第5話 ダンジョン攻略5日目
アラームの音で目が覚めた俺は、アラームを止め伸びをした。
レ「変な夢を見たなぁ。」
俺はカーテンを開け、歯磨きとトイレを済ませ、冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出すと、ポットに入れて沸騰するのを待った。沸騰するころにドアをノックする音が聞こえた。
メ「おはよう!お兄ちゃん!」
ヤ「おはようございます、源さん!」
扉を開けると、声の通り、弥生とメィルが居た。
レ「おはよう、二人とも。珍しいな?一緒に居るなんて。」
ヤ「朝からメィルちゃんが昨日の格闘ゲームの続きをしようって現れまして。」
メ「お姉ちゃんと対戦するの楽しいよ!」
いつの間にかメィルの弥生の呼び方が形無しさんからお姉ちゃんに変わっていた。ゲームで仲良くなったのか?俺は2人を中に入れると、湯飲みを3つ用意し、パックではあるがお茶を入れて雑談をした。朝食として、俺はゆで卵とトーストを頼み、弥生はアップルパイとヨーグルト、メィルはケバブを頼んだ。ケバブなんて初めて見たな。食べ終わり、食器を片付けると、メィルが帰っていった。8時になる頃、俺達はダンジョンに向かった。
レ「おはようございます、ラヴィ様。」
ラ「おはようございます、皆様。本日もがんばって下さいね。」
ラヴィ様は軽く微笑んで、手を振って送り出してくれた。がんばろうって気になるな。
レ「よし、今日こそ3階をクリアしようか!」
ヤ「そうですね!がんばりましょう!」
俺達はエレベーターを使い2階へ行くと、横の階段から3階に向かった。今回は最初からオークが待っていることも無く、慎重に進んだが、オーク達に会うことは無かった。
レ「隠し扉も無いよな?」
ヤ「前回みたいに罠にも注意してますけど、普通の罠しかありません。」
俺達は不思議に思いながら進んだが、ついには1体のオークと会うことが無かった。マッピングで見ると、そろそろエレベーターかな?と思われるところに向かう。すると、そこには悪魔の様な外見のモンスターに白い槍を突き刺している女性が見えた。髪は白のロングヘア、身長は165cmってところか?装備も武器も真っ白で騎士のように見える。モンスターではないが、弥生は癖で鑑定する。
ヤ「あっ、鑑定しちゃいました・・・。」
ワ「いきなり鑑定をするとは無礼な!」
彼女は左手で光の剣を生み出すと、俺達に向かって投げたのだと思う。見えなかったけど。
ラ「やめなさい。」
ラヴィに0ダメージ。ラヴィは光の剣を右手の親指と人差し指で刃の部分を掴んでいた。
ラ「鑑定眼鏡は私が彼らに与えました。それが無礼だと言うのなら、私に言いなさい。」
ワ「そうでしたか、申し訳ありません・・。悪魔との戦闘で気がたっていました。」
彼女が刺していた悪魔は、光の粒となり、コアを残して消滅した。彼女は、悪魔のコアを踏み砕くと、ラヴィ様の前にひざまずいた。
ラ「目立たないように行動せよとの命が出ているはずだけど?」
ラヴィ様は腕を組み、彼女を見下ろしている。
ワ「申し訳ありません。思っていたより強く、時間が掛かってしまい、隠ぺいする時間がありませんでした。」
ラ「あなたの慢心が原因って訳ね?それで、どうするつもり?」
いつもの見送ってくれたラヴィ様と違い、今は厳しい上司の雰囲気がする。俺の上司にも居たな・・。
ワ「はっ、申し訳ありません。ラヴィ様に彼らの記憶を改ざんして頂ければと・・。」
ラ「私にあなたの尻拭いをしろと?してもいいけど、あなたの評価値は足りるのかしら?見習いに落ちても知らないわよ?」
ワ「そ、それは・・。」
彼女は女神になりたてなのか、評価値があんまり高くないらしい。それとも、この不始末が大ごとなのか?あ、地面についている手がプルプル震えてる。冷や汗もすごいな、遠目でもわかるくらいかいてる。
ラ「黙っていてもどうして欲しいか分からないわよ?彼らの記憶を消せばいいのかしら?」
ラヴィ様は俺達の方を向くと、右手を向けてくる。とばっちりだ!
