第7話
「むしゃむしゃ」
世の中には、マンネリズムというモノがある。
「パクパク」
同じ事を繰り返す事で、決まった話の流れを楽しむというモノだ。
「むしゃしゃ」
悪人に
「ぱくっ、ぱくぱく」
しかし、これはいかがなモノだろうか?
「あの~……?」
「何だよ、ロクスリー? 食わねぇなら、オレがオマエの分も取っちゃうぜ?」
「こらケビン! 勝手に人のモン取ったりしたらアカンねんで!」
「い…良い! 良いです! もっと
ケビンさんの、いつもの
「あの~…オイラの記憶が確かなら、朝もノリ弁でしたよね?」
「ええ、朝もノリ弁当でしたね。」
トニーさんが頷く。
「で、昨日の夜もノリ弁でしたよね?」
「ええ、昨日の夜もノリ弁でしたね。」
マカロニさんが、中指でメガネをクイッと上げながら、何を当たり前なと言わんばかりの目で言って来る。
「
「うん、ずっとノリ弁だったね。」
ユリンさんも、それがどうしたのという顔で言ってくる。
「てか、オイラとトニーさんの入隊祝いした時以外、ずっと毎食ノリ弁でしたよねッ⁉」
「ああ、ずっとノリ弁だな。で、それがどうした?」
ケビンさんが、
「ちょッ⁉ オカシイじゃないっスかッ⁉ 何で、ずっとノリ弁なんスかッ⁉ 何で、ここの食事は、ノリ弁しか出てないんスかッ⁉」
「あ~、もうグダグダ言うな! トロイメンカッツェの食事はノリ弁って決まってんだよ! ここの食事は、特別な事が無い限り、毎食ノリ弁なんだよッ‼」
なに、それッ⁉
「ミケさんが、年単位で、ノリ弁を安く仕入れてくれているのですよ。」
年単位ッ⁉
「フリーズドライで賞味期限が長く、コンパクト。解凍すれば、ふっくら柔らか。栄養バランスも考え抜かれていて、栄養満点……。」
マカロニさんが、メガネを光らせながら言っているところで、
「何より、その上、安い!」
ミケさんが、目を輝かせ、剣の舞いの時のドヤ顔に負けないくらい、ドヤッ!という顔で言って来る。
オイラが、
「大丈夫だよ、ロクスリー君! ずっとノリ弁ばっかり食べていると、他の料理の味を忘れるから、そのうち気にならなくなるよ!」
と、ユリンさんが、さもフォローの言葉掛けましたと言わんばかりのニッコリ笑顔で、そう告げるッ⁉
マジもんで、ノリ弁しか食わせない気マンマンだ、ここッ⁉
ユリンさんのトドメの言葉の後、
「よし、メシも食うたし、次の目的地のポートティリアに行く前に、もう一回、
そう言いながら、機嫌が良いのか、鼻歌を歌いながら
そのミケさんと対照的に、オイラの心は、ず~んと
そのオイラの様子を見ていたマカロニさんが、
「仕方ありませんね。とっておきの話をしましょう。」
と、切り出して来た。
「とっておきの……話…?」
オイラが、キョトンとしていると、
「実はこのソルファージュには、ミケさんがノリ弁を仕入れた時に、試しに数十個だけ買ってある幻のシャケ弁があるのですよ。」
中指でメガネをクイッと上げつつ、マカロニさんが、そう告げた。
「幻のシャケ弁ッ⁉」
「そんなモノがあったのですかッ⁉」
トニーさんも
トニーさんも、実は内心、毎食のノリ弁に嫌気が差しているのかもだね。
「トレジャーを強奪する時などに、一番活躍した人にだけ、特別に支給されるのですよ。」
と、続けるマカロニさん。
そのマカロニさんの言葉を聞いて、
「オレも、何回か食べた事があるけど、あの弁当のシャケは、すげぇ
「そうそう! ユリンちゃんも、あのシャケの美味しさは、また味わいたいなって思うね!」
ケビンさんやユリンさんたちが、幻のシャケ弁当を食べた時の美味しさ思い出した様で、ノリ弁を食べている
「オイラも食べる事ができる日が来るっスかねッ⁉」
皆さんの告げる幻のシャケ弁の、余りの美味しそうな感想に、夢を馳せつつ聞くが、
「今のままじゃムリだろうな。」
「今のままじゃムリじゃないかな?」
「今のままじゃムリでしょうね。」
「今のままでは厳しいかもしれません……。」
トニーさんも含めた四人が、同時に、否定の言葉を紡ぎ出して来る……。
「ですよね~。」
と、答えるオイラ。
うん。分かっていた。
だって、マジで、オイラ、いまのとこ、このトロイメンカッツェで、ほぼ役に立ってないモンね…。
「まあ、ラフィンスカル
マカロニさんが、中指でクイッとメガネを上げながら、そう告げる。
「でも、ミケさんはアヴァドンって呼ばれる程の超有名
「それは無いんじゃないかな? ポートティリアは、
「おお! それ良いっすね! じゃあ、思う存分、羽が伸ばせますね!」
オイラが、ユリンさんの説明に、嬉々として答えると、
「羽を伸ばす前に、ロクスリー君とトニー君には、ちょっと仕事をしてもらうんやけどね!」
「仕事っスか?
