第10話 ダンジョン攻略10日目

アラームが鳴る。俺は目を覚ましてアラームを止め、アヌビスを見ると、アヌビスも起きたようだ。


ア「おはようなのじゃ!」

レ「ああ、おはよう。」


アヌビスを着替えさせ、軽く体操をしてから歯磨きをしていると、弥生たちが来たようだ。


ヤ「おはようございます!源さん!」

ワ「おはよう」

イ「・・・おはようございます。」

ア「おはようなのじゃ!」

レ「おはよう、みんな。」


挨拶を終え、飯を食う事にする。


レ「ところで、イルナはどういう世界に住んでいたんだ?」


見た目はほとんど俺達地球人と変わらない。


イ「どんな世界と言われても、普通の世界ですよ?」


そこに住んでいる人にとっては、普通だよな、うん。


レ「質問が悪かった、魔法とかスキルとかはあったか?」

イ「? 普通、ありますよね?」

ヤ「普通、無いですよね?」


やはり、常識は違うようだ。


ワ「使い方を知っているかどうかだと思う。仮にお前たちが地球に行っても、今持っているスキルは使えるからな。」


まじか、このまま地球に戻れば無双・・ってほどのスキル持っていないな。


レ「よし、スキルなり魔法なりを覚える為に、今日は5階でコアを集めまくるぞ!」

ヤ「その前に、ご飯にしましょう!」

ア「ホットケーキ!」


それぞれ朝食を取った後、俺達はダンジョンに向かう。ちなみにイルナはアヌビスと同じものを食べた。


ダンジョンに着くと、メィルが文字通り飛んでくる。


メ「おはようお兄ちゃん達!ネクロマンサーはどうなったの?」


メィルは拘束の解かれているイルナを見る。


レ「ケルベロちゃんによると、憑依されていたらしくて、いまは普通の人間だ。」


その後、ラヴィ様にも昨日のあらましを話す。


ラ「では、あなたはどうしたいですか?」

イ「・・・どう、とはどういうことでしょうか?」

ラ「このまま残るのか、元の世界に戻るのかと言う事です。」


イルナはここでスキルを得ているわけで無いので、元の世界に戻れるらしい。


イ「元の世界に居場所は無いから・・・、ここに居て良いなら弥生様と一緒に居たい。」


イルナはそう言うと、弥生の服に掴まる。


ヤ「あぁ、イルナちゃん可愛い・・はぁ、はぁ。」

レ「イルナがいいなら、それでもいいけど、戦えるのか?それとも留守番するか?」

イ「・・・憑依すれば、戦える。アヌビス様、よろしいですか?」

ア「ふむ、何をするのじゃ?」

イ「・・・感じるのです、アヌビス様の力を。その力を少しの間だけ開放することが出来ます。」

ア「面白そうなのじゃ、やってみるのじゃ。」


イルナはアヌビスの手を取ると、ネクロマンシーを唱えた。アヌビスの復元体が床に倒れ、イルナが中学生くらいになっている。


イ「どうじゃ?」

レ「メインの意識はアヌビスか。」

イ「いいや、不思議な感覚じゃ。アヌビスでも、イルナでも無い感じじゃ。」


イルナはそう言うと、飛行する。


イ「なんじゃ、変な感じがするのじゃ。」


イルナがそう言うと、イルナの体から煙が出てきた。その煙は、綺麗な女性の姿になった。人間の様な見た目だが、普通の人間なら煙にならないよな。


天「はぁ、はぁ、こんな時に私が追い出されるなんて・・・。」

レ「イルナに憑依していたのか?弥生、鑑定を!」

ヤ「はい!鑑定!」


女性は弱っているのか、肩で息をしたまま動かない。


天使ルバート(悪魔)


ヤ「天使って名前ですけど、デーモンより少し弱い悪魔です!」

天「私が、デーモンごときより弱いですって? それもこれも、あの犬みたいな女神のせいよ!!」


ルバートは苛立たしく感じたのか、こめかみをピクピクさせている。


レ「犬みたいな女神ってケルベロちゃんの事か?」

天「そうよ!そのケルベロのせいよ! もう少し力を回復させようと思ったら、今度は憑依を解除されるし!」


ルバートはヒステリックに叫び続けている。悪魔が相手なら、ワルキューレの出番か? 俺はワルキューレの方を見るが、その前に、イルナが立ちふさがった。


イ「我に任せよ!久しぶりの全力じゃ!」


弥生を見ると、すでにイルナを鑑定していたようだ。


イルナ(神)


ヤ「最初に出会った時の、アヌビスちゃん本来の力になってます!」

天「例え弱っていようと、ただの人間なんかに負けるもんですか!」


ルバートは鑑定を使えないのでわかっていないが、今はアヌビスと同等の強さなので、装備ありならアヌビスの方が強い。ただ、ルバートの方が素早さは上だ。ルバートは、長い腕を槍の様にイルナに突き出した。イルナに0ダメージ。