ワ「お、お待ちください!この不始末は私が!」
ラ「そう、だったら今回はあなたに任せるわね。」
ラヴィ様は俺達にしか見えないようにウィンクして、転移していった。攻撃された仕返しをしてくれたのだろうか?ラヴィ様が転移してから数十秒たって、彼女はやっと動き出した。
ワ「た、たすかりました・・?ふぇぇ、女神になったばっかりで、こんな大ごとになるなんて、びぇぇん!」
彼女は女の子座りをしてえーんえーんと泣いている。さっきとイメージが違いすぎるな。
ヤ「泣かないで下さい。ほら、飴をあげますから。」
弥生はポケットから飴を取り出すと、彼女に渡した。そんな対応でいいのか?
ワ「あ、ありがとう。私の名前はワルキューレだ。」
ワルキューレは落ち着いたのか、自己紹介をしてくれた。
ワ「私は、最近見習いから女神になったばっかりで、張り切って仕事をしていた・・。」
ワルキューレは、どこまで話していいものかと、きょろきょろと辺りを見回している。仮に見張っているのがラヴィ様ならどっちにしろ見つけられないだろうが。
ワ「逆に聞くが、どこまで知っている?」
ワルキューレは話のすり合わせのため、俺達の話を聞きたいらしい。
レ「俺達はメィルの試験の為に地球からこっちに来たって言えばいいのかな?」
ヤ「大雑把に言えばそれくらいじゃないですか?実際、今の出来事に関しても全く心当たりはないですし。」
弥生は首を傾げて、他に何かあったかなとウンウン唸っている。
ワ「そうか、それならほとんど何も知らされていないな。どこまで話していいか分からない以上、しばらくお前たちと同行する事にする。ただし、緊急事態以外は手を出さない。」
ワルキューレは、それで問題ないですか?と聞きたげに空中を見たが、特段誰からの返事も無かったので、そういう事にして様子を見ることになった。
レ「ところで、さっきのあれは何だったんだ?」
ワ「秘匿事項に該当するため、詳しく話は出来ない。が、当然、試験者に見せて良いものではない。だが、お前たちの記憶が消されなかった上、私の評価が今のところ下がっていないところを見ると、状況が少し変わっているらしいな。」
ヤ「とりあえず、ここのエレベーターのボタンを押してクリアにしておきましょう!」
弥生はエレベーターに向かうと、えいっとボタンを押した。確かにこの階にはあまり来たくないしな。
レ「これはずるにはならないのかな?」
メ「うんしょ、やっと繋がった!」
メィルはまるで貞〇が井戸から出てくる様に床から現れた。
メ「千里眼で見れないし、直接向かおうと転移したら3階に入れないし、エレベーターや階段も使えないし。仕方ないから、透過で向かったら異様に空間が長くなっててやっとのことで着きました・・。」
メィルは相当疲れたのか、床に這ったままだ。顔を上げてワルキューレを見ると、速攻で立ち上がってピンと背筋を伸ばした。
メ「ワ、ワルキューレ様!お疲れ様です!このようなところに何かご用ですか!」
メィルは90度お辞儀すると早口でそう言った。
ワ「そうかしこまらなくても良い。少し問題が起きてな、この者たちと同行する事になった。」
冷静をよそおっているが、ラヴィ様に対する態度をみるに、少しの問題じゃないだろうな。しばらくワルキューレとメィルで対話をしていたが、一旦区切りがついたみたいだったので、メィルに小声で話しかけた。
レ「なあ、メィル。ワルキューレって偉いのか?」
弥生が鑑定してると思うが、メィルに聞いてみる。
メ「ワルキューレ・さ・ま!だよ!7,8百年前に大きな活躍をしてあっという間に見習いから女神に昇神したエリートだよ!」
あれでエリートなのか。それにしても、女神になったばっかりで7百年前って、俺達と感覚が違いすぎるな・・。
ヤ「ちなみに、メィルちゃんはいつから見習いなんですか?」
弥生は素朴な疑問を聞いた。
