第7話 ダンジョン攻略7日目

ア「おはようなのじゃ!」


アヌビスが元気に挨拶をしてくる。半目で時計を見ると、まだ5時半じゃないか。


レ「もう少し寝かせてくれ・・。」


俺は布団をかぶる。アラームが鳴るまでまだ30分あるじゃないか。いつもの起きるタイミングを逃すと寝た気にならない。睡眠時間は十分でも、頭が重くなるから起きた気にならないんだよな。


ア「起きるのじゃ!」


アヌビスは俺の布団の上にドスンと乗ってきた。零に20ダメージ。いや、日常生活でダメージ受けるとか、何気にやばくないか!?同じことをワルキューレにされてたら死んでるぞ・・。まあ、ワルキューレが同じことをやることは無いが。俺はさらに布団に潜り込むと、断固として起きないようにした。


ア「そっちがその気なら、こっちにも考えがあるのじゃ!」


アヌビスはタタタッと走り去って、ドアを開け、廊下に出ると、叫んだ。


ア「零に襲われるー!助けてほしいのじゃー!」


あいつ、なんてことを叫びやがる!俺は布団を跳ね飛ばし、アヌビスを捕まえに行く。本気で逃げられたら絶対捕まらないだろうが、俺を起こす目的で起こした行動なら捕まえれるだろう。


ヤ「大丈夫!?アヌビスちゃん!」


弥生は寝起きらしく、浴衣のまま慌てて部屋から出てくる。ふむ、弥生は浴衣で寝ているのか。そして、胸元が少し見える。ノーブラか。


ア「おはよう弥生!零も起きてきたのじゃ。」


弥生は緊急性が無いと気づくと、慌てて浴衣の胸元を直してこっちをにらみつけてくる。


ヤ「おはようございます?源さん、どういうことですか?」


目が覚めてきた弥生に詰め寄られる。


レ「単なるアヌビスの悪ふざけだよ。俺が布団から出ないからってな。」


俺はアヌビスの頭に拳骨を落とす。アヌビスに0ダメージ。固てぇな。


ヤ「幼児虐待はだめですよ!」


弥生は止めてくるが、どう考えてもアヌビスの方が強いだろ・・。


ワ「何を騒いでいる?」


ワルキューレまで出てきた。女神も寝ぼけるのか?真っ白のネグリジェで出てきたぞ・・。Cカップくらいか?


ヤ「きゃー、ワルキューレさん、部屋に戻って下さい!」


ワルキューレは弥生に背中を押されて部屋に帰っていった。俺はアヌビスの首根っこを掴み、101号室に入った。


レ「アヌビス、グッジョブ!」


俺はアヌビスの頭を撫でてやった。なんならお菓子をあげてもいい。ラッキースケベばんざい!


ア「な、なんじゃ!?なぜいたずらをして褒められるのじゃ!?」


アヌビスはよくわかっていないのか、俺の手から逃げ出した。それからアヌビスに歯磨きを教え、着替えさせたりして過ごしていると、30分ほど経った頃だろうか、ドアをノックする音がする。


ヤ「源さん?起きてますよね?」

レ「ああ、起きているよ。さっきは悪かったな。」


俺はドア越しで返事をする。弥生の顔を見るのが怖い。と思ってたらあっさりとアヌビスがドアを開けた。


ア「よく来た弥生、朝ごはんを一緒に食べるのじゃ。」


アヌビスは何事も無かったように話しかけ、弥生も少し怒り顔から、毒気を抜かれたのか、苦笑に変わった。


ヤ「お説教をしようかと思いましたが、やめました。まだ子供ですものね。」

ア「我は子供ではないぞ!?こう見えても神じゃからな!」


今は元神だがな。コアをしばらく放置したら復活とかするのかな?弥生はアヌビスの頭を撫でる。うん、犬耳って撫でたくなるよな!


ヤ「では、朝ごはんにしましょうか。ワルキューレさんを呼んできますね。」


 弥生はワルキューレを呼びに行く。いつもより30分程早いが大丈夫か?また風呂に入っていないか?

 心配をよそに、ワルキューレも来た。あの騒ぎの後、結局目が覚めたので、湯浴みをして着替えたとのこと。俺はケルベロちゃんに注文をする。

アヌビスにはホットケーキ、俺は梅茶漬け、弥生は変わらず和風に、ご飯、みそ汁、漬物、温泉卵、焼き鮭。ワルキューレも今日は食べるのか、塩パンとリンゴ1個、チーズと牛乳だった。

 結構庶民派か?まあ、隣で水だけ飲むとかだと俺達も食事がしにくいから助かる。水しか飲まないピッ〇ロさんは普段他の人と食事をするときはどうしているのだろうか。

 ワルキューレは寝ぼけていたのもあって、朝の出来事について何も言わなかったが、弥生は目線で「今回だけですよ?」と威圧してきた。俺は誤魔化すようにアヌビスの頭をぐりぐりすると、「何をするのじゃ!」と離れていった。アヌビスに0ダメージ。

