【オンライン】376.5話【閑話】:敵国の現状
「ははは、奴等は無能が多いのか? こちらの思惑通りに事が運ぶのう」
「我々を裏切った者達が如何に愚かだったのかと思い知らせてやりましょう」
下品な高笑いをしながら小太りな王子と側近が楽しそうに茶会を開いている。
「俺様達に従わず、生意気にも反撃してきた者達は何処のモノだったか?」
「グランスコートという町の者達ですね」
「ほう、どんな者が纏めておるのだ?」
「確か、美しい姉妹という話ですね」
「姉妹? 女子が町のトップなのか? それに美しいと……ほう、容姿なんかは分からんのか? 姿写しの魔道具があったであろう。美しいと言われるくらいなのだ、俺様に相応しい者達かもしれんな。誰でも良い撮影をしてくるのだ」
最初に声を掛けたが誰もが戸惑いの表情を浮かべていた。ワザとらしく大きな溜息を吐き出しながら、一番近くに居た者を呼んで汚い字で書いた紙を兵士に渡す。
「お前が行ってこい」
「は? 私が、でございますか?」
「そうだ、二度も言わせるな馬鹿者め」
「申し訳ございません……」
「ふん、まぁよい。その紙を管理番に見せて必要な道具を持って行って、任務を遂行せよ。出来るなら姉妹共を連れてきても良いぞ」
兵士は戸惑いながらも、紙を手にして深く頭を下げながら一歩下がる。
「任務、承りました」
「さっさと行け」
頭を下げたままで、後ろに下がって足早にその場を去っていく。
王子達から離れた兵士が蔭に移動し、一息ついていると音も無く影が近付いてきた。
「ふぅ、ったく普通は気付くもんだと思うがねぇ」
「あの人達に取って周りにいる人達はモノという認識ですからね」
「しかし、護衛騎士は特別に選ばれた者が就くだろう普通は……兵士の衣装で近付いたのに全く気付いてなかったぞ。それで良く国とトップだと言えるな」
呆れながらも、兵士は楽しそうに笑った。
「既に周りの騎士達は掌握済みだと気付いても居ないのですから、その程度なのでは?」
陰で二人が楽しそうに話していると、また別の方からメイドさんが近付いてきた。
建物の端で仕事をサボっている風を装いながら、壁に寄り掛かる。
「まぁ、本命は傀儡の方じゃないから良いですけどね。おふざけで作戦を台無しにしないでくださいよ。姿写しはどうしますか? 協力を申し出ても良いと思いますが……」
忍び装飾の男が上から現れ、三人に声を掛ける。
「向こうさんはソレを見越してるのか、良い余興を用意してくれているようだぞ」
忍び装飾の男が小さく丸められた紙を二人に渡す。
そこにはスノー達が企画している公演の写しが書かれている。
「全くこっちのバカ王子と交換して欲しいわね。でも、良い様にされているって聞いたんだけど、そっちの噂はどういう事なのよ?」
「叔母達の作戦を悉く潰していたはずだったよな?」
「正直、向こうの大将さんは頭の中がおかしいぜ。本当に子供かってレベルだ、上手いことエサを目の前にぶらつかせて、良い様に誘導してるんだからな。気を抜いてると俺達も食われるから気を付けるんだな。俺から言わせりゃあバケモンだぜありゃ。まだ子供だぞ」
陰は顔色を変えずに喋っているが、若干の恐怖が見え隠れする。
「君がそうまで言うか……何ともまぁ頼もしいねぇ」
「ふ~ん、面白そうな子なのね。早く会ってみたい」
「すぐに会えると思うぜ。それとだ、向こうさんからプレゼントもあるぜ」
密書を兵士に投げ渡すと、すぐに消えてしまった。
「これはまた……大きな借りをつくっちゃったね~」
「頭が最近になって楽しそうにしている原因はコレですか……はぁ、仕事が増えそう」
「本当にすぐ会えちゃいそうね。捕虜は殆ど私達の味方になって帰って来るなんて」
「まぁ、大門は彼女達自身で開けてもらわなくちゃならないが、心配は要らなそうだな」
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