メ「私?私は1500年くらい前からかな?偉い神様だと、こっちの宇宙誕生前とか、数十億年とかが当たり前みたいだし。」
思ったよりずいぶん長い間だな。どっちにしろ偉くなさそうだから呼び捨てのままでいいか。そして、メィルの声が大きかったのか、ワルキューレが会話に入ってきた。
ワ「私の事はワルキューレと呼んでくれていい。ところで、女神については知っているか?知らないのであれば、少し説明をしようか。」
レ「ぜひお願いします!」
俺達は強い人が偉いくらいにしか思っていなかったが、実際は逆で偉くなったら強くなるらしい。女神ランクは女神予備軍→見習い女神→女神Ⅴ→女神Ⅳ→女神Ⅲ→女神Ⅱ→女神Ⅰ→下級神→中級神→上級神→最上級神となっており、
男は呼び方が男神となるだけで基本的に同じ。
女神予備軍は、一定の知能・能力を持つ個体が女神Ⅲ以上のランク者の推薦などで選定される。見習い女神は女神予備軍の中から一定の成果があった者が選定され、強さは予備軍も見習いも大して変わらないが、女神のランクは1つ上がるごとにステータスがおよそ10倍になるらしい。
ランクは見習い女神が試験をクリアしたらⅤ、評価が上がるとランクが上がり、能力によって1惑星~1太陽系レベルの星の管理を任される。管理する星に知的生命体が居ない場合は管理するための生命体を作ったりもする。
下級神は女神Ⅰのランク者が銀河系を管理できる能力があると認められれば昇神。
中級神は下級神が銀河団を管理できる能力があると認められれば昇神。
上級神は中級神が宇宙を管理できるようになると認められれば昇神。
最上級神は神の中で最高の能力を持つもので、管轄は全宇宙、全次元。現在ははじまる様が最上級神。
ワ「私は英雄を選定するのがうまくてな、女神の試験はすぐにクリアできた。」
メ「ですです!なので私たち見習い女神から見ると、ワルキューレ様は超エリートなんだよ!」
メィルは興奮気味に叫んでいる。それにしても気の長い話だ。
レ「誰でも神になれるのか?」
特に神になる気は無いが、なれるかどうかだけは聞いておきたい。
メ「場合に寄るけど、まず上位女神様に選ばれて、評価値が溜まればなれるよ?」
ワ「私も元人間だ。たまたま争いのある時代だったから評価を貯めやすかったが、普通は1000年くらいかかるな。」
ヤ「じゃあ、最低寿命が1000年以上無いと無理ですね・・。」
ワルキューレみたいに特例じゃない限り、俺達普通の人間じゃほぼ無理だな。
メ「でも、女神になってさえしまえば寿命ではほぼ死ななくなるよ!」
永遠の命は欲しい奴は欲しいのだろうが、俺は要らないな。そんなに寿命があっても星を見守るだけとか暇すぎる。
レ「で、結局メィルは何しに来たんだ?」
メ「さっきも言ったけど、千里眼で様子が見れなくなったから直接見に来たんだよ!逆に聞くけど何があったの?」
ワ「それについては今ここで話すことは出来ない。そろそろ昼食の時間だ、一旦戻らないか?」
ヤ「そうですね!お腹は空きましたし、食堂へ行きましょう!」
俺達はエレベーターに向かうと、メィルが不思議な顔で聞いてきた。
メ「見てない間にクリアしてたの?うーん、ずるの予感がするけど見てないし・・、今回はセーフで!」
一瞬ワルキューレににらまれたのが効いたのか、深く追求されずに今回は見逃されたようだ。
食堂に行くと、丁度キッチンからはじまる様が出てきた。
は「おう、ご苦労さん、今日はいい魚が入ってるぞ?寿司なんてどうじゃ?」
ワ「は、は、は、はじまる様!!??なぜこのような場所でそのようなことを!」
ワルキューレはひざまずくと、俺達にも「頭が高いぞ!」と言ってきた。確かに一番偉い神様らしいけど、俺達にとってはそれこそ雲の上すぎて実感がわかないし、別に上司ってわけでもないしなぁ。そういやメィルも全然かしこまらないな、あいつにとっては社長みたいなもんじゃないのか?
