【オンライン】377話:魅了とは敵も味方も虜にしてこそ④
集中して姉さんの指導の下で練習していると、何時の間にか時間が経ってしまっていた。
もうすぐ休憩に入らないといけない時間なんだけど、もうちょっと練習をしていたい。中途半端な所で終わってしまうし、別に何処かに冒険に行くわけじゃあない。だから大丈夫かなっと思っていたのだが、ティフォと姉さんにコツンとオデコに小突かれて注意された。
「まったく我が妹は集中してると本当にダメね」
「好きな事をしている時なんて特に顕著だぞ。しっかり見てやらないと限界までやろうとするんだから,
まったく困ったもんだぜ」
「そういう兄ぃだって同じでしょう。今回は音姉が一緒だし女の子みたいな歌い方を要求されているから、早くに逃げ出したいだけでしょう」
スズメちゃんに鋭いツッコミを入れられて、言葉に詰まった様に黙り込んだ。
余計な事を言うなとスズメちゃんを睨んでいるけど、ティフォの方を見ることはない。口笛を吹きながら知らんぷりで僕の方へと寄ってきて、僕を盾にする。
「助けてスノー先輩~」
「そこでスノーの陰に隠れるんじゃねぇよ」
「ふふん、別に良いじゃん。私は本当の事を言ってるだけだもんね~」
スズメちゃんはべ~っと小さく舌だし、ティフォを揶揄っている。
お互いに何時もの冗談という感じでふざけ合っているのは分かるのだが、なぜ何時も僕を巻き込むのか不思議でしょうがない。
二人が僕の周りで鬼ごっこをしていると、姉さんが少し呆れた様子で近付いてきた。
「こ~ら、仲が良いのは分かったから兄妹喧嘩は後にして頂戴ね。早く休憩して続きを始めましょう、まだ個人練習しかしてないから、今日中には通しで皆と合わせたいのよ」
練習の御蔭か、ちょっとしたスキルを取得できたし、それに合わせてスキルの組み合わせで生まれたギアなんかも所得出来ている。風の魔法なんて使い過ぎたせいか便利なギアを使えるようになっている。
僕の場合は音を届ける為に使用してただけだから、音爆弾的な使い方なんかも出来るようになったし、ハープなら弾けるようになった曲なら、楽器二つを同時に操れる。
そこに目を付けた姉さんが目を輝かせてお願いしてきた。
すごい勢いで断り切れず、僕のやる事が倍に増えてしまったのだ。
〈別に戦わないから大丈夫じゃないの?〉
「戦いはなくともパフォーマンスは平均以下になるわよ。上手く出来なくなってストレスが溜まるだけだから止めときなさい。それに、こういう時はしかっり休みむ事も大事よ」
昔から姉さんに優しく撫でられながら諭される様に言われると、弱いんだよな。
〈分かったよ、じゃあ次は皆で通してやってみよう〉
「シャープさんは休まなくて良いの?」
サクラちゃんが聞くと、少し意味深に微笑んだ。
「大丈夫よ。すぐに休むしからね。でも最後に色々と確認しておきたい事と仕掛けなんかも話し合いたいから、そっちが優先ってだけよ」
ただ話し合いをするだけならば、確かに問題はないね。
〈仕掛けって?〉
「別にスノー達の邪魔はしないから大丈夫よ。こっちの事だし公演についての盛り上げる演出って感じだから……ほら、問題ないでしょう」
僕が少し疑いの目を向けている事から、説明をしてくれた。
邪魔にならないなら、問題はなさそうなんだけど……何か引か借りを覚える。
「まぁ良いじゃんか、後で分かるだろう。こっちの作戦には問題ないんだし大丈夫だろう」
ティフォは何時もそういって油断しているから、姉さんの手の平で踊る事になるんだと少しは学習しても良いと思うんだけどな。
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