第12.5話 本当に友達…?✤Side鳴穂✤
Let me introduce myself.
『私の自己紹介をします』
Hello! My name is Naruho Kawase.
『こんにちは! 私の名前は『
There're four people in my family.
『私の家族は四人家族です』
My hobby is――
『私の趣味は――
「う〜ん………」
私、
今月、私の通う中学校に新しく入ってきたALT(外国語指導補助)の先生への自己紹介文です。
はっきりいいましょう。
英語はキライですっ… (⸝⸝⸝>△<⸝⸝⸝);
しかし、なんで自己紹介文をテストに出すのでしょうか? 訳が分かりません…!
私は机に肘をつき、広げた英語の課題の進まないところを、トントンッ、とシャーペンで叩きます。
実を言うと、英語がキライなだけで、出来ない訳ではないのです。ただ、私は課題を取り組もうにも、頭の中であのことが
お姉ちゃ――姉の、川瀬 詩のことが。
☆☆☆
――それは、一昨日のことです。
私の学校では、お姉ちゃ――姉の学校よりはやく、その週の月曜日からテスト期間に入っていました。つまり、私は部活が休みとなり、いつもより早く帰ることができたのです。
そして水曜日、事件が起きました。
なんと、お姉ち――………。
………もういいや、お姉ちゃんが、とても嬉しそうに帰って来たのですっ!!
とてもですよ!? あのお姉ちゃんがですよ!? 友達が一人もいなくていつも寂しげに引き篭もってた、あのお姉ちゃんがですよ!?
最初見たときは私もとても驚きました、いつもより少し帰りが遅かったし(多分)。
私はいつもより早く帰れるので、スーパーに寄ってから帰りました。いつもはお姉ちゃんに頼んでいます。
私達の家族は、お父さん、お母さんが仕事で毎日忙しいため、夜遅くに帰ってきます。そしてお姉ちゃんも、ずっと部屋に引き篭もっていました。すると家事をするのは誰か? 私がするしかないんですね、はい。
でも、料理をすることは楽しいですし、お姉ちゃんは食事のときはとても幸せそうに「おいしい」と言ってくれるので、嫌いではありません、むしろ好きです。
ああ……話が逸れました………
ええーと………で、私の学校は徒歩で通える範囲にあるので、スーパーで買い物をして先に帰っていたんです。そしたらニコニコしていたお姉ちゃんが帰ってきたものですから、「何かいいことがあったの?」と聞きました。そしたらですよ……?
「うふふ……私を……私のことをちゃんと見てくれる人が……見つかったかもしれない……!」
なんて言ったんですよ。あのお姉ちゃんがですよ?
私は喜びましたね、中学のときに心を塞いでしまったうちのお姉ちゃんは祝福されるべきです。でも、どういった経緯でそんな人を見つけたのか聞いてみると………
「今日、私が危ない目に合っているところを、男の人が助けてくれたの!」
………それは大丈夫なのでしょうか?
はっきり言って、それを聞いたとき、私は、騙されているのでは? と思いました。
お姉ちゃんは日頃、ずっと一人でいたがために、精神が弱くなっていた様に感じます。そこに、困っているところを助けて優しく声をかけたら、精神が不安定なお姉ちゃんは嬉しくて舞い上がっちゃうのでは?
……ありえない話ではありません。
うちのお姉ちゃんはとてもかわいいです。おそらくですが、お姉ちゃんの通っている学校でもトップクラスの方でしょう。つまりは目立つのです。
もしかしたらその男の人が、私のかわいいお姉ちゃんを自分の物にしようと計画したことなのかもしれませんっ……!
おおっと、でも決めつけは良くありません。本当に善意でうちのお姉ちゃんを助けてくれたのかもしれませんし、少しは様子を見たほうが――。
「でねっ、今日その人と連絡先を交換しちゃったの!」
………ますます怪しくなってきました。
事があった当日に連絡先なんて交換するのでしょうか? 私の偏見ですけど、そんなことが出来るのは、超トップの陽キャだけだと思いますっ。
まさか……うちのお姉ちゃんはそんな『超トップな陽キャさん』に捕まってしまったのでしょうか……!?
……いえっ……まだ決まった訳ではありません………
明日もう一度様子を見ることにしましょう……!
――翌日。
バタァーンッ!
「……やっ、やったよ鳴穂ぉーー!」
「わぁ!? ……びっくりしたぁ……」
「あっ……! ごめん……! つい……」
私の部屋に勢いよく飛び込んできたお姉ちゃん。私はそのとき丁度勉強に集中していたので、勢いよく開かれた扉にびっくりしたのです。
「ううん、大丈夫………で、どうしたのお姉ちゃん?」
「あっ、聞いてよっ! 今日ね、私にね………うふふっ♪」
「もーぉー、なぁーにー?」
「私にね、『友達』が出来たのっ!!」
「えっ! ………それって昨日言ってた人……?」
「うんっ、そうっ!」
………なんだか嫌な予感しかしません……
私の直感が警報を鳴らしています。
テンポが……早すぎるのでは……?
私は思わず時計を見ます。お姉ちゃんの帰りは昨日より遅かったです。
もしかして……日が経つにつれて帰る時間が遅くなり、最終的には一晩二晩帰って来なくなるのでは………!?
それは良くありませんっ……! その男の人から私のお姉ちゃんを遠ざけないと……!
そして、私がお姉ちゃんに自分の考えを伝えると、お姉ちゃんが怒って、「十坂くんはそんな人じゃありません!」と言ってきたので、私もつい「お姉ちゃんは騙されているだよ!」と怒鳴ってしまいました。久しぶりの喧嘩です。
しかし、これは困りました。お姉ちゃんはその『十坂くん』という人をかなり信用している様子。何か……何か打つ手は…………はっ! そうだ!
お姉ちゃんの弁当にご飯だけ詰めて真っ白にして、その『十坂くん』とやらを失望させよう!
お姉ちゃんはどうやら明日、その人とお昼を一緒にするようです。これなら行けるはず……!
私のお姉ちゃんは、変な男の人には渡しません……!!
☆☆☆
「ただいまぁ〜」
「はっ……!」
私は気づいたら眠っていたらしく、机に広げた英語の課題の上で突っ伏していました。
下から聞こえたお姉ちゃんの声で目が覚めた私はすぐに時計に目を――えっ!? もう八時になる!?
私は思わず自分の部屋から飛び出し、階段をドタドタッ、と駆け下り、玄関へと向かいました。
「お姉ちゃん!?」
「あっ、ただいまぁ鳴穂ー」
お姉ちゃんは何事も無かったかのように普通にリビングに向かおうとします。
「あっ、まって! まだ晩御飯の準備してない!」
「あれ? そうなの? …………あっ、ちょっと鳴穂っ、私のお弁当真っ白だったんだけどっ!」
「そっ、そうっ! そのこと! い、いやー、寝ぼけて白ご飯だけ詰めちゃってさーー!」
私は咄嗟に誤魔化します。
「あっ、そーだったんだ………そっか、じゃあ今回は許してあげる! ………うふふ♪」
「……?」
何故か嬉しそうに笑うお姉ちゃん。何かまた良いことでもあったのでしょか?
「また何か良いことあったの?」
「あっ、それがね、聞いてよぉ〜!」
――そして、お姉ちゃんはとんでもないことを口にしたのです。
「私、明日、十坂くんの家で勉強会をすることになったの!!」
「………」
………これは、私が出るしかないようですっ!!
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