は「わっはっはっ。今は単なる料理長だ!それよりどうだ?寿司でいいのか?」
ヤ「いいですね!どんなネタが入ってますか?」
メ「私は大トロがいいです!あと、ウニとイクラ!」
俺は湯飲みに緑茶を入れると、人数分持ってきた。寿司にはやっぱりお茶だよな。ワルキューレはどう対応すればいいのか迷っているようだが、はじまる様がキッチンの奥に消えると、俺達と一緒の席に着いた。四角テーブルで一辺に一人ずつ座る。醤油の準備や、ガリの準備などをしていると、はじまる様は寿司桶にいろいろなネタを詰めて持ってきてくれた。
は「お代わりはいくらでもあるから、好きなものを食べな!」
皆「いただきます!」
俺達は合掌すると元気よく食べ始めた。
メ「大トロいただき!」
ヤ「ヒラメ、マグロ!」
レ「俺はイカかなとりあえず。」
ワ「私も食べていいのだろうか?最高神様の手作り・・。」
ワルキューレは恐れ多いと感じているのか、なかなか手が出ないようだったが、改めて勧めると食べ始めた。
ワ「この玉子、うまい!」
ワルキューレってもしかしてワサビ苦手なのか?それとも遠慮しているのか?まあ、好きなものを食べろって言われたから別にいいか。
レ「ちょ、いつの間にかカッパ巻ばっかりじゃねーか!」
ヤ「まぁまぁ、注文すればいいじゃないですか。」
メ「そうだよお兄ちゃん、マスター、大トロお代わり!」
ヤ「あ、私はあなごをお願いします!」
は「はいよ、お待ちどう!」
メィルと弥生は遠慮なく注文し、ワルキューレはやはり遠慮してるのか、カッパ巻を食べていた。
皆「ごちそうさまでした!」
レ「いつも飯はうまいけど、今日の寿司は高級店なんかよりよっぽどうまいな!」
ヤ「そうですね!高級店は行ったことないですけど、回転ずしの100万倍おいしいです!」
レ「まあ、俺も接待くらいでしか行ったことないけどな!」
ヤ「私は回らないお寿司屋自体、誕生日くらいしか行ったこと無いです・・。」
ちょっと弥生がしょんぼりし始めたが、「今日の飯がうまかったからそれでいいじゃないか。」と言ったら「そうですね!」と機嫌を直したようだ。
食事を終え、フロントを通るとラヴィ様が居たので、挨拶する。すると、小声で俺にしか聞こえないように話しかけてきた。
ラ「うまくこの状況を利用してくださいね?」
それだけ言うと、あっさり離れていった。俺達は3階までエレベーターで行き、隣の階段から4階へ向かった。メィルは、ワルキューレの「私がついているから大丈夫だ。」の一言であっさりと撤収していった。転移する瞬間、「時間が出来たので乙女ゲーをクリアしよっと、グヘヘ。」とつぶやいていたが、せめて千里眼で見てろよと思った。
レ「この階層の敵は何が出るんだっけ?」
ヤ「パンフレットには4階狼って書いてあります!」
ラヴィ様にもらったパンフレットには各階のモンスターが書かれている。ただし、大雑把なため1階ゴブリン、2階スライム、3階オークと細かい種類までは分からない。では、4階狼は何が出るんだろうか?