 俺達はケルベロちゃんに挨拶をしてからダンジョンに向かった。しかし、入口には「本日休み」と書いてあった。


レ「なんだこれ?」

ヤ「休み、みたいですね。」

ワ「ダンジョンが休みだなんて、聞いたことが無いぞ。」

レ「そもそも、時間が無いって言うのに・・。メィルいるか?」


しばらくすると、メィルが転移してきた。一応起きていたらしい。


メ「おはようございます、皆さん!今日は早いですね?」

レ「ああ、朝色々あってな。それはともかく、本日休みって書いてあるんだけど。」

メ「あれ?知らないの?働き方改革で週に1日は必ず休むことになったんだよ!」

レ「神の世界でも働き方改革ってあんの!?」


昨日は昨日でラヴィ様達居なかったのに、2連休とは・・。


レ「ダンジョンが休みなら、俺達は何をすればいいんだ?」

メ「じゃあ、ダンジョンに休日だけ開く場所ができたんだよ。そこに案内してあげるね!」


メィルは扉の横にある職員用通路を通って中に入った。誰も居ない受付を通り、エレベーターに行く。メィルは7階のボタンを押すと、エレベーターは7階に着いた。


メ「じゃーん、ここがカジノだよ!」


俺達が着いた階層はラスベガス並みのカジノだった。


ラ「いらっしゃいませ、お客様。」


そこには、バニーガールの格好をしたラヴィ様が居た。Bカップくらいか?見た目がウサギ獣人のラヴィ様がバニーガールの格好をすると似合うなやっぱり。お尻の尻尾は本物かな?


レ「ラヴィ様は休みじゃないんだな?」

ラ「私は分身です。本体は休みです。」

レ「じゃあ、有給の時も分身を置いておけばいいのに。」

ラ「ここにお客様が来る時だけの特別措置です。分身を解除した時の記憶の統合で、休んでいるのに働いた気になるので普段はやりません。」


人間が働いた夢を見る感じか?会社で仕事をしているのに夢だったってやつ。あれは起きたときに損した気分になるんだよな・・。最悪、夢の中なのに仕事のミスで怒られたりとかして・・。考えるのはやめよう。


ヤ「ところで、どうやって遊ぶんですか?お金なんて持っていませんよ?」

ラ「コアもしくはMPと引き換えにチップを渡しますので、それを使ってそれぞれのゲームで遊んでください。詳しくは、それぞれのゲーム担当の私に聞いてください。」


ホールを見渡すと、いろいろな姿のバニーガールのラヴィ様が居る。金髪、黒髪、赤髪や、目の色も青から黒から黄色と様々だ。髪型もロングからショート、セミロング等。ただ、身長とバストは変わらないようだ。


ラ「何か文句ありますか?」


いつの間にか俺の後ろにラヴィ様が立っていた。そういえば心を読めるんだった・・。


レ「とりあえず、コボルトのコアと俺のMPをチップに変えてくれ・・。」


昨日アヌビスに集めてもらったコアと、俺のMPをコインに変えてもらう。MPは自動回復するから溜まったらまた交換してもらおう。


ラ「わかりました、それではこちらをどうぞ。」


ラヴィ様はアイテムボックスからじゃらじゃらとコインを取り出すと、箱に入れて渡してくれた。単位は1つしかないみたいで、Gと書いてある。


ラ「帰るときは、コインを交換しますので、声をかけてください。」


それだけ言うとカウンターにもどって待機している。このラヴィ様はコイン交換専用らしいな。俺はアヌビスと弥生にコインを渡していると、メィルが話しかけてきた。


メ「お兄ちゃん!私の分は?」

レ「いや、お前は何もしてないだろ。自分のMPを変換してこいよ。」

メ「お兄ちゃんのケチ!」


メィルはプンプン怒りながらカウンターに向かった。MPをチップにするって女神ならほぼ無限に交換できるだろ・・。ちなみに、ワルキューレは来て早々、興味が無いのか、バーの方で飲み物をのんでのんびりしている。


ヤ「私は王道のルーレットをしてきます!」

ア「我はバカラというのをやってみるのじゃ!」


2人はそれぞれ好きなゲームに向かって行った。メィルはポーカーにいったみたいなので、俺は普通にスロットをやるかな。


ラ「スロットの説明は要りますか?」


スロット担当のラヴィ様が居たので、説明をお願いした。ここには3種類のスロットがあり、5リールの物、3リールの物、9リールの図柄を揃える物だ。3リールの物は777が揃えば大当たりになるし、5リールの物は宝の図柄が5つ並ぶと大当たり、9つはジョーカー風のうさぎが9つ揃うと大当たりみたいだ。俺は一番確率の高そうな3リールの物をやってみることにした。


レ「とりあえず、5BETで全ラインか。」


横3列と斜め2列だ。俺はコインを5枚入れると、レバーを下げる。自動で止まるタイプみたいなので、後は見ているだけだ。しばらくして、左のリールの真ん中の列に7が止まった。


レ「お、さっそく7か。ほぼ外れるやつだな。」


ゲーセンでやるスロットならば、最初に7が止まるとほぼハズレだ。中のリールの真ん中の列にも7が来た。リーチになったからか、画面がキラキラと光っている。


レ「リーチか!まさか当たったり・・?」


期待に胸を膨らませながら、食い入るようにリールを見る。最後の右のリールはなかなか止まらない。ゆっくりくるくる回っていて、揃いそうになると滑る。それを3周くらいしたあとに真ん中の列に7が止まった!


