【オンライン】308話:勝負と試合と勝敗の価値(17)




 僕等が牧場に到着すると、すぐにフー先輩が駆け寄ってくる。


「あらあら、いらっしゃい二人共。結構順調に人は来てるわよ」


 そう言いながらもフー先輩は、牽制とばかりに僕とティフォの間に割って入ってくるようにして、なんとか距離を離そうとしてくる。


 相変わらず抜け目のない人だ。

 ただ僕を警戒しても本当に意味は無いっていうのに、未だに警戒してくるんだよね。


「少し計画の変更と、その為には食事が出来る場所を作ろうって事になってな。だからその分のスペース決めとか、サーカス団の人達に話しておかないと不味いだろうって、な」


 大体はティフォが言いたい事を言ってくれたので、僕はただ頷くだけで良い。

 チラッとフー先輩が視線だけ向けて、嫉妬の殺気を向けて来た。


「だからねスノーって無意識にティフォなんと視線だけだったり、通じ合ってる的なやり取りをし過ぎなんだって。そりゃあ最大で警戒対象からは外れないよ」


 気持ちは良く解ると言うような言い方で、フー先輩の事を見ながら何度も頷いている。


〈何でシュネーが分かるの?〉


 ちょっと半目になってシュネーを見る。


「そりゃあスノーよりお姉さんだからね。音姉様には及ばないけれど、姉妹の中で一番に精神的に幼いのは、やっぱりスノーなんだよ」


 肩の上で得意げになって胸を突き出してくる。

 少しイラッとした僕はシュネーを突いて、僕の肩から落としてやる。


「わわぁ、もうスノーってば拗ねないでよね」


 ビックリして転げ落ちたが、すぐに飛び上がって今度は頭の上に乗って来た。


「ほれ、遊んでないで行くぞ」


 人が多いからか、ティフォが手を繋いで引っ張って歩き出した。


「はぁ、そういう優しい所が好きではあるんだけどね」


 反対側ではしっかりとフー先輩が腕に抱き着いているので、利き手じゃない左手でぎこちないながらも、しっかりと引っ張ってくれている。


 僕の歩幅にも合わせて、あんまり走らない速度で移動してくれるあたり、流石はティフォだなって思うよ。女の子の扱いには慣れてらっしゃることで何よりですね。


「ねぇスノーさ、なんか不機嫌になってない?」


〈なってませんよ。こういう時にティフォが男の子だって感じる様になったなって思っただけだしね。ちょっと男だった時の自分と比べて嫉妬しただけだし〉


「なるほどね~」


 シュネーと二人で喋っていると、何時の間にか目的の場所に付いて居た。


「この辺でどうかしら、ちょっと色々と片付けたり整地しないと使えない場所なんだけど」


 大岩や廃材が多く転がっている場所だった。


〈此処なら、ズナミ達の演舞も見れる距離かな?〉


「そうだな。なるほどね、こっちを見えない様にする為にあの幕で区切ってた訳ね」


「えぇ、だってみっともないから。ただし、あの人達の公演を見ながらってなると、魔法かアイテムで結界を張っておかないとダメね。こっちまで被害が及ぶ可能性があるから」


 フー先輩がそう言いながら、指を指した先には所々に焦げた後だったり、何かが破裂したような跡がちらほらと見える。


〈その部分が、まだ未完成だって言ってたポイントって事だね〉


「そうだな、その部分も検討しないとダメだな」




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