ヤ「ハウンドドックやヘルハウンドなんかですかね?」
レ「それは犬じゃね?」
ワ「狼系のモンスターと言えばデーモンウルフやフェンリルだろう。」
レ「万が一フェンリルが出てきたら助けて下さいね・・?」
俺達は予想しながらしばらく進むと、第一モンスターを発見した。
ワ「あれは、コボルトだな。」
レ「よかったな、弥生、犬系も出るみたいだぞ。」
見た目は子犬を2足歩行させたようなかわいい外見だ。柴犬か?ナイフと革の鎧を着ている。
レ「やはり能力が高いな!当然ハイオークより強いか。」
俺達は3階でほとんど経験を得ていないため、俺が1対1で戦ってもコボルトに勝てそうにない。
ヤ「私に任せてください!えいっ!」
弥生は腕輪を鞭状にしてコボルトの首を締めあげて持ち上げると、左手の指輪を針状にして鎧の隙間から刺す。ちなみに、防御力自体は変わらないが気分の問題だろう。コボルトに20ダメージ。
コボルトは首に巻き付いた鞭をナイフで切ると、襲い掛かってきた。弥生はナイフをかわすと、左手の指輪を鞭状にして足首に巻いて転ばせると、クナイを首に刺した。クリティカル発生、コボルトに124ダメージ。弥生、いつの間に戦闘もできる子になったんだ?そういえば、スライムを狩りまくってたなぁ・・。俺も頑張らないとだめだな。
レ「ワルキューレ、すまないが、武器を貸してもらえないか?」
ワ「貸してもいいが、神槍は女神のランクによって強さが解放されるから、お前が装備しても攻撃力100くらいにしかならないぞ?」
レ「それで充分です!食らえ!」
俺のスラタンに比べれば3倍ほど強い。弥生の攻撃によってまだ倒れているコボルトの背中を刺した。コボルトに95ダメージ。やっとHPを半分以下に減らせたか。コボルトは起き上がって距離を取ると、俺の方に向かってきた。俺は槍を突き出すが、あっさりかわされてナイフの一撃を腕に貰う。零に20ダメージ。俺は防御力が高いからな!クリティカルを食らったら危ないけど、十分に注意すれば大丈夫だろう。
ヤ「源さん!援護します!」
弥生は手裏剣を投げるとコボルトの左手に当たった。貫通、コボルトに45ダメージ。貫通属性のついた手裏剣は、相手の防具分の補正を無視しダメージを与えることが出来るほか、防具をつけていない相手の体を貫通させることもできる。弥生はこれでスライムのコアを攻撃し、狩りまくったのだろう。
レ「あと少しだ、それ!」
俺は槍をコボルトの体に向かって突き出すが、ぎりぎりでかわされてしまった。近すぎると槍が逆に当てにくい・・。コボルトは尻もちをついてしまっていたので、弥生がさらに投げた手裏剣を回避することが出来なかった。コボルトの首に手裏剣が当たる。クリティカル発生、貫通、コボルトに133ダメージ。
レ「ふぅ、やっと倒せたか。」
俺は借りていた槍をワルキューレに返すと、弥生と今度の相談をする。
レ「敵一体に対してこれだけ苦戦するなら、下の階でステータスを上げてくるか?」
ヤ「そうですね、でしたら2階と3階に別れましょう!私はまだ恨みが残っているので・・ふふっ。」
ワ「それがいい、だったらお前にはこの槍をそのまま貸してやろう。」
俺はワルキューレから神槍を受け取ると、2階へ向かった。さすがに2階は今となったら雑魚だな。今はずるしてないはずだから、ミスリルスライムも出ないはず。神槍の使用はずるでは?とメィルの声が聞こえた気がするが、ワルキューレがいいというのだからいいのだ。
ワ「効率よく狩る為に、私がモンスターを集めてきてやろう。」
ワルキューレはそう言うと、闇魔法を唱え、影の牢獄を10個ほど作った。ワルキューレは一瞬で移動すると、あっという間にモンスターを集めてきてくれた。牢獄がパンパンだ、数百体ほどいるんじゃないか?スライム同士がくっついてでっかくならないよな?ワルキューレは俺に光魔法の魔法障壁を張ってくれた。