今までの、このトロイメンカッツェの
「ないない。ポートティリアは、
と、ユリンさんが、
「ロクスリー君とトニー君にしてもらうのは、日用品の買出しや!
「値切り……っスか…?」
予想外の言葉に、言いよどむオイラ。
「う…う~ん…値切りなんてやった事ないですけど、頑張ります!」
と、トニーさんが、健気に言う。
「ま、トロイメンカッツェに入ったからには、値切りは必須スキルだからな! 頑張ってくれよ、兄弟たち!」
ケビンさんが、ニッコリ笑顔で、
と、そこで、
「リーダー、ポートティリアに着きました。」
と、セリアさんが到着の
「よし、ほな、うちらは、
ミケさんの、指示で、オイラたちは、ソルファージュから出発した。
そして……。
「何とか、渡された資金内で、仕入れが
「値切りなんて自信なかったっスけど、行けたっスね!」
オイラと、トニーさんが、笑顔で、仕事の成功を称え合う。
値切りが成功し、ちょっとお茶して行く余裕すら残る感じで、仕入れが終了し、一息吐く為に、
「でも、トニーさん、凄いっスよね。対応は物静かなのに、常に強気に値下げする様に食い下がっていたっスもんね!」
そう、トニーさん、物腰は静かなのに、終始、徹底して、強気に値切りをしてくれたんだよね。
正直、オイラの出る幕なんて無かったね。
「いえ、頑張って、少しでも、ミケさんたちの役に立とうと思ったら、自然と、ああなって……。そんな、
いつも通り、
「トニーさんは、その
「いえ、そんな…。」
と、トニーさんをベタ
「そこの兄ちゃんたち。少し前に町に着た、あのデカい
と、栗色の髪で、マッシュショートベースに、仄かにナチュラルパーマを当て、サイドの髪をツーブロックにした、ツーブロックシークレットパーマの、口元が笑っているのに、目が鋭い感じの、ちょっと怖い雰囲気を持つ男の人が、声を掛けてきた。
「えと、ソルファージュの事っスかね?」
オイラが、そう聞くと、
「そうそう。
「良く分ったっスね。オイラも、こっちのトニーさんも、トロイメンカッツェに入って、3~4日ってとこっスね。」
「ほうほう。やっぱりな。じゃあだ、アンタらには、耳寄りな情報をプレゼントしちゃいたくなったね。」
「耳寄りな…」
「情報…っスか?」
唐突な話の流れに、顔を見合わせる、オイラとトニーさん。
「おっと、名乗るのが先だな。オレの名前はガス=クランプト。情報屋でね。こう見えて、色々な話に詳しいんだぜ?」
ガスさんと名乗った、その人の言葉に、
「カラミティークランプト…ッ⁉」
一瞬、大きく目を見開けて、トニーさんが、
「あ…いえ…その…情報屋さんが、ボクたちに、どんな話があるんですか?」
と、ガスさんを、少し警戒した雰囲気で、トニーさんが問いかける。
「フフ……、まあ、そう、怖い顔すんなって! ホントに耳寄りな情報なんだって!」
「ま、まあ、トニーさん。聞くだけ聞いてみるのも良いんじゃないっスかね?」
オイラが、そう
「ロクスリーさんが、そう言うなら……。情報屋さん、どんな話なのですか?」
何とか納得してくれて、ガスさんに、話の先を
「それがな、この町の北東に少し行ったところに、地下の
「地下の
「それが、どうしたんですか? そんな、町から近いところなんて、この町の
トニーさんが、いつもと違って、少し、トゲのある聞き方をする。
でも、そうだよね。そんなとこ、普通に考えたら、もうトレジャーなんて残ってないよね。そんなとこの情報が耳寄りな情報って、どういう事なんだろう?
