【オンライン】295話:勝負と試合と勝敗の価値(5)
「よう嬢ちゃん。オメェさんのせいで色々と仕事が増えたが、大方の準備は出来て来たぜ。後は弟子たちが総出で組み立てれば、舞台は完成するだろうさ」
あんまり寝れていない様子のボウガさんは、トワちゃんに支えられながらやってきた。
その後ろにはケリアさんも居る。
「見て見て、新しい衣装が出来たのよ~。しかも今回の作品は秘密の機能付きよ~」
右手には動きやすさを重視しながらも、和服のイメージを崩さないようなデザインの着物。
僕の背丈にピッタリな衣装が一つ。
左手にはチャイナドレスを持っている。
丁度、ティフォに合いそうな服のサイズなのは気のせいじゃあないだろう。
「け、ケリアさん……その手に持っているの物は、誰に着させるつもりですか?」
同じことを言いたかった僕もティフォの言葉に続く様に、何度か頷く。
少しだけ震えた声でティフォが聞くと、キョトンとした表情で僕とティフォを見て「何を聞いているの」と言いたげの目で見られてしまう。
「もう貴方達の衣装に決まってるじゃない。他の人達にも其々違う衣装を用意しているわよ、もちろんサーカス団の人達の分も作ってあるから、安心して頂戴ね」
ニッコリと微笑み、ウィンクしながら服を強引に手渡された。
「自分ノ分もアルのか? ありガとウ」
「当たり前よ。貴方達ってば自分の服装に無頓着なんですもの」
ケリアさんが文句を言いながらも、ウキウキとした感じで何着かのセット衣装をズナミに渡していく。その中には下着みたいな服や、寝間着などもある。
「作業着やら、普段着なんかは貴方達の家に送っておくから、少しは着替えるのよ」
「仲間を代表シ、改めテ感謝すル、ケリア」
深々と頭を下げて、紳士的なお辞儀をしていた。
「後はお風呂とか?」
「あら、温泉なら私の牧場で湧いてるから、そっちで入れば良いんじゃないかしら。ちゃ~んと着替えの個室もあるし、好きに使って良いわ。使い方は後で教えるから、しっかりと皆に言い聞かせてちょうだい、最低限のマナーを守ってね」
〈何時の間にそんなモノを造ったんですか?〉
前に来た時はそこまで作っていなかったはずなのに、温泉なんて作っちゃったんだ。
「あら知らないのね。温泉で洗って上げると、モンスターのストレスや清潔度が上がって、成長だってしやすくなるの。それに、モフモフの感触だって最高に良くなるんだから。匂いだって良い匂いがした方が良いでしょう。臭いのは嫌じゃない」
確かにそうだけど、やけに色々と詳しくなっている気がする。
「その情報は何処から出て来たんだな?」
ガウがジト目でフー先輩を睨むけど、特に気にした様子もなく軽く答えてくれる。
「カミルちゃんよ~。色々と為になる事を教えて貰ったの」
いったいフー先輩に何を吹き込んだんだろう。
ホームの改築が終わったら問い詰めてみよう。
「スノー嬢~、今回は出店よりも、歩き販売で回ろうかと思うんだがどうだろう」
「野球場とかで駅弁を売ってる感じでさ、色んな所を回りながら売ろうって話が上がっててな、面白そうだからそっちの方向で話を進めて良いだろうか」
「売るモノは、飲み物からお弁当にお菓子なんかも、其々の得意分野で挑もうって感じだ」
露店三人組の人達もやってきた。
その後ろにはグランスコートに拠点を置くプレイヤーさん達も続いて来ていた。
〈良いんじゃないですかね、色々とやってみましょう――〉
そうやって話し合っていると、すぐに一日が経過してミスユ団長と妖怪達が並んで僕の前に勢ぞろいしていた。
「話し合いの結果、童達はスノー……御前に下ろうという事でまとまった」
ミスユ団長がそう言うと、妖怪達が一斉に跪いて頭を下げる。
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