ワルキューレは影の牢獄からスライムを取り出すと、俺に向かって軽く投げてきた。俺はそれをバットの様に神槍を振って倒す。あれ?バッティングの練習かこれ!?ヒュージスライム以外を投げ終えたワルキューレは、俺の元へ来ると、あれで最後だと送り出した。俺は無言でうなづくと、ヒュージスライムに槍を刺した。HPが多く1発で倒せないので、何回か刺した。そろそろ夕飯の時間だから弥生を呼びに行こうとしたら、丁度エレベーターから弥生が現れた。
レ「お疲れさん、ずいぶん早いな?」
ヤ「投擲術のレベルが上がったので、一気に楽になりました!」
レベルが上がって覚えた投擲武器操作で、投げた武器の飛距離以内なら自由に曲げて攻撃できるらしく、手裏剣を同時に投げて一瞬で倒したらしい。
ヤ「いけ!フィンファンネル!って感じです!」
そうか、弥生はニュータイプだったのか・・。あとは、コボルトを相手にするには攻撃力が欲しいから、増えたMPでさらに装備を強化することにしよう。ちなみに俺は倒したのがスライムだったからか、弥生ほどステータスは上がっていない。
今回は素早い相手の対応に防御力と素早さを上げた。
レ「弥生にはこれを渡しておくよ。」
俺は今回MPを使うことが無かったので、ある程度のMPを分裂体の塊で作っておいた。それを装備に変えてもらう。スラタン刀、スラコート、スラクナイ、スラ手裏剣、スラマフラーとなった。弥生は、分裂体を指輪と腕輪に変えて身に着けているようだ。服は着慣れている物がいいので、スーツと忍者服は作っていない。分裂体で作るとどうしても固くなって動きづらくなるしな。
ワ「それでは一旦、槍は返してもらおうか。」
レ「ありがとう、助かったよ。」
俺はワルキューレに槍を返すと、ワルキューレは「気にするな。」と言う風に軽く手を振って槍をアイテムボックスにしまう。
レ「俺達はこれからビジネスホテルに行くけど、ワルキューレはどうするんだ?」
ワ「私も一緒にそこへ向かおう。もしどうしても泊まれなかったら自分の空間にでも帰るさ。」
ワルキューレも自分の部屋?空間?を持っているらしいが、今回は同行者という事で、俺達と同じような行動を取りたいらしい。
ヤ「もし、部屋がいっぱいで泊まれなかったら、私と一緒の部屋に泊まりましょう!そして、ゲームしましょう!対戦です!」
ワ「ゲームが何か分からないが、勝負を挑まれたら武人として逃げるわけには行かないな。」
弥生とワルキューレは、和気あいあいとしている。俺達がエレベーターからフロントへ向かうと、17時を過ぎたからか、今はフロントに誰も居ないようだ。まあ、用は無いから別に今はいいか。ビジネスホテルに着き、フロントに向かう。
途中、サーベラスに骨型の分裂体を与えると、一瞬で噛み砕かれた。攻撃力高すぎる・・・。
ケ「おかえりなさいませワン。」
ケルベロちゃんは丁寧にお辞儀をすると、見慣れない人物が居るなとワルキューレをチラッと見た。
レ「ケルベロちゃん、今日は一人増えるんだけど、泊まれるか?」
俺は大丈夫だろうと思いつつ一応聞いてみた。他に泊まってるやつを見たことがないからな。
ワ「私はワルキューレと言うものだ、部屋を用意してもらいたい。」
ワルキューレは泊まる前提で聞く。さっき言ってたことと違い、泊まれなかったら他の客を追い出せと言わんばかりのセリフだ。
ケ「希望のお部屋はありますかワン?」
ワルキューレの言葉の威圧に、ケルベロちゃんは気にせず淡々と対応する。
ワ「この者たちと近くの部屋、もし近くの部屋が空いてなければ弥生殿と同室でお願いしたい。」
ケ「分かりましたワン、102号室の隣の103号室でよろしいですかワン?」
ワ「弥生殿の隣の部屋か、ならばそこで良い。」
ワルキューレは103号室の鍵を。俺達はいつもの部屋の鍵を受け取ると部屋に向かった。
レ「ワルキューレはケルベロちゃんには普通に接するんだな?」
