【オンライン】349話:繋がったイベント⑤




『遅れてすまない、客の前に出るにはちょっとばかり失礼な格好だったからね』

 綺麗な魔導士のローブを着た小さめの男性が紳士の礼でお辞儀をしてくれる。


〈スノーです、一応はグランスコートの首領という感じになってます〉


「ボクはシュネーっていうの、よろしくね」


 僕等に続いて皆は其々に自己紹介をして、改めて全員が席に着いた。


『私はファダマと、新たに名乗っている。妻であるバシアが世話になった礼も兼ねて、キミ達とは友好的な関係を気付いて行けたらと思っている』


〈あ、ありがとうございます〉


 こういう時の挨拶って良く解らないんだよね。成り行きでなっているけれど、慣れないな。ファダマさんは気にしない人みたいだから良いけど、気を付けておかないと不味いのかな。


 もう一つの都市国家にだって、何時かは挨拶に行かないといけないんだし。


『どうかしたのかい? 気を楽にしてくれて良いよ。正直に言ってしまうと、私だって礼儀作法に自信がある訳じゃあないんだからね』


『アタシの旦那だよ。細かい事を気にするタイプじゃないよ。研究以外ではって付くがね、自分が興味ある研究には本当に細かいからねぇ』


 シア姉は呆れながら言ってはいるが、言葉には自慢っぽい感じで凄いんだと主張したい所を必死に抑えている様にも見える。


「え~っと、それで俺らと会いたいみないな事をバシアさんから聞いたんですけど」


 ティフォが不味いと思ったのか、シア姉が旦那自慢を始める前に話を進めようとする。


『あぁ、スノーさんに是非とも協力を頼みたくってね。もちろんタダでとは言わない、此処は鉱山として、良い金属が取れる事は保証する。その金属や石なんかを融通する事を約束するから、森の主である方との繋ぎを頼みたいのだ』


〈それはまぁ、構いませんよ。こちらとしても助かるので……一度、話しを持ち帰ってから、話しを振ってみようと思います〉


 僕がそいう言うと、ファダマさんは少しだけほっとした表情をして、僕に微笑む。


『ありがとう、色々と代用は出来ても、やはり木材や魔法の材料に使う魔木が手に入らなくてね、途方に暮れていた所に、バシアと繋がる事が出来て話を君達の話を聞いたんだ』


 最近になって急激に発展していったグランスコートの噂に、ハロウィンイベントで知り合った人達から、話しを聞いてすぐに幽霊達が情報収集の為に動き始めたらしい。


 魔石なんかで代用は出来る部分はあるけれど、やはり石だけで作ったモノでは、扱いが難しい上に感覚的にも安らぎを得られにくいんだそうだ。


「鉄や魔石は腐るほどあっても、その他の材料が手に入らないのねぇ。それは確かに辛いわね……霊体っていうけど、それってモンスター化してるのと同じ感じって事かしら?」


『その認識で間違いないですね。僕等はどうも朝日が苦手でしてね。夜に畑仕事をするにしても、この辺では耕せる土地も無く、開墾するにしても、地上で力を振るえるのはバシアくらいなモノでしてね。夜の内でしたら、それなりに力は振るえますが……すぐに息切れを起こすので、効率も悪いんですよ』


 頑張った所で、洞窟の外に住む魔物達によって、すぐに畑は荒らされて作物は駄目にされるし、綿なんかの植物もダメにされてしまう。


 手を打つにも、地上で長時間活動出来るのはシア姉一人だけ。

 これじゃあ確かにやるだけ無駄になってしまうだろう。


〈此処までの道も作るつもりでしたから、交易は出来ると思いますよ。情報はまだ制限しつつですが、信頼できる人達をこの場所に招いても構いませんか?〉


『えぇ! よろしくお願いしたい。私は魔法の事なら話せるんですがね……ああぁそうだ、スノーさんの住む場所に転移門を繋げる事も出来ますよ。ただ、少し特殊な場所が必要ですがね、そういった場所があれば此処までの行き来も楽になりますよ』


 そう言われてすぐにエーコーさんの作ったツリーハウスの事を思い出した。





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