【オンライン】361話:敵の一手、僕等の一手⑤
「そんなに頭を抱える事かのう?」
〈これが分かり易く敵を倒せば良いってだけなら悩みませんよ〉
知ってしまった以上、慎重に動かないと後々に痛い目にあうのは僕等だ。
〈一つ聞いて良いですかね〉
「はっ! なんなりとお聞きください」
一番前で土下座しながらハキハキと答えてくれる人に同意という感じで、後ろに控えている者達も頭を擦り付ける様にして、何も言わず、少しだけ頷く動作をしている。
ただ一人を除いて、だけどね。後ろの方に隠れているけど。多分、あの人が本当の筆頭さんだと思う。皆に動きを合わせているけど、終始、僕等全体を観察しているみたいだ。
《シュネー、一番後ろの人を警戒しておいてね》
《りょうか~い。ティフォナん達にも伝えておく?》
《お願い、僕はこの人達から情報を聞いてるからさ。ただ、バレない様に気を付けてね》
個人チャットでやり取りして、あんまり後ろにいるリーダーさんに気付かれない様に気を付けながら、意識しない様にしないとね。
〈えっとですね、貴方の王様は戦いを好む人ですか?〉
「いえ、そんな方ではありません……ですが、弱者は要らないという感じでして、その、相手を試す事をしばしば」
「それは、戦いを好むヤツという事で良いのか? 表現が曖昧ではこちらも困るのう」
エーコーさんが少し脅しをかけるよに圧を掛けながら言う。
何時の間に僕の隣に来てたんだろう。神出鬼没なんだから。
「強者との戦いは好みます。しかし、戦争が好きかと言うのであれば、それは違います」
だそうだという感じで、エーコーさんが僕をチラッと見る。
確かに助かったけどね、もうちょっと普通に表れてほしい。
「拙者らの事を試す為に色々と仕掛けたと?」
「ズナミ殿を利用してか? 随分と酷いのではないか?」
今度はミスユ団長が物凄い殺気を捕虜たちに飛ばしている。
「そ、それには我々は関与しておりません。誓って我が王ではございません」
元々の作戦は……多分、内部分裂を計ってから僕等の出方次第で乗っ取る気ではいたんだろう。でも、その最中に娘である座敷童ちゃんが何者かに攫われしまって、それどころじゃあなくなったんだろう。
〈僕等の話だけじゃあ信用も無いだろうし、状況をもっとちゃんと把握したいから一人……そうだな、貴方で良いです。ついて来てください〉
ニコッとワザとらしく見回して笑いながら、リーダーらしき人を指差して指名する。
「そ、その者では……」
「お主が決める事ではなかろう? なぜ貴様が口を出すのだ?」
「も、申し訳ございません」
この人の反応は、リーダーを守りたいが為か……あるいは、面倒な事を仕出かしている奴等のお仲間なのか、調べる必要性が増したな。
〈ついて来てくれますよね〉
「御意に」
あまり感情を見せる事無く、変わらぬ顔で只々頭を垂れている。
特に引っ張る事もなく、大人しく僕等の後ろをついて来てくれる。
〈ミスユ団長、エーコーさん。この人に何か変なのってついてたりしてないかな?〉
「少し待つのじゃ……っと」
急にミスユ団長が捕虜に向かって襲い掛かった。
「――ぐぁ⁉」
「取れたぞ。これ以外はおかしなものはないのう」
エーコーさんが吹っ飛ばされた捕虜さんに近付くと、ないか黒いミミズみたいなモノを引っぺがして、瞬時に燃やして浄化した。
「ほれ、起きぬか」
「はぁはぁ――手荒な歓迎ですね。しかし、助かりました」
さっきまでの感じとは少し違って、嬉しそうに微笑んでいる。
「あの気持ち悪いのって、なんだったんだ?」
ティフォが気になってエーコーさんの手元を心配そうに見るが、もう何もない。
「のぞき見が好きな奴が使う呪術じゃな」
「はい、その通りですが……よくお気付きになりましたね」
「匂いには敏感じゃからな」
〈それで、貴方はこの子について知っていますよね〉
「はっ、先ほどの奴が言っていた通りなのですが、少し嘘が混じっております」
あの人も敵側なんだ……うわぁ~、ややこしい感じの権力争い起きてそう。
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