俺としたら、格上なのにいいのか?という意味で聞いたのだが。
ワ「はははっ、私は女神だぞ?見習いだからとやたらに馬鹿にすることは無い。」
ヤ「ケルベロちゃんは女神ランクⅢらしいですよ?」
ワ「え・・?零殿が「ちゃん」付けで呼んでいるからてっきり見習いかと・・。」
レ「本人がそう呼んで欲しいって言うからな。メィルは最初に馬鹿にして現在もロックオン中だ。」
ワ「わ、私は馬鹿にしていないからセーフだよ・・な?」
ヤ「ちょっと待っててくださいね。確認してきます。」
そう言うと弥生はフロントに向かって走って行った。
ヤ「ケルベロちゃんにお願いして鑑定させてもらってきました!」
ケルベロは女神Ⅲでめちゃくちゃ強かった。
ワ「偉そうにしてすみませんでした!」
ワルキューレは一瞬でフロントに行くとケルベロちゃんに土下座した。
ケ「今はお客様なので、大丈夫ですワン。」
ケルベロちゃんはにっこりとほほ笑む。今はって言ったな、今はって。
ワ「申し訳ありません!今後気を付けますのでご容赦下さい!お近づきにドラゴンの骨をどうぞ!」
ワルキューレはアイテムボックスからドラゴンの骨を取り出した。いや、ドラゴンの骨って贈り物としてどうなんだ?犬扱いして逆に怒らないか?それとも何かの素材にしろという事か?
ケ「メィルと違って馬鹿にはしていないので、気にしないでいいワン。ただ、今後は気を付けてくださいワン?」
ケルベロちゃんの尻尾がフリフリと揺れたので、うれしいようだ。よかったな、ワルキューレ。あ、骨はサーベラスにあげるのか。あれならさすがのサーベラスでも噛み砕けないようだし。俺達はケルベロちゃんと別れ、再度部屋に向かった。
ワ「ふぅ、冷や汗をかいた。風呂に入りたい。」
ワルキューレは疲れた顔で呟いている。
ヤ「私たちは当然わかりませんが、女神同士でもランクとか強さとか分からないんですか?」
ワ「ランクの高い女神様はスキルで隠ぺいしたりするので、正直スキルを持っていない見習いとかと区別がつかない。ただ、ランクの高い神は少なくとも惑星規模の管理をしているので、そもそも会う事自体ほとんど無いのだ・・。」
それに、「受付とかは見習い以下の女神がやる仕事だしな。」と付け加えた。
ヤ「私たちも、一流芸能人はテレビや雑誌とかで見るから顔も名前も分かりますけど、ちょっと売れた程度の地方芸能人は、ファンじゃない限り一般人と区別がつかないようなものですかね?」
レ「まあ、他社の社長が普通に会社を歩いていても、地位は分からないしな。」
俺達の感覚でもそんな感じだな。ただ、女神の場合は1ランク違うだけでほぼ100%勝てないだろうから、無礼な態度に怒って実力行使に出られるとアウトだろう。ただ、見習いに敬語を使ったりしてもそれはそれでなめられて後々問題にはなりそうだな・・。難しい問題だ。俺達は神にとっては感覚的に赤ん坊もいいところだから、多少無礼でもきっと赤ん坊のすることだから、と許される気がするから特に敬意を払っていない。そもそも、そこまですら気にされていないかもしれないが。
レ「とりあえず、晩飯でも食うか。」
ヤ「そうですね、私は豪勢にうなぎのかば焼きが食べたいです!」
ワ「私は疲れたので今日はこのまま失礼させてもらう・・。」
ワルキューレは、叱られて落ち込んだ新人会社員みたいに背中を丸めて103号室に入っていった。
レ「俺も今日は弥生と同じ飯にするかな。」
ケルベロちゃんに注文すると、すぐに転移で現れ、「おかもち」からおいしそうな、うなぎのかば焼きが並べられていく。いただきます!おいしくご飯を頂いた後、食器を片付けていると、メィルが「暇なので遊びに来たよ!」と急に現れた。俺達もどうせ暇なので、トランプをして過ごし、ほどほどの時間になったら解散して、はみがき、風呂を終えて寝た。
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