【オンライン】294話:勝負と試合と勝敗の価値(4)




「良かったのかよ、あんなことを言っちまってさ」


 牧場の色々な場所で練習をしていたサーカスメンバーを集めて、ミスユ団長達は仮設テントの方へと向かって行った。


〈わかんない。まぁでも、妖怪さん達が此処に住んでくれるなら、それはそれでメリットもあるし、こちらとしては得でしかないかな〉


「もしかしてスノー姫。そういう事を込みで話をすすめていたのでござるか?」


〈ち、違うよ。お姉ちゃんが出てくるなんて知らなかったし! 偶々だからね〉


「でもさ~、スノーは別に負けたら負けで、彼女達を取り込むって考えは元から考えていたんじゃあないの~。ミスユ団長達との関係は良好から信頼関係まで持ってってさ、ズナミんとくっ付けちゃえば、自然とサーカス団の大多数は残ってくれそうだもんね」


 確かに考えていなかったと言えば噓になる。


 シュネーに思っていた事を全部言われてしまい、気まずくなって全員の視線から逃れる様に目を逸らせてしまった。


「はぁ、お前なぁ~。あのテントは彼女等にとっては家だぞ。取り上げられて良い気はしないだろうが、そういう所は少しは考えてたか?」


 あの便利なサーカステントが無くなったとしても、サーカス団自体が残ってくれるのであれば、後はどうとでもなりそうだったからね。


 なんなら、元のテントよりも良い施設を作って上げられれば、問題ないと思ってた。


〈その……ごめんなさい〉


「謝るならミスユっちにだね」


〈うぅはい、シュネーの仰る通りです〉


「たく、お前の悪い所が出たな。すこしは俺達にも相談しろって前にも言ったよな」


 ティフォがお仕置きという感じで、強めの力で頭をムニムニと揉まれる。


〈イタ気持ちいいんだけど⁉〉

「マッサージだからな」


 絶妙な力加減でダメージを負わないように気を使っている。


 そんな無駄なテクニックは要らないんだけど。本当にこういう悪戯が大得意なヤツだな。


「領主としては、頼もしい限りなんだな。綺麗事だけで領地を守れるほど、甘くないのも事実でござるし、そこはまぁ先を考えていたと褒めてはおくんだな」


 ガウさんや、それは褒められた気がしないんだけど。


「けどさスノー、客を演者にするってのはどうするんだ?」


〈ん? 簡単だよプレイヤーや町の人達と遊びながら、色々と作り出していけば、勝手に盛り上がると思うよ。例えば、初期魔法の基礎を学びながら、妖怪達や鬼達の手を借りたりね〉


「ふむ、それは良い案でござるな。妖怪達にはちょっとした特徴があるんだな」


 【水魔法】スキルを使った初級編として、《フーカス》とギアで練習する。

 《フーカス》とは泡の水球を生み出して、敵にぶつけたりする魔法の事だで、コレを練習の時は粘着性や水の強度がシャボン玉の様になるのだ。


 これに、妖怪達の使うギア……つまり技を組み合わせる事が出来る。


 本来は反発しあう属性の魔法でも、妖怪達の特性で合わせ技で、泡の中に炎を生み出して、線香花火みたいにして、光を周りの泡で反射させる事も出来る。


〈何時の間にそんなことを調べたの?〉


「ふっ、拙者は負けたくないと本気を出したら、コレぐらいの事は御茶の子さいさい――」


「この子ったらね~、夜遅くまでず~っとズィミウルギアに入り浸りで。何をやってるかと思えば、中央都市の大図書館でお勉強をしてたのよ~」


 妖怪達が居なくなったて、やる事がなくなったフー先輩が、ひょっこりと現れた。

 ティフォを後ろから抱きしめる形で、何時の間にか逃げられない様に捕まえられている。


「せ、先輩。気配を消すのが上手くなってません?」

「だって、少し前までドイちゃんとエリエちゃん達と遊んでたからね」


 彼のギアが便利だと思い、覚えたという訳らしい。


〈文字の勉強からしたの? 大変だったでしょう〉


「この世界を知るには文字も読めないと、深くは知れないんだな」

「流石はゲーマー魂だな」


 まぁやる事も、どういう感じの方向性にするかも決まったし、後はやり切るだけだ。




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