天「くそ、どいつもこいつも邪魔しやがって!」


ルバートは逃げ出そうと、イルナの反対側を向いた。


イ「そうはさせぬ!」


イルナは影で蔦の様なものを作ると、ルバートに巻き付けた。そして、神杖に魔力を通して槍にすると、ルバートに突き刺す。


天「あぁあぁああっ!私に、ダメージを、与えるな!」


ルバートは、狂ったように暴れだした。振り回された腕をイルナは杖で防御する。イルナに0ダメージ。


イ「真闇!闇の球!」


ルバートは真っ黒に塗りつぶされたようになり、ルバートの顔面部分に闇の球がぶつかる。


天「へぶっ、くそがぁぁぁ!」


ルバートは、左腕を伸ばしてイルナの足を掴み引き寄せると、右手をイルナの首に突き刺した。


レ「大丈夫か!」

天「クフフフフ、ああ、気持ちいいわぁ!」


ルバートは急に機嫌が良くなったのか、イルナを持ち上げて地面に叩きつけると、背後から心臓を刺した。


ヤ「イルナちゃん!」


弥生は助けようとするが、俺達の素早さじゃ絶対に攻撃は当たらないだろう。


イ「大丈夫じゃ!」


イルナは蘇生を使うと、HPを全快させる。そして、MPを飛行につぎ込むと、足を掴んだままのルバートごと空中に浮いた。


天「ああ、何を!」


イルナは闇の壁を作ってルバートの目隠しをすると、魔力を込めた神杖の槍で突き刺した。


天「あぁぁ、ベ・・・ブ・・様。」


ルバートはコアになった。それと同時に、イルナとアヌビスの憑依も解けたようで、イルナは小さくなり、復元体のアヌビスも起き上がった。


ア「あぁ、元に戻ってしまったのじゃ。」


アヌビスは残念そうな顔をしている。

イ「はぁ、はぁ、私には、はぁ、このくらいの、はぁ、時間が、限界、です。」


イルナはそう言うと、気絶したようだ。すると、近くに転移魔法陣が現れた。


ケ「何があった?」


ケルベロちゃんは分身体のようで、いつもは着ないメイド服だった。なぜ分身体だと分かるかと言うと、語尾にワンがついていないからだ!


ワ「はっ、天使ルバートという悪魔が現れました!悪魔はすでにイルナが倒しました!」


ワルキューレは、はきはきと返答する。


ケ「昨日の夜に倒したやつか、生きていたとはな。死ぬ前に憑依し直したのか?ちっ、鑑定しておけばよかったな。」

ワ「それで、なぜケルベロ様がここに?」

ケ「昨日つけた追跡スキルが消えたから、一応様子を見に来た。これがルバートのコアか。」


ケルベロちゃんはコアを拾うと、昨日きちんと確認すれば・・と呟いていたが、過ぎた事だ。

ルバートのコアは、モンスターの水色のコアと違い、黒いコアだった。


ケ「こいつは念のため、あたちが預かる。お前たちは引き続きダンジョンを攻略するように。」


ケルベロちゃんはそう言うと、転移していった。


レ「昨日そんなことがあったなんて気が付かなかったな。悪魔を取り除いたとは聞いていたが。」


俺と弥生は、気絶したイルナをワルキューレに預け、少しでも強くなろうとモンスター狩りに向かった。


レ「必殺、ゾンビアタック!」


俺は大量の攻撃力特化型の分裂体を作ると、黒騎士を攻撃させる。黒騎士は、まるでゾンビにたかられる人間の様に、沈んでいった。分裂体は俺そっくりだけど、目が死んでいる。サービス残業が続いたときの俺のイメージだ!


ヤ「なんか、見た目が悪いです、それ。」


弥生はワーウルフになると、黒騎士をクナイで切り裂いていく。剣で突き刺してくる黒騎士を、腕輪を変化させて鞭状にし、手首にからめて動きを止めると、クナイを目に突き刺す。

この階でそれなりに戦えるようになった俺達は、昼飯まで狩りを続けた。お昼になると、イルナも目が覚めたようだ。


イ「・・・ご迷惑を、おかけしました。」

レ「いやいや、まさかイルナがあんなに活躍するとは思わなかったよ。」


俺は攻撃判定にならないようにイルナの頭を軽くポンと撫でた。


ヤ「アヌビスちゃんと同じ強さだなんて、神クラスですよ、神クラス!」

ア「我をあがめよ! ホットケーキを持ってくるのじゃ!」

レ「だから、食堂にはホットケーキは無いっての。」


俺達が騒がしくしていると、はじまる様が奥から出てきた。


は「おう、元気がいいな! 好きなものを食って、力をつけるといい。これからも、がんばるんじゃぞ!」


俺と弥生は激辛カレーに挑戦し、敗北した。アヌビスはケーキとジュース、チャーハンと良く分からないチョイスをしている。ワルキューレは紅茶を飲み、利用が初めてのイルナは、日替わり定食を頼んだ。ちなみに、この日の日替わり定食は、白ご飯に、みそ汁代わりのワカメうどん、ヒレカツにキュウリの漬物だった。イルナの居た世界は、俺達の居た世界の昭和並みみたいで、ご飯もうどんもあるそうだ。昼飯を食い終わると、購買に向かった。今回は、新しいスキルを覚えたいと思う。