レ「やったぞ!大当たりだ!」


俺は立ち上がると、ガッツポーズをした。いきなりまさかの大当たりで、コインが1000枚でてきた。すると、ルーレットをやっている弥生や、バカラをやっているアヌビスからも。


ヤ「やりました!36倍大当たりです!」

ア「これは楽しいのじゃ!3連勝じゃ!」


これはおかしいな?当たりすぎる。ビギナーズラックであとからすっからかんにされるのか?俺は疑いながら次は9つの図柄をそろえるスロットにした。最大の8枚を入れる。レバーを下すと、画面にかわいいうさぎがぴょんぴょん跳ねてきて、左上のマスに入る。また跳ねてきてその下に入る。最終的に9つ全てがうさぎで揃った。大当たりで2000枚のチップが出てきた。これはおかしい、絶対おかしい。俺は2人の方に向かった。


ヤ「200枚が36倍にあたり、さらに全部黒にかけて14400枚になりました!」


弥生は全掛けして2連続当たったらしい。


ア「我は100枚が5連勝で3200枚になったのじゃ!」


アヌビスは5回連続勝ったらしい。絶対に無いとは言わないけれど、おかしい。


レ「なぁ、当たりすぎじゃないか?俺も大当たり2回連続で当たったんだけど。」

ヤ「よかったじゃないですか!増えれば増えるほど楽しいです!」

ア「そうじゃ、勝つのは楽しいのじゃ!」


2人とも勝ったことで浮かれて冷静な判断になっていない。


レ「メィルはどうだ?」

メ「・・え?・・なんですか?」


メィルはポーカーで全敗らしい。フラッシュが揃えば親がフルハウス、3カードにはストレート、フルハウスには4カードで負けたらしい。こっちはこっちでおかしいな!メィルにだけ勝たせる気が無いかのようだ・・。絶対に裏があると思い、ワルキューレに今までの事を話した。


ワ「ここは、俗にいう救済措置の場所だ。我々神には全く関係が無い。」


 ワルキューレの話では、ダンジョンに行き詰まったり、逆に好調すぎるときに援助や足止めの調整をする場所らしい。コインは経験に変えられるので、勝っているなら恐らく5階は厳しい場所なんじゃないか?という事らしい。

 そういうことで、どうやってもカジノ側の都合のいいように調整されるようで、メィルみたいにダンジョンに関係のないものは100%負けるらしい。だからワルキューレはやらないのか。なんでメィルはその事を知らないんだろうな?知ってて演技しているのかと思ってメィルを見ると、カウンターでMPをコインに変えてまた負けているから、カジノの存在は教えてもらっているのに、カジノの意味は教えてもらってないのだろうな・・。


レ「俺に話してもいいのか?」

ワ「話さなくても結果は一緒だからな。仮に1回しかやらなくても交換率で調整されるから変わらん。」


少ないなら少ないなりに多く交換してくれるらしい。そういうことなら、俺も適当に遊んでくるか。


そして、最終結果。


ヤ「勝ちまくって10万枚になりました!」

ア「我は最後の最後に全掛けして負けたのじゃ・・。」


うん、アヌビスは神枠だな。そしてメィルは・・。


メ「全敗しちゃった・・。」


 本当の女神には容赦ないなカジノ。そろそろお昼だし、引き揚げてホテルでのんびり過ごそう。

 俺達はカウンターのラヴィ様にコインを渡すと、経験のコアをくれた。このコアはここでしか使えないとの事なので、即座に使用した。

 ステータスも上がり、俺達結構強くなったんじゃないか?これなら5階層も余裕だろう。

 俺達はホテルに戻ると、昼飯を食うことにした。俺はちゃんぽん麺、弥生はアジフライ定食、アヌビスはお子様ランチを食べた。ワルキューレはバーで飲んだから満足したのか、自室に帰っていた。

 俺達3人はケルベロちゃんにモノポリーを取り寄せてもらって遊んだ。夕食はみんなで手巻き寿司を作って楽しんだ。ワルキューレは納豆巻を初めて食べたのか、微妙な顔で、口の端から納豆が垂れているのが面白かった。アヌビスは爆笑していたな。真っ赤な顔でプルプルするワルキューレは可愛かった。弥生はなぜかかっぱ巻きとかんぴょう巻ばかり食ってたな。こうして楽しい時間を過ごした後、アヌビスを風呂に入れ、歯磨きをした後に寝た。

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