クズと歯車⑦
昼休みになり、5人は再び川原田教諭に呼び出された。 だが悪沢だけは、そこに姿を見せていない。 他のメンバーもそれを見て“自分も来なければよかった”と思ったが、もう遅い。
集まってから抜け出すと、首輪のこともあり行動を起こすことができなかった。
歌災「あれ、悪沢くんは?」
延力「知らね。 どうせアイツのことだから、面倒でバックれたんだろ」
華月「あーあ。 どうしてこんなメンバーに俺までも・・・」
延力「あぁ!? こんなメンバーって何だよ! 俺に喧嘩売ってんのか!?」
川原田「はいはい、喧嘩すんなよー。 話があるから、大人しく席に着け」
先生は悪沢を引っ張りながら入ってきた。 嫌がっているところを見ると、無理にでも連れてこられたのだろう。
川原田「次に悪沢みたいに輪を乱す奴がいたら、首輪を即爆破するからな?」
悪沢を投げるように離し、言った台詞に全体の緊張感が急速に高まった。
川原田「で、どうだ? 午前中を過ごしてみて、ちゃんと反省し自分を改善したっていう奴はいるか?」
華月「はいはーい! 俺は改善しました! みんなと仲よくできたし!」
先生「嘘をつけ。 その言葉自体が直っていない証拠だろ。 お前らいいのかぁ? このまま永久に、学校で過ごすことになるぞ」
延力「仕方ねぇなぁ。 俺以外の奴ら4人が改善したっていうなら、俺も自分を直してやるよ」
悪沢「はぁ? 何でお前基準になってんだよ」
延力「そんなの当たり前じゃんか。 俺が一番正しい、俺がトップなんだから」
悪沢「何がトップだ! クラスの奴らはお前の力に怯えて、大人しく下に付いているだけだぞ!」
延力「何だよその言いがかり。 お前だって、常に人の悪口を言っているじゃねぇか! だからお前には人が寄ってこないんだよ!」
華月「まぁまぁ二人共。 落ち着いて、落ち着いて」
悪沢「そういう華月はどうなんだ?」
華月「え、俺?」
悪沢「あぁ。 『自分以外の4人が改善したら、自分も直す』だぞ? コイツ基準で決められる気分はどうなんだ!」
華月「あー、俺は別に、どっちでも・・・」
悪沢「はぁ? お前、優柔不断過ぎ。 特に自分の意見も持たないなら、止めに入んなよ」
延力「さっきから黙っている浅取はどうだ? 俺の意見に賛成だろ?」
浅取「・・・」
悪沢「ソイツに聞いても無駄無駄。 つか、いつも物静かな浅取がどうしてこの中にいるのかもよく分かんねぇし」
歌災「あ、言われてみれば本当だ。 浅取くんはどこが問題なの?」
浅取「・・・」
延力「おい、黙っていないで何とか言えよ!」
川原田「あー、いったん静まれ、お前ら。 もういい、お前らに直す気がないっていうことはよく分かった」
延力「おう、じゃあもう諦めてこの首輪を外してくれ」
川原田「それは駄目だな。 俺が分かったことは、今日お前らは家に帰れないっていうことだけだから」
延力「はぁ!? まだそんなくだらねぇことを言ってんのか!」
川原田「とりあえず解散だ、お前らを一緒にさせたら悪いことしか起きない。 残りの昼休みはまだたっぷりある。 そして放課後までは残り約三時間。
この時間をどうやって使うのか、自分たちでちゃんと考えろ」
そう言って川原田は、5人を部屋の外へと追い出した。
「まぁ、こうなることは分かっていたけどな・・・。 ここまで酷いとは思わなかった」
誰もいなくなった部屋で一人呟くと、入れ違いで一人の男子生徒が入ってくる。 川原田はそれを見てニヤリと笑った。
「先生、僕をお呼びですか?」
「あぁ。 軽崎、お前にはこれを渡しておく」
そう言って、とある資料を軽崎に手渡した。
「これは・・・?」
「適当に目を通しておいてくれ。 じゃあ、あとはお前に任せたぞ」
「・・・?」
軽崎は首を捻り、川原田は部屋を後にした。 それに続いて軽崎も部屋を出た。 廊下を歩きながら、資料に目を通す。
「わぁ、何これ・・・ッ! めっちゃ面白い! 早く誰かに伝えたいなぁ。 誰から教えよう?」
廊下を見渡すと、他クラスの人間と楽しそうに話している華月の姿が目に留まる。
「そうだ。 華月くんからにしよう!」
そう言って駆けていく軽埼の顔は、邪悪な笑みに歪んでいた。
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