レ「前にワルキューレが使っていた時空系の魔法って何にでも使えて便利じゃないか?」

ワ「ん?神ではない者が使ってもあまり意味が無いぞ? 零殿が仮に使ったとして、MP1000で1秒戻れるくらいではないか。」

レ「燃費悪いな! 時間を操る系って最強に近いのがお約束なのに・・。」

ヤ「あー、時間を止めて、弾幕を歩いてかわすとか憧れますね! 他の人にとっては一瞬で移動しただけにしか見えませんが。」

レ「それなら、女神様達が持っているようなスキルの中から使えそうなやつを選ぶか。透過、透明化、飛行、HP自動回復、あとは、耐性なんかか?」

ヤ「透過と透明化は絶対だめです!」

レ「なんでだよ? 透過なんて、実質物理無効化だし、透明化は格闘戦じゃほぼ最強だろ?」

ヤ「源さんは、壁を貫通してお風呂を覗いたり、透明になって下着を覗きそうなので、絶対ダメです。」

レ「しないよ!? 信用無いのか!」

ヤ「え? 信用・・? あると思っていたんですか?」


弥生の目からハイライトが消える。これはやばいパターンだ。


レ「じゃ、じゃあ、弥生が覚えるか?」

ヤ「そうですね、透明化を覚えましょうか。」


弥生は透明化を覚えた


レ「うぐぐ、こんなはずでは・・。弥生ばかりが強くなっている気がする。」

ヤ「源さんも何か覚えればいいじゃないですか、エロが絡まないなら許します。ちなみに、千里眼、透視、録画、瞬間記憶、絶対記憶、屈折、影渡、麻痺・・・etc」

レ「もういいよ、俺はスキルなんて要らない!」


俺は心の中で泣きながら、購買を後にした。後ろを見ても誰も追いかけてきてくれない。そう思ったら、ポンと肩に手を置かれる。振り向くと、透明化していたメィルだった。


メ「残念だったね、お兄ちゃん!」


メィルがいい笑顔で俺を慰めたので、とりあえず殴りかかるが、かわされた。


ヤ「へー、本当に見えないんですか?」


目の前から弥生の声がする。透明化を使っているようだ。


レ「ああ、見えないな。」


俺は声の聞こえた方に手を伸ばす。すると、フニョンという手ごたえがあった。


ヤ「なっ、ななな何をするんですか!」


弥生が姿をあらわすと、ゴインと頭を殴られた。


レ「ご、ごめん。見えなくて、なんとなく声が聞こえた方に手を出してしまった。」

ヤ「本当ですか? 実は透明看破スキルとか持ってるんじゃないですか?」

レ「いや、鑑定すれば分かるだろ。」

ヤ「じゃあ、鑑定! ちっ、本当の様ですね。」


とうとう弥生に舌打ちされるようになった・・。透明化はあくまで透明になるだけで、透過と違って触ることは出来る。透過は、見えるけど触れない。また、攻撃するときは透明化が解除されるようだ。それでも、背後に回れば奇襲できるので、便利だと思うぞ。


メ「お兄ちゃんもベタな事するよね!」

レ「わざとじゃないと言っているだろ!」


メィルがニヤニヤするので、殴ったら素通りした。


メ「これが透過でーす。」


メィルがさらにニヤニヤして煽るので、プチッと堪忍袋の緒が切れた俺は、裸のメィルをイメージし、分裂で作り出す。


レ「じゃあ、こいつをばら撒くかな?」

メ「ごめん、お兄ちゃん! もうしないから!」


メィルが泣いて謝るので、今回は許してやるか。


ヤ「・・・源さん、いつもそんなものを作っているんですか?」


弥生の冷たい声が聞こえる。俺はギギギと首を弥生の方へ向けた。


レ「いや、作ったのは初めてだから、ほら、もう消すよ!」


俺はメィルの分裂体を殴った。メィルの分裂体は消えた。


ヤ「それにしては、慣れているようですが?」

レ「いや、最近は分裂体を作るのにも慣れたし、そもそも本人を見ながらだから、イメージが楽だというか。」


俺はしどろもどろになって説明をして、2度と女性の裸を作らないことを約束し、納得してもらった。


レ「とりあえず、6階の敵の強さを見てから、どの程度5階でステータスを上げるか決めようか。」

ヤ「わかりました、では、6階に行きましょう。」


弥生の声がまだ冷たく聞こえるのは俺の気のせいだろうか? 気のせいであって欲しい。


イルナは、今日はもう憑依を使えないという事で、戦闘には参加しない。ネクロマンシーでマミーを召喚してもいいけど、今までの傾向から、おそらく6階では何の役にも立たないだろう。ネクロマンシーは俺の復元と同様に、コアがあればそのコアと同じモンスターを作れるらしい。コアが無くても、死体の一部とかでもいいらしいが、ダンジョンではむしろそっちの方が手に入らないだろう。イルナに、肉壁用にスペクターのコアを渡した。俺のMPでは、復元で完全に同様の能力を持たせるのは、スペクターが限界か。


