【オンライン】348話:繋がったイベント④




 町並みは少し特殊だったけれど、基本的には僕等と変わりなく普通に生活している。水飲み場もあるし、トイレだって普通に設置されている。


 服は特殊な効果が宿っているモノで、霊が触って着れば衣服が霊体の着用になると言うモノだった。これにはケリアさんが物凄く食いついて見ていた、後で衣服を作っている職人さんに話を聞きたいと、店員さんと話もつけていた。


 此処での灯りはやはり、光っている水晶だった。それを加工して色んな形で室内を照らしていた。壁に線を引いた感じで照らしていたり、照明の様に球体にして天井から吊り下げられていたりと、人によって工夫の仕方は其々だった。


『ここが我が家さ。良い外観だろう』


 魔法使いのお屋敷という感じだろうか、光の結晶も淡い光にして屋根の色や壁の色なんかで其々の色を変えている。第一印象としては、乙女チックで可愛らしい感じだった。


『旦那がね、アタシの趣味に合わせて作ってくれたんだよ。流石だろう』


〈シア姉の好みなんだ。可愛らしいお屋敷ですね〉


「シア姉にピッタリだね~。魔法使いっぽい感じだけど。旦那さんは魔法使い?」


 シュネーはそう言いながら家の周り全体を見回して、すぐに戻って来た。


『良く解ったね。そうさ、アタシの旦那は魔法使いさね。凄い魔法使いでね――』


 自慢するように胸を張って、自分の旦那がいかに凄いかという惚気話が始まってしまい、それにしばらく付き合いながら、屋敷の中へと案内されていく。


『お帰りなさいませ、奥様』

『あぁ、ただいま。旦那を呼んで来てもらえるかい、望んでいた客を連れて来たってね』


 幽霊メイドさんが少し驚いた様子で僕等の方をチラ見していた。


『では、彼等が話しにあった方々なのですか⁉』

『あぁそうさ。嘘じゃあなかっただろう』

『はい、申し訳ございませんでした』

『良いさ、アタシは此処じゃあまだまだ新人みたいなもんだしね』

『それでは、少々お待ちください。すぐに呼んでまいります』


 幽霊メイドさんが深々とお辞儀して、三歩ぐらい歩いたら消えてしまった。

 霧状になって消えたのに、僕等全員が驚いてしまう。


『悪いね、アタシ等の癖でさ、あの移動の方が早いんだよ』


 青い霧状になっている状態だと薄い壁なんかはすり抜けて行けるらしい。


「随分と広いでござるな」

「エーコーさん所の構造と同じなんじゃないか?」

「流石は魔術師さんって事かしらね。光の結晶を触媒にして青い炎がまた良い感じ」


 所何処に本が積まれていたり、薬草のプランターっぽいものまである。


『あっちは書斎だよ、とりあえずは客間で待機だね』


 シア姉が先導して客間の方へと案内してくれる。


『奥様、お飲み物のは何が宜しでしょう』


 こういう場所に住んでいるからといってもシア姉の言葉遣いは普段と変わらずだ。


「幽霊っていっても、飲み物とかも俺達と変わらずってところか」

「元々は人? だから当たり前なのかも?」


「普通に私達が装備できる様なモノまであったものね。なんか不思議な力はついてそうだけど、何かしらに使えそうではあったね」


 アクセサリーなんかは、正気耐性やら魔法関係の防御力アップに繋がるモノが多かった。小さい魔物達もペットとして飼われているみたいで、基本的に洞窟内に住まうモンスターを飼っているようだ。コウモリやモグラなんかが町中を闊歩していた。


〈食べ物も、普通に美味しいね〉


「見た目はちょっとお菓子っぽいけどね」

「こっちはグミみたいなモノね、味も似た感じよ」


『それは旦那がアタシの為に開発してくれたお菓子だよ。良いだろう――』


 ケリアさんがしまったという顔をしたが、既に遅かったようで旦那さんの惚気話が再開されてしまった。止められる者は誰も居ない。






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