【オンライン】289話:サーカス団の思いと恋の行方(15)



    ☆★☆ 視点:森田 雷刀【トランガウガブ】 ☆★☆




「単刀直入に聞くがズナミ殿、ミスユ団長の事はどう思っているんでござるか?」


 ティフォナ妃も拙者と同様に腕組みしながら、ズナミ殿を一緒に睨む。正座をさせているけれど、元々の体が大きいために見下ろす事は出来ない。


「いヤ、そノ……あぁいう可愛らしいモノと話すノハ、ハジメテで、何を話せ良いノカ解らなくなンダ。下手な事ヲ言っテ、嫌われたくハないシ」


「リーダーである君がそんなんだと、周りが変な勘違いをするかもしれないぞ。ズナミ自身はどうあれ、他のヤツ等が同じ考えをもって妖怪達と過ごしているとは別の話だからな」


 ティフォナ妃に言われて、少しだけズナミ殿の肩が跳ねた。


「別に、仲が悪い訳でハないガ?」

「いやいや、傍から見たら不仲に見えるって話でござるよ」


 協力しようとしている事は上手く出来ず、お互いに話し合いをしている時には相手の顔を見ない様にして喋っているのだから、変な誤解をする者達が多く居るだろう。


「ヌ、それハ、困るナ。しかシな、直視できなイというか、触れテしまうと、壊れテしまいそうデ怖いのだ。見るからに細く柔らかイ、綺麗なンダぞ。自分が触れテハ汚れないカ」


 自分で言っていて、どんどんと肩を落としていく。


 ティフォナ妃と視線だけでお互いにどうしようかと考えていると、不意に後ろから声を掛けられた。初めは姉上かとも思ったが、すぐに違うと分かる。


「ふふ、様子を見に来てみれば……この勝負は楽勝かしらね」


 凛としながらも耳に心地良い声の女性、振り返らずとも分かる翡翠姫と琥珀妃の姉である初音姫……ここでの名前はシャープ姫でござるな。


「何故ここに居るのでござるか?」


「あら失礼ね。愛しの可愛らしい妹達に会いに来たの。こっちは下手に帰れないし、一緒に行動したりとかも出来ないんだから。ゲーム内だけでも、一緒に過ごす時間を設けても罰なんて当たらないでしょう」


 そう言われてしまったら、なんにも言えないんだな。


「一人で来たんですか? それとも敵情視察かな」

「そんな事をしなくても私達は負けないからね。本当に妹達と遊びたいだけよ」

「随分と自信があるようでござるな。拙者達も負ける気はないんだな」


 拙者とシャープ先輩で火花を散らしていると、ズナミ殿が申し訳なさそうにしながらも、シャープ先輩の事をチラ見しつつ拙者達に声を掛けてきた。


「あノ、あちらの女性ハ?」


「勝負の相手だよ。ミスユ団長が取り戻そうとしているサーカステントを独占している人達のお仲間さんで、そこの隊長格なんだな」


 それを聞いてズナミ殿はすぐに情けない表情から一転して、キリッとシャープ先輩を睨む様に凄み始めた。だが、さっきまでの会話を思い出してすぐに「あれ?」という感じで、首を傾げながら拙者達の方に向き直る。


「さっキ、主達ノ事を見ながラ妹と言ってイタ様な気がスルのダガ?」


 戸惑いながら、震える指先でシャープ先輩を指して拙者達を交互に見ている。


「そうだよ、あの人はスノーとシュネーのお姉さんだよ」


「まったく、失礼な男達ね。そんなんだからスノーちゃんを任せておくなんて心配なのよね。やっぱり私が傍に居てあげないとダメかしらね」


 ワザとらしい溜息交じりな声で言いながら、拙者達をジト目で見てくる。




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