俺達はエレベーターで5階に行き、横の階段から6階に向かう。6階は、いつもの廊下と違い、王宮並みに広くなっていた。廊下の高さは10mくらいで、幅も10mくらいになっている。そして、廊下にはずらりと石像が並んでいた。


レ「急にファンタジーらしい見た目になったな。」

ヤ「そうですね、6階のコンセプトは鳥みたいですから、飛行の邪魔にならないようになっているんですかね?」

レ「ああ、ハーピィとか出るのかな。」

ヤ「・・・上半身が美女とは限りませんよ?」

レ「いや、うん。ごめん。」


言い訳しようと思ったが、下手に言い訳すると期待していたように見えるから止めておこう。

アヌビスも、いつもの廊下より広いから、飛行速度を上げて飛び回っている。

イルナが物珍しそうに、石像に触っていると、急に石像が動き出してイルナに噛みついた。


レ「弥生、この石像が敵だ!」

ヤ「分かりました、鑑定します!」


弥生が鑑定すると、石像のほとんどがモンスターだった。


ガーゴイル(石像)


攻撃力は低いが、防御力がメチャメチャ高い。それに、魔法を使ってくるようだ。


レ「イルナ、離れろ!」


イルナに向かってガーゴイルが火の玉を飛ばす。


ア「危ないのじゃ!」


イルナに当たる前に、アヌビスが防いだ。アヌビスに0ダメージ。


レ「ワルキューレ、死者の杖と死者の衣をイルナに渡せるか?」

ワ「ダメだ。あれはもともと神々の持ち物。最終的にイルナ殿が持っていたとはいえ、所有権は無い。」

レ「じゃあ、仕方ない。イルナ、これでもかぶっていろ。」


俺は自分のスラコートをイルナに渡す。ガーゴイルが俺にも飛びかかってきて腕に噛みついてきた。零に0ダメージ。


石像は、次々とガーゴイルになって飛び回り、隙を見て魔法や噛みつきで攻撃してくる。


ヤ「この数は、対処できません!一旦帰りましょう!」

レ「分かった、みんな集まってくれ。」


俺は、弥生、アヌビス、イルナ、ワルキューレを対象に選ぶと巻物を取り出す。


レ「帰還の巻物、俺達をフロントへ!」


俺達は無事フロントに帰ってきた


ヤ「ふぅ、危なかったですね。私も火の玉だらけで死ぬかと思いました!」

レ「それに、イルナに装備を作っていなかったな。弥生、頼めるか?」

ヤ「分かりました!指輪と腕輪にしますね。」


弥生は、俺の分裂体を指輪・防御力50と腕輪・防御力50にして渡した。俺は代わりにイルナからコートを返してもらった。


ア「我はガーゴイルなぞ余裕じゃ!」

レ「毎回アヌビスだけに頼っているのもダメだから、しばらく5階でコアを集めるよ。」


俺達は5階に戻り、マミーとスペクター、黒騎士を狩っていた。この階層、敵の種類が少ないなと思ったのが悪かったのだろうか。行ったことの無い通路から、ヒタヒタと足音が聞こえる。姿を現したのは、アラビア風の服を着た美女だった。


グ「こんにちは、冒険者さん?」

レ「お前は、モンスターか?」

グ「あら、いい男ね、魅了!」

レ「え・・? あ・・、よお、久しぶりだな、グーラ。」


俺は久々に知り合いに会った。元気そうでよかった。


ワ「あれは、モンスターだ。弥生殿、鑑定を。」

ヤ「え? わ、わかりました! 鑑定!」


グーラ(不死)