「兄ちゃん、
ガスさんが、笑い顔ながら、目だけ鋭い感じで、続ける。
「その地下道の入り口な、最近、この町に、地震があって、その余波で、現れたみたいなんだよな! で、今まで、そんなとこは、見つからなかったし、余りに町から近いから、町の
マジでッ⁉
それって、そんな凄い状態なら、オイラ! オイラッ!
「マジっスか⁉ その
意気込んで聞くオイラ!
だって、この情報が正しければ、オイラ、
「余裕、余裕! アンタらのリーダーも、
ガスさんが、また、笑い顔で、言って来る。
これは……これは……ッ⁉
これはチャンス!
このチャンスを見逃すワケには行かない!
オイラは、幻のシャケ弁を、是が非でも味わいたいんだ!
もう、ノリ弁だけの生活は嫌なの!
「ガスさん、ありがとうっス! オイラ、さっそく行って来るっス!」
オイラが意気込んでそう言うと、
「ロクスリーさん! そんな上手い話が……」
トニーさんが、言い終わる前に、
「兄ちゃん! 早く行かないと、他の奴らに、先に
ガスさんが、笑顔で、アドバイスをくれる!
「よし! やってやる! やってやるっス! オイラはノリ弁の呪いから
「ちょッ…⁉ ロクスリーさん!」
トニーさんが、なおも何か言っているけど、気にしな~い。
超ダッシュで、ゲズ
『マスター。この選択で、本当に良いのですか? この選択は、いつにも
「良いの! オイラは、もうノリ弁だけの生活は嫌なのッ! 絶対に、
『マスターの
何とか、
しばらくの間、オイラが地下通路を探していると、
『マスター、地下通路と思われる場所を発見。ここから2時の方角に2キロです。』
「でかした、
通路を下って行き、
少し先に、ガスさんの言った通り、
外壁をグルッと周り、入り口を見つけ、
「なんて順調なのッ‼
後は
そして幻のシャケ弁は、オイラの腹と共に舌と心を満たし!
満たされた全てがオイラを
オイラの中の何かがマイレボリューション!
その時、大地は裂け、天を偉大なるシャケ弁が
それこそが新世界の天地創造の為の聖なる黙示録の大破壊!
そしてオイラこそが新世界のアダムとなる!
フハハハハハ! イブたん!(オイラの脳内彼女。推定年齢15歳。外見年齢8しゃい。)
オイラと共に、あはん、うふんで、あげな事や、そげな事を
その
オイラのメギドの炎は、黙示録の大破壊のラッパを鳴らす一歩手前!
ブルマのテカリが、
スパッツも捨てきれない、この胸のわだかまりを、スク
ネコミミなど
イブたんのエロかわいさは、世界一ィィィィィィィィッ‼」
『マスターッ!
「ハッ⁉」
「余りの嬉しさに、トリップしていたよ! でも……」
目の前の
ゲズやジーナが多目だけど、ザヌスやガトナスも居るッ!
「オイラ、パライソに到着せり! 後は、
やったよ! これで、ミケさんに報告して、全機、頂いちゃえば、幻のシャケ弁が、オイラの腹にッ!
『マスター。
「何言ってるの、
オイラの操縦で、ゲズ
ビー。ビー。ビー。
アラート音が鳴り出したッ⁉
「何⁉ 何なの⁉ このヤバ気なアラート音はッ⁉」
オイラが
『マスター、
「うぇッ⁉ 何なのッ⁉」
『この基地の
スプリガンッ⁉
父さんから聞いた事がある。
過去の時代には、今の時代以上に
で、スプリガンには、色々なバリエーションがあるみたいだけど、共通している事は、無人の
だから、トレジャーとしての価値が低いし、人間が運用するのにも向かないから、
って事は…つまり……、
『マスター! スプリガンが、特攻して来ます!』
もちろん、こうなるよねッ⁉
「マヂでッ⁉」
ちょっ、マジ勘弁なんだけどッ⁉
スプリガンの格闘戦部隊がレーザーブレードを振り回して突撃してくる⁉
「ちょッ⁉ まッ⁉」
何とか
でも、射撃戦部隊が、
「いやじゃぁぁぁーッ‼」
苦し紛れに、頭部バルカンで何とか撃ち落そうとしてみるが、何発かは落としたけど、やっぱり、オイラの腕じゃ、全部はムリだッ⁉
「死ねるかぁぁぁぁーーッ‼」
レーザーソードで切り払うなんてオイラじゃムリだ!
