じゃ?」

ヤ「胸を守る防具みたいなものです。」

ア「我の服には必要ないのじゃ。」

ヤ「源さんからの視線を防ぐための防具ですから、絶対に要ります。」


そう言うと、弥生はアヌビスを引きずっていった。しばらくして戻ってきたが、思ったよりも神装備は万能の様で、ブラジャーよりよっぽど高性能だったようだ。漫画でも女神様の布は、ふよふよ浮いているようでも絶対に見えないようになっているからな!


ア「じゃあ、零、一緒にお風呂に入るのじゃ!」

ヤ「絶っっっ対にダメです! もう、アヌビスちゃんは子供じゃないんだから!」

ア「会ってから数日しか経っておらぬが?」

ヤ「年齢とかの問題じゃありません!すでに見た目が子供じゃないんです!」

レ「込めるMPを下げれば、また小さいアヌビスになるぞ?」

ヤ「源さんは黙っていてください! エロは絶対に許しません! もう同じ部屋に居るんですから、私がお風呂に入れます!」


そう言うと、弥生はアヌビスとイルナと一緒に風呂に行った。俺、居づらいな。


レ「ちょっとサーベラスと遊んでくる。」

ヤ「どうぞ。鍵は閉めて行ってくださいね!」


俺は部屋に鍵を閉めると、フロントへ向かった。サーベラスと遊んでいると、ケルベロちゃんが来た。


ケ「イルナの様子はどうですかワン?」

レ「ああ、元気だよ。今度からは俺達と一緒にメィルの試験を受ける仲間になる事になった。」

ケ「それはよかったですワン。人間は人間同士仲良くするといいですワン。」

レ「見た目は、ケルベロちゃんもほとんど人間だけどな。」


俺はそう言ってケルベロちゃんを撫でようとしたが、殺気を感じたので、手をサーベラスの頭にのせて撫でた。サーベラスはうれしそうに尻尾を振っている。そうしているうちに、ワルキューレが戻ってきたようだ。それを見たケルベロちゃんは、ワルキューレを連れて行った。


ケ「それでは、おやすみなさいですワン。」

ワ「零殿、また後で。」


俺はしばらくサーベラスにドラゴンの骨を投げて遊んでやった後、部屋に戻った。鍵を開けると、裸の弥生が・・・いるわけもなく、新しい赤色のパジャマを着たアヌビスと、青色のパジャマを着たイルナと、浴衣を止めたのか、黄色のパジャマを着た弥生が居た。


レ「お揃いにしたのか?」

ヤ「はい! せっかくなので、揃えてみました。どうですか?」

レ「ああ、似合ってると思うよ。」


それ以外に言うセリフってほとんど無いよな。アヌビスは飛行して遊び、イルナはぼーっとしている。


レ「じゃあ、俺も風呂に入ってくる。先に飯を食ってていいぞ。」

ヤ「分かりました!」


風呂に入っていると、ご飯を注文したらしく、ケルベロちゃんの声が聞こえるが、語尾にワンが付いていないところを聞くと分身なのだろう。まだワルキューレとの話が終わっていないようだ。


レ「今日の風呂はいい匂いがするな。」


俺はいつもはお湯だけの風呂に入っているが、弥生は何か入浴剤でも入れたのだろうか。


メ「ぷぷぷっ、女の子の匂いを嗅ぐなんて、お兄ちゃんのエッチ!」

レ「・・・お前こそ何で風呂の中に居るんだよ。」

メ「ホテルの中なら、透明化も透過も使えるからね!」

レ「理由になってねーよ!?」


俺はメィルにお湯をかけてやった


メ「何をするの、お兄ちゃん!」

メィルは透過すると、お湯だけがザバッと落ちる。便利だな?

メ「たまには、お兄ちゃんの背中でも流してあげようか?」

レ「・・・何を企んでいる?」

メ「失敬な! 何も企んでなんていないよ! コアが少し欲しいだけだよ!」

レ「下心ありありじゃないか! コアはイルナの分しか残ってないからイルナに聞いてくれ。」

メ「わかった!」


メィルは透過で風呂の壁を貫通して行った。俺が頭を洗っていると、メィルが戻ってきたようだ。


ヤ「頭、かゆいところはありますか?」


耳に水が入って声がよく聞き取れないな。


レ「メィルか?なんだって?」

ヤ「かゆいところはありますか?」

レ「今のところは無いよ。」

ヤ「かゆいところはありますか?」

レ「無いって言ってるだろ。」


俺はそう言って頭を上げると、誰も居なかった。


メ「お兄ちゃん、イルナちゃんは良いって言ってたよ! コア頂戴!」

レ「メィル、何か言ったか?」

メ「え?イルナちゃんが良いって。」

レ「その前だ。」

メ「何も言ってないよ?」

レ「そうか・・・。俺も疲れているようだ。もう寝よう。」


メィルにコアを渡し、俺は風呂を上がると、「いたずら成功です!」そんな声が風呂から聞こえた気がした。俺はビールを飲んで寝た。

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