レ「何をしているんだ、弥生。こいつは、俺の知り合いでグーラって言うんだ。」


俺は弥生にグーラを紹介する。


ヤ「源さん、しっかりしてください、そいつはモンスターですよ!」

レ「何を言っているんだ、弥生。ほら、モンスターを探しに行くぞ。」

ア「話にならぬのじゃ、闇の球。」


アヌビスがグーラに向かって闇魔法を使う。


レ「やめろ! アヌビス!」


俺はその攻撃を間に入って受け止めた。零に大ダメージ。


ア「あわわわっ!ごめんなのじゃ、当てるつもりは無かったのじゃ!」


俺は闇魔法で吹き飛ばされた後、魅了が解けたようだ。


レ「あれ、俺は?」

ヤ「意識が戻りましたか?源さんは下がっていてください!」


弥生は俺をかばうように立つ。


グ「あら、今度は可愛いあなたが相手かしら? 魅了!」

ヤ「!!?」


弥生は顔の前を腕でガードする。弥生は「あれ?」と不思議そうな顔をしている。


グ「ちっ、運がいいわね。もう一度、魅了!」

ヤ「あれ、グーラちゃん? グーラちゃんもこっちに来てたの?」

グ「そうよ、そして、そこの男に襲われているのよ。」


グーラは弥生の後ろに隠れるようにして、俺を指さす。


ヤ「えぇっ、じゃあ、私が倒してあげるよ! 投擲武器操作!」

レ「弥生、やめろ!」


俺はペプシを作り、いくつかガードしたが、手裏剣の1つが俺に当たった。やばい、残りHPが152しかない上に、帰還の巻物も無いぞ!


ア「弥生、やめるのじゃ!」

ヤ「あなたも、グーラちゃんを襲った奴の仲間ね、投擲武器操作!」


手裏剣がアヌビスに当たる。アヌビスに0ダメージ。


ヤ「ダメージが0!? グーラちゃん、逃げて!」


弥生はグーラをかばって逃がすが、逃がすわけには行かない。


レ「待て、グーラ!」

ヤ「邪魔しないでっ!」

レ「あ・・。」


俺の目の前に、手裏剣が迫る。


イ「ネクロマンシー、スペクター召喚!」


俺の目の前に、スペクターが召喚され、手裏剣はカキンと弾かれた。物理無効、スペクターに0ダメージ。


レ「イルナ、助かった。」


イルナはグッと親指を立てた。

俺はユウを2体作ると、弥生を押さえつけさせた。


ヤ「放してください! いくらイケメンでも、許しませんよ!」


そういいつつ、弥生は振り払っていない。


レ「アヌビス!」

ア「任せるのじゃ!」


アヌビスは闇魔法をグーラに当てる。


グ「きゃあぁ、こうなったら、獣化!」


グーラは、ハイエナに変身すると、俺に向かってくる。

俺はそれを抱きとめると、拘束した。零に0ダメージ。


レ「アヌビス、やってくれ!」


アヌビスは闇の球を2回当てた。グーラはコアになった。グーラを倒すと、弥生の魅了が解けたみたいだ。


ヤ「あれ、いつの間にかイケメンに囲まれてる!」


俺はアヌビスにユウを破壊してもらった。


ヤ「ああ、もったいない!」


弥生はムンクの叫びのようにほっぺたを両手で挟んだ。


レ「まさか、こんなやつまでいたとはな。」


俺は気分的に疲れて、床に大の字で寝っ転がった。


レ「・・・グーラを復元するか?」


俺がボソッとつぶやくと、「ダメです。」と弥生がコアを奪い取って踏み潰した。

その後、夜まで狩りを続け、ステータスを上げ、装備も新しく作り直した。


俺達はホテルに戻ると、改めてイルナの歓迎会を開いた。といっても、料理はケルベロちゃんが用意するけどな!コーラに、サイダー、ピザにチキン、ハンバーグに手巻き寿司と色んなものを取り寄せた。ふと、ケルベロちゃんに「一緒に食べるか?」と聞いてみたが、「勤務中なので、遠慮しますワン。」と断られた。イルナは、「このシュワシュワした水、おいしいです。」とか、「このピザ? とかいうチーズがおいしいです。」と喜んでいた。歓迎会は盛り上がり、解散すると静かすぎて寂しくなるくらいだった。


レ「楽しかったな、アヌビス。」

ア「我も、豊穣の祭り以来かもしれぬな、こんなに楽しんだのは。」


俺は腹いっぱいになって腹をさすりながら、寝転んでいると、腹の上にドカッと乗ってきた。零に0ダメージ。ふん、もうすでにダメージを受けなくなったから、好きなようにするがいい。アヌビスは、反応が面白くないのか、腹の上でジャンプした。零に0ダメージ。


レ「お前が何をしようと、俺がダメージを受けることは無いぞ。」

ア「ほぉ、言ったな?」


アヌビスは、ジャンプすると股間を踏み抜いた。


レ「それは止めろ!」

ア「おや? 何をしようとダメージを受けないのでは無かったのか?」

レ「クリティカルはダメに決まっているだろ! あと、魔法もダメだからな!」


アヌビスは、右手に集め始めていた闇を霧散させた。魔法はシャレにならないから止めろ!


ア「じゃあ、イルナと遊ぶのじゃ! 弥生の所へ行ってくるのじゃ。」

レ「ああ、好きにしろ。」


ふぅ、やっと静かになった。一人になるのは久しぶりな気がする。一人暮らししていたころを思い出すな。すると、転移してくる魔法陣が見えた。メィルか?


ロ「あらあら、変なところにつながったわね。」


見ると、神話の挿絵に出てくるような綺麗な女性だった。蝙蝠の羽に、ヤギの様な角があるが、神の様なオーラを感じる。俺は、敵か味方か判断がつかなかった。


レ「女神様・・ですか?」

ロ「あらぁ、そう見えるかしら?」


ロキエルは角と羽をしまい、人間の様な姿になると、うれしそうにくるっとその場で回転した。すごくいい匂いがした。


ケ「侵入者は誰だ? ワン。」


ケルベロちゃんが転移してきた。


ロ「あら、可愛いワンちゃんね?」


ロキエルは、ケルベロちゃんを撫でようとしたが、ケルベロちゃんは素早く回避した。


ロ「へぇ、かなり素早いじゃない。私と同じ、女神ランクⅡってところかしら?」

ケ「あたちは、女神ランクⅢのケルベロです。女神ランクⅡだそうですが、どちらから来られた女神様ですか?」

ロ「なんだ、格下か。」


ロキエルから黒いオーラの様なものが吹き上がった気がした。ケルベロちゃんは殺気を感じた為、鑑定をしたようだ。


ロキエル(悪魔)


ケルベロは自分のステータスと比べてみる。


スキルのステータス補正を入れても、勝っているのは素早さだけで、あとは桁が違う。


ケ「ロキエルだと!? 中級魔族だ! ダメだ、あたちの手に負えない、逃げろ!」

ロ「うるさいわね、邪魔よ。」


ロキエルは、ケルベロちゃんの方に手を向けると、掌から巨大な水の球を撃ちだした。ケルベロちゃんは吹き飛ばされて壁に打ち付けられる。


ロ「お土産に貰っていくわね。」


ロキエルはそう言うと、俺の頭を掴んで転移した。


ケ「くそっ、あたちが付いていながら敵に逃げられるなんて! あいつも連れていかれてしまうし。」

レ「どこに連れていかれたんだろうな。」

ケ「おそらく魔界だろう。悪魔の拠点は魔界にある。」

レ「あんなもの、何に使うんだろうな。」

ケ「こちらの情報を得るためだろう。殺されていなければいいが・・・。って、なんでここに居る!」

レ「あれ、気づいていなかったのか。わざとボケてるのかと思った。」

ケ「答えろ! なぜここに居る!」

レ「ロキエルがケルベロちゃんの方を向いているうちに、俺そっくりの分裂体を作っておいた。俺自身は分裂体を布の様にしてかぶって床に伏せてた。」


ゾンビアタックの時に練習していてよかった。


ケ「ふぅ、それはよかった。ロキエルは鑑定を持っていないようだから、正体はバレないだろう。」


廊下から足音が聞こえ、ドアがバンッと開け放たれる。


ヤ「何がありました!?」


レ「悪魔の襲撃があった。今は俺の分裂体を連れて行っているが・・・。」

ケ「すぐに対応しますワン。ラヴィ様に連絡するワン。」


ケルベロちゃんは落ち着いたのか、語尾を戻し、ラヴィ様に連絡するためにフロントへ向かった。


しばらくすると、連絡が付いたのか、ラヴィ様とケルベロちゃんが転移してきた。


ラ「何度も侵入されるようでは困りますね。結界を強化しましょう。」

ケ「お手を煩わせて申し訳ございません。よろしくお願いいたします。」


ケルベロちゃんの敬語とか、レアだな! ラヴィ様がビジネスホテルの外に出ると、力を込めるように空中を撫でる。ビジネスホテルがキラキラ光るマクの様な物で包まれる。


ラ「光の壁と空間固定の応用よ。これで簡単には転移、透過、物理攻撃、魔法攻撃などのスキルを使って入り込むことは出来なくなったわ。その代わり、女神も転移や透過で入れなくなるけれど。」

ケ「問題ありません。見習い女神は異世界人と共に行動していますので。」


え、メィルはいつも転移だけど。困るのがあいつだけなら問題は無いか。


ラ「それよりも、ワルキューレは気づかなかったのかしら?」


ワルキューレはラヴィ様が現れた時点ですでに微動だにせず土下座している。


ワ「たびたび申し訳ございません!」

ラ「気づかなかったならしょうがないのよ? 一緒にいるはずなのに気づかないのはどうかと思うけれど。」

ワ「いえ、一緒に居ませんでした!」

ラ「何故かしら?」

ワ「え? 何故とは・・? 部屋が違いますし。」

ラ「何故部屋が違うのかしら?」


ワルキューレの顔色が段々と悪くなって汗を流し始めた。


ワ「そ、それは、男と女とか・・。」

ラ「あなた、女神よね?」

ワ「はい・・。」

ラ「人間に襲われても、対処できないの?」


俺は襲う気は無いぞ! と言いたかったが、口を挟める空気ではない。


ワ「いえ・・。」

ラ「なら、問題は無いわね?」

ワ「・・はい。」


どう問題が無いのか俺には分からなかったが、口答えしても無駄だと悟ったのか、ワルキューレはうなだれて返事をした。


ワ「ケルベロ様、せめて大部屋を用意できませんか・・・。」

ケ「分かったワン。弥生もそれでいいかワン?」

ヤ「え? どういうことですか?」

ラ「結界を作ったからそうそう無いとは思いますが、今度また悪魔が現れた時に守りやすいように、護衛対象を一塊にしたいと思います。」

ヤ「それって、源さんと同じ部屋に住むってことですか?」

ラ「そういう事です。」

ア「弥生とイルナも一緒か? それは楽しそうなのじゃ!」


弥生は小さく、「アヌビスちゃんも居るし、大丈夫よね?」と呟いた。ワルキューレは弥生が断らなかったことにあぜんとした顔をしたが、ラヴィ様ににらまれて諦めたようだ。


ワ「零殿、これから、よろしく頼む。」

ヤ「でも、寝るときに部屋は仕切りで割りますからね! それに、覗かないで下さいよ!」

レ「ああ、わかっている。心配するな。」

ヤ「本当ですか? もぉ。」


弥生は、言うほど不安がってはいないようだ。

ちなみに、大部屋は105号室だった。大部屋と言うだけあって一番広い部屋は10人分くらい布団が並べられそうだ。そして、外が見える小部屋が2つ、大部屋と小部屋の中間の小部屋が1つの4部屋がある。外が見える小部屋2つは、お互い行き来するのに大部屋を通らなければならない。


ワ「私が責任をもって大部屋と小部屋の中間の部屋に陣取る!」


ワルキューレは、103号室から白いテーブルと椅子をアイテムボックスに入れて持ってくると、そうそうに決めてしまった。責任をもって見張らなくても、別に俺は覗きに行かないって。それに、メィルが千里眼で監視しているだろうしな。