なら、これで!
「ウキー! できるだけ撃ち落す!」
「基地の中は、
壁に乗り上げ、天井にまで達しながら、立体的な
しかし、それでも、数発、
「あぅッ⁉ コックピットが揺れるッ⁉」
衝撃を受けつつも、何とか、
『マスター、入り口付近に機体反応多数。スプリガン部隊の増援部隊の模様です。』
目視では通路の壁に阻まれて見えないけど、入り口付近にも、スプリガンが現れたのッ⁉
「マジでッ⁉」
その増援のスプリガンが、通路の先からワラワラと現れ、先発の格闘部隊がレーザーブレードを構える⁉
「流石に、物量が違いすぎる⁉ オイラ一人じゃ、もうムリだーッ⁉」
その最悪の場面で、
「ロクスリーさんッ‼」
通信の声と共に、角の先で見えない入口方面から爆音がしたかと思うと、アウスブレンデンが、突撃して来て、オイラに
そのまま、オイラの居る基地の中程まで、アウスブレンデンが飛来する!
「と…トニーさはぁぁぁぁ~~んッ‼」
涙目で、
トニーさん、マジ、エンジェル!
「やはり、情報屋に、
冷静に分析するトニーさん。
「食わされるのは、幻のシャケ弁が良いのに‼ 幻のシャケ弁を胃に収めて! オイラは、イブたん(しつこく言うが、オイラの脳内彼女。
「誰ですか…イブたんって……ッ⁉」
トニーさんが、オイラの気合の言葉を聞き、引き気味に呟く。
その時……。
『マスター。下方より、
「マジでッ⁉ どんだけ居るのッ⁉」
「スプリガンは、徹底的にローコスト化が図られ、使い捨てとして作られています! という事は、防御力は
トニーさんが、冷静に状況を分析し、
「使い捨てで
涙をチョチョ切らせながら
「分りました。何とかします! ロクスリーさんは、当たらなくて良いので、ガトリングで
そう言いつつ、アウスブレンデンが、キャノン砲を増援のスプリガンに
「け…
何とか、
そのオイラたちの攻撃に、スプリガンたちが、次々に撃墜されて行く!
コイツら、本当に、防御は紙クズみたいに
行ける! オイラでも行けるぞ!
そう思った矢先に……。
『マスター、上方より、新たな熱源反応。
「ちょッ⁉ どんだけ居るのッ⁉」
天井に穴が開き、そこから、スプリガンが降って来るッ⁉
天井から降ってきた格闘戦用のスプリガンが、オイラのゲズ
「ロクスリーさんッ‼」
オイラに
でも、
だって、さっき上から降ってきたの合わせて、ざっと見て、50機ほど居るのよッ⁉
「ちょッ⁉ 何なの、この数ッ⁉ マジ勘弁ッ⁉」
「この数を、
トニーさんが、苦しそうに呟く。
そうこうしていると、増援のスプリガン部隊が、ミサイルを一斉に構えたッ⁉
『スプリガンのミサイル。こちらをターゲッティング。来ます!』
「ちょッ⁉」
一気にミサイルが
「ロクスリーさん!」
トニーさんのアウスブレンデンが
「死ねるかッ!」
オイラに
でもダメだッ⁉ 数が多すぎるッ⁉
撃ち落とせなかったミサイルを
「ロクスリーさんッ⁉」
トニーさんのアウスブレンデンは、何とか被弾を
そこで、入口付近から来たスプリガンのミサイル部隊が次弾を構えるッ⁉
「も…もうダメだぁぁぁッ⁉ これは死ぬッ⁉ ああぁぁぁぁッ⁉ し…死ぬ前にミケさんの魅惑の無い胸バディーに身を埋めたかったぁぁぁ‼」
その、いまわの際のオイラの叫びに、
「誰が無い胸やねんッ⁉」
角の先の入口付近から、またも爆音が轟き、純白のシルエットと、青いシルエットが、こちらに向かいつつ、前方で構えていたミサイルを装填したスプリガン部隊を、銃剣状のレーザーソードで切り払い殲滅!
そのままの勢いで、オイラたちの居る基地通路中央付近に到着‼
「じゃーん! 騎兵隊、ただいま参上!」
ケビンさんが、得意げに、そう告げる!
「ミケさはぁぁぁーん! ケビンさはぁぁぁーん!」
お二人に縋り付くオイラ。
このタイミングでの到着、マジ、ゴッド! ハラショー!
「全く…。救難信号を受けて来てみたら…。しゃあない子やなぁ君は…。
ミケさんが、そう
「なに言っているんスか⁉ ミケさんたちが来てくれたんスから、こんな無人機のスプリガンたちなんて楽勝っスよ! ここまで来たんスから、あと一歩っスよ! スプリガンを
意気込むオイラ!
こんな目の前にニンジンがぶら下がっているのに、
ここまで来たら、オイラは、絶対に、
そんなオイラに、
「君こそ、そんなボロボロでなに言うてんねん! ここは
ミケさんがトライバレルのレーザーでスプリガンを
「こ…こんな奴ら…人が乗ってないんだッ‼ こんな奴ら! オイラでもッ‼」
スプリガンたちに、レーザーガトリングを
オイラの攻撃で、どんどん破壊されていくスプリガンたち!
「ほら! こんな奴ら! オイラでも! だからオイラは!」
だけど、そこで、
『マスター、上方より、熱源接近!』
「えッ⁉」
オイラが目の前のスプリガンたちの
「ロクスリーッ⁉」
「ロクスリーさんッ⁉」
ケビンさんとトニーさんの叫び声の中、突然の急所への攻撃に、キュッと
でも、あれ?
予想していた、いつもの死ぬほど痛い感触が無い。
オイラが恐る恐る、
その腹部が、
オイラを…オイラを
「み…ミケさんッ⁉」
「雑念で無謀な戦闘しとったら…
ミケさんが、苦しげな顔で、通信をして来るッ⁉
「ミケさん! ミケさんッ‼ だ、大丈夫っスかッ⁉」
叫ぶ、オイラに、
「機体は…ちょっとヤバイけど…うちの方は…ただの軽い…
大丈夫と言うミケさんの言葉に反して、ミケさんは、とても大丈夫そうには見えない弱々しい声を出すッ⁉
「
ケビンさんが、ミケさんを見てから、
「てめぇ! ロクスリー! ぼさっとしてねぇで、
「は…ハイっス!」
ゲズ
そのタイニーダンサーを
『マスター。スプリガンのミサイル、こちらをターゲッティング。来ます!』
スプリガンのミサイルが
「やらせるかよッ‼」
そのミサイルの
「
トニーさんがグレネードランチャーを、出口付近のスプリガンに
その攻撃に、スプリガンたちが
そこに、スプリガンの格闘部隊が、最後の抵抗とばかりに、一気に、こちらに突撃して来るが、
「やらせねぇって言っているんだ! アリーエルスラスターッ‼」
アリーエルスラスターを発動したラーゼンレーヴェが、超加速で
一気にオイラを後にし、突撃してくるスプリガンを、Aトライバレルのレーザーソードで、バッサバッサと斬り払って撃墜して行く!
「出口を抜けたッ‼」
その先を、ラーゼンレーヴェが駆け、後ろから、アウスブレンデンが追って、基地を脱出した!
そして……。
何とか、ソルファージュの
そのタイニーダンサーの損傷を見て、
「り…リーダーッ⁉」
「み…ミケさんッ⁉ だ…大丈夫なのですかッ⁉」
ソルファージュ内で待機していたらしいユリンさんとマカロニさんが、
「
ケビンさんが、
「ミケさん! 直ぐに医務室に行きましょう! 一人で降りられないなら、オイラが
オイラがミケさんに、そう声を掛けると、
「うぅ…まだ眩暈…するけど…大丈夫や…。心配せんでも…一人で降りられる…。」
弱々しい
全然、大丈夫じゃないじゃないかッ⁉
「み…ミケさん‼ ミケさんッ‼ 申し訳…ないっス…。オイラ……オイラ…ッ‼」
余りの申し訳なさに、思わず、言葉が詰まるオイラ…。
「気に…せんで…ええ…。」
ミケさんが、声も絶え絶えに、でも、オイラを
でも、その姿は、余りにも痛々しい。
それから、直ぐに、医務室に向かい、セリアさんに、ミケさんを見て貰い…。
「リーダーの言う様に、
セリアさんが、そう診断した…。
「てめぇ、ロクスリー! ふざけんなよッ!