俺とアヌビスは直接大部屋とつながっている小部屋を。弥生とイルナはワルキューレの部屋を通った先の小部屋を使うことにした。


ア「窓から飛んでイルナの部屋へ遊びに行く方が近いのじゃ!」


アヌビスはそう言って小部屋の窓を開けて隣の小部屋へ行くが、まだ弥生たちは102号室から帰ってきていないので、窓が閉まっていたようだ。


ア「むぅ、窓がしまっておったのじゃ!」

レ「俺達はアイテムボックスが無い分だけ運ぶ量が多いんだから、さっさと行くぞ。」


俺達が105号室を出ると、丁度弥生たちが入ってくるところだった。


ヤ「源さんはこれからですか? でしたら、私がアイテムボックスで手伝いましょうか?」


そう言う弥生は手ぶらだ。アイテムボックスって便利だな。


レ「まあ、大した私物も無いけど、手伝ってくれるなら助かる。」

ヤ「分かりました、任せてください!・・・ちなみにエッチな物は無いですよね?」

レ「無いよ!? そもそも、ケルベロちゃんが取り寄せてくれないだろ。」

ヤ「そうですよね。じゃあ、片っ端から入れていきます! リスト化されるので適当に入れても大丈夫なので!」


101号室に着くと、さっそく弥生は目につくもの全てをアイテムボックスに入れていった。


レ「あっ、ちょっと待った!」

ヤ「え? あ・・・。」


ちょっと言うのが遅かったが、下着類もそのままだった。


ヤ「まあ、これくらいなら大丈夫です。」


弥生はそう言って、つまむようにトランクスもアイテムボックスへ入れていった。アヌビスの私物もほとんど無く、あっという間に片づけは終わった。


ヤ「それでは、105号室でリストを読み上げますので、置く場所を指定してください!」

レ「いや、そんなに手間をかけなくてもどうせ1部屋しかないんだから、全部一緒に置いてくれていいよ。」

ヤ「そうですか? それじゃあ、置きますね。」


弥生は小部屋のすみっこにすべての荷物を置いて行ってくれた。まあ、ほとんど着替えとゲームくらいだけどな。


ヤ「それでは、おやすみなさい!」


弥生は荷物を出し終わると、小部屋に帰っていった。


レ「アヌビス、片づけは手伝えよ。」

ア「分かっているのじゃ、我の荷物はここに固めるのじゃ。」

レ「ケルベロちゃんに言ってタンスを取り寄せてもらおうか。」


アヌビスはタンスが分からないようだったが、服を入れる物だと言うと、納得した。


片づけが終わって大部屋に行くと、ワルキューレが闇の壁で仕切りをしていた。


ワ「こちらが弥生殿、こちらがイルナ殿、こちらがアヌビス殿、そしてここが零殿のスペースだ。」

ア「我は零と一緒の部屋でいいのじゃ。我の部分はワルキューレが使うとよい。」

ワ「気を使ったつもりなのだが、1つ空けてくれると言うならそこを使わせてもらおう。」

レ「4等分で区切って、ワルキューレはどこで寝るつもりだったんだ?」

ワ「新しく覚えた血魔法で、蝙蝠に変身して天井にぶらさがって寝るつもりだったが?」

ヤ「よかったですね、スペースが空いて。」


俺達は歯磨きをして寝ることにした。ちなみに、風呂は時間を分けて入った。



閑話 ロキエルと分裂体


ロ「さて、ルバートの痕跡を追って転移したんだけれど、丁度誰かが居てよかったわ。」


私は、魔界に戻ると、人間をその辺に放置した。そして、アイテムボックスからイスを出して座った。


レ「え?」


人間は、地面に座ったまま、無表情で聞き返してきた。状況が判断できていないのかしら? 仕方ないわね。


ロ「私の仲間のルバートを知らないかしら? なかなか魔界へ帰ってこないから迎えに行ったのだけれど。ああ、名前を言われても誰か分からないのね? 見なさい、姿は私と同じような感じよ。」


私はそう言うと、しまっていた角と羽を出して見せる。調子に乗って少しポーズまで取ってしまったわ。


レ「え?」


私の姿を見ても何の反応も示さない。知ってて誤魔化しているのなら、演技がうまいわね。表情からは何も読み取れないし、感情が無いのかしら?


ロ「もう、本当に知らないの? 今なら、正直に話せばさっきの場所に帰してあげるわよ?」


鞭ばかりでは人間は言う事を聞かないと聞いたことがある。馬もニンジンをぶら下げれば走るように。人間には助かる道を示すのが効果的よね。


レ「え?」


帰れるという一番のエサをぶら下げても折れないなんて、信用していないのかしら?


ロ「強情ね、あなたの体に恐怖を刻んであげましょうか?」


エサでダメなら、やっぱり鞭しか無いわね。私は脅しの為に右手に犬女神を吹き飛ばしたのと同じ水の球を作り出す。


ロ「どう? 低ランクの女神なら1発で倒せるほどの水球よ? 話す気になったかしら?」

レ「え?」


情報を話すまでは危害を加えられないと思っているのかしら? じわじわといたぶる方法も無い事は無いけど、私の力じゃ何をしても1発で殺してしまいそうね。


ロ「・・・これは脅しじゃないわよ? 安心しなさい、これで死んでも直ぐに蘇生してあげるから。話すまで永遠に殺し続けることも出来るのよ?」


実際、私のMPなら蘇生に使うMPよりもMPの自動回復量の方が多い。痛みは無いかもしれないけど、蘇生されないかもしれないという恐怖は感じるわよね?


レ「え?」


私のこめかみに血管がビキリと音を立てて浮かび上がった。馬鹿にされすぎて、もう、我慢の限界が近いわ。殺したい気持ちを抑えて、当たらないように掌をずらすと、水球を近くの地面に撃ちこむ。ぶつかった地面が吹き飛び、大きなクレーターが出来た。


ロ「ね? あなたもこうなりたくは無いでしょう? さあ、話してくれるわよね?」

レ「え?」

ロ「もういいわ、一回死になさい!」


私は我慢の限界を迎え、水球を撃ちこむと、人間の全身が水球に覆われて一瞬見失ってしまった。


ロ「さて、蘇生をしようかしら・・? あれ、コアが見当たらないわ?」


私はキョロキョロと辺りを探す。コアのまま逃げられる訳も無いし。


ロ「吹き飛ばしてしまったのかしら?」


私はせっかくの情報源を無くしたのかと思い、真剣に高速で飛行して辺りを探すが、コアは見つからなかった。


ロ「まさか、コアを残さないタイプの人間だったとか・・? ちっ、もう一度他の奴を捕まえるか。多少手がかかりそうだけど、この際、犬女神でもいいわ。」


私は腹ただしく思ったが、終わったことに後悔はしない。もう一度やり直せばいいだけだ。私はビジネスホテルに転移をする、が、転移できない。


ロ「なんで?! さっきは出来たのに! まさか、対処された? それなら、さっきの犬女神より上位の女神が結界を張ったという事ね。これは一旦、ルバートは諦めましょう。」


私はルバートに大した未練が無かったので、あっさりと諦めた。



メ「ぶべっ、なにこれ!?」


メィルは、ビジネスホテルで零を驚かそうと、壁を透過しようとしたがぶつかった。


メ「変な壁、えいっ」


メィルは壁を殴ったが壊れない。


メ「こうなったら、火魔法!・・・これもダメか。」


メィルは壁をゲシゲシ蹴っている。


ケ「・・・何をしている?」

メ「あ、ケルベロ様。見てください、この壁変なんですよ、通れなくなっています!」


ケルベロちゃんは無言でメィルの鳩尾にパンチを撃ちこむ。


メ「げふぅ、き、急に何をするん、ですか、ケルベロ様!」

ケ「このドアホ! その結界はラヴィ様にわざわざ張っていただいたものだぞ!」

メ「えぇ!? 知りませんでした!」

ケ「普通に入口に行けば案内が書いてある! はぁ、こっちに来い。」


メィルはフロントの奥でケルベロちゃんにこってりと怒られた。

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