ケビンさんが、激情のまま、怒鳴りつけて来る。
何も言い返せない…。
オイラは…。本当に、今回ばかりは、
「ケビン…。ロクスリー君を…それ以上…責めたら…アカン…。失敗は…誰にでも…あるんや…。」
ケビンさんの激情の言葉を聞き、こんな苦しそうな状況なのに、なおもオイラを
「
そう吐き捨てる様に言って、ケビンさんは
「ケビンさん……。」
痛ましいまでの激情のケビンさんを、オイラは、ただ
「ケビンの気持ち…分かるな…。」
ユリンさんが、そう言って、オイラを
「今回の行動は確かに軽率でしたからね。トニー君の判断がなければ大変な事になっていたでしょうね。正直ボクも、ロクスリー君には失望しましたよ…。」
マカロニさんも、口調こそ冷静だけど、オイラを嫌悪の
「ユリン…マカロニ…ロクスリー君を…責めたら…アカン…。失敗は…誰にでもあるんや…。」
ミケさんが、
「リーダー…。」
「ミケさん…。」
その痛ましい姿に、ユリンさんも、マカロニさんも、庇ってもらったオイラも、言葉を失う。
その沈黙を破る様に、
「マカロニさん。タイニーダンサーとゲズ
トニーさんが、マカロニさんに、問う。
「ええ、2機とも、かなり酷い損傷ですから、急ピッチで修復しないとダメですね。それがどうしたんです?」
眼鏡を中指でクイッと上げながら、マカロニさんがトニーさんに、そう聞き返すと、
「そこで、提案なのですが、この機に、タイニーダンサーとゲズ
と、トニーさんが、提案して来た。
「トニーさんが、
「ロクスリーさんの今回の凶行を止められなかったのには、ボクにも責任がありますし、正直マカロニさんは、最近、働き詰めでしたから、大変だったでしょうし、マカロニさんに、たまには息抜きをして貰おうかと思いまして。」
「非常に嬉しい提案ですが、良いのですか? ボクたちの
マカロニさんが、逆に、そう問うが、
「良いんじゃないの? トニー君の整備と補給の腕は、前に見せてもらった通り、良い腕前なんだし、マカロニも、たまには休まなくちゃ。」
と、ユリンさんが、トニーさんに賛同の意見を述べる。
「トニー君は、良い子やね…。マカロニ、ご
ちょっと前よりは、少しは、
「分かりました。タイニーダンサーとゲズ
「了解です。少しでも、マカロニさんが楽を
トニーさんの、その意気込みに、
「トニー君は、本当に良い子だよね。
と、ユリンさんが、オイラを
そのユリンさんの無理からぬ言動に、胸が締め付けらる感じがして、
「あの…。ゲズ
と、
このオイラの
「まあ、そのくらいは当然よね。今回の失敗の度合いからしたら。」
「下手に弄って、
ユリンさんとマカロニさんが、
その目は、オイラを、
「ユリン! マカロニ!」
ミケさんが、お二人を、たしなめると、
「さて、ユリンちゃんも、部屋に行こうかな。」
「ボクは、タイニーダンサーとゲズ
と、ユリンさんは、
「ロクスリー君…。あんまし気にしたらあかんで…。失敗は誰にでもある…。次に同じ事をせぇへんかったら良いんや…。うちは全然気にしてへんし…。皆は、うちのことを心配してくれる余りに…ちょっと勢いが付きすぎているだけやねん…。しばらくしたら…また楽しい仲間に元通りや…。そやから…な…。」
ミケさんの、その
「…はい……。」
ただ、そう答える事しか…今のオイラには…できなかった…。
天国の父さん、母さん。
オイラは……オイラは…ッ‼
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます