【オンライン】288話:サーカス団の思いと恋の行方(14)
〈シュネー……僕等がこっちのお話を聞くのは間違いでは?〉
「いやいや、今は女の子だからね」
そうは言われても、女の気持ちなんて分からないんだけど。こちとらまだまだ女になって一年も経ってないんだぞ。
お母さんやら小鳥ちゃん達によって、女の子について毎日と言って良いくらいには学ばされているけれど、恋愛なんて僕が男だった時から縁遠いものだぞ。
――アドバイスなんて……出来るはずがない‼
そう力を込めて言える。
とは言えだ、何もせずいたら、それはそれでダメな気がするので、何とかミスユ団長の背中を押すとか、助け舟くらいは出せればと思う。
『う~、関係を作ってくれとはいうたがのぅ。その、これはいきなり距離が近すぎるのではないかのぅ。童とてな、心の整理とか、気の持ちようがだのぅ』
「何時までもそんな事をいってたら、ずっと楽しいお喋りなんてできないし、下手したら相手に嫌われてるなんて思われちゃうんじゃないの?」
『そ、それは困る⁉』
〈下手にエリエさん達と比べない方が良いですよ〉
アレはまた別のベクトルで、ダメな関係に進んでいると思うんだよね。個人的にこれ以上の砂糖製造機は要らないんだよ。
『しかし、あの二人は童達よりも仲良くなっているし、その……物凄く羨ましい』
そんなちょっと俯きながら、頬を赤らめていじける感じで言わないでよ。なんかこっちが意地悪をしているみたいになってくる。
「エリエっちみたいに、相手の技を習うとかでさ、お互いに近付いたりしなかったの?」
『やろうとは思ったのだが、知れば知る程にな、その~童達には出来ない事を平気でやってのけるのだ。身体能力の高さに、ほぼ条件反射の域で童達の幻術を突破してみせてくれた。波の精神力では、童の幻術からは逃れられぬはずなのじゃが……簡単に振り払いおった』
そんな蕩ける様に惚けて、ズミナの事を語らないでほしい。
「それってミスユんは完敗だったってこと?」
『いいや、童の全力の攻撃と同等であったぞ。逆に下手な策を弄すると童がやられていた。力のみで突破されたのは、ズナミ殿が初めてだ』
〈それで余計に惚れ込んだんだね〉
『う、うむ……あの時の真剣な瞳が、童の心を捉えて離さぬのだ』
知らんがな……。コレもこれで、良好な関係を築けているんじゃないだろうか。というか、僕等はただ単に惚気話を聞かされているだけじゃないのか? 心配する事があるのかな。
〈二人には大取で盛り上げて貰おうと思ってるんで、あんまりのんびりとされると困るんですけど、二人で出来る演目は決まりましたか?〉
これ以上の下手な質問は、僕の口が甘ったるくなって砂糖を吐きたくなるから、止めよう。さっさと話しを進めて、少しだけ背中を押せれば良いだろう。
『ぬ~、それがサッパリじゃな』
「ダメじゃん。サーカス団の地位を取り戻すんでしょう?」
『そうなのじゃが……ただ、人を魅了するだけならば、ズナミ殿との全力演舞で事は足りるじゃろう。しかしなぁ、それでは何か違う気がするのぅ』
ミスユ団長は自身とズナミが共演する演舞を考えて少しだけ惚けていたが、すぐに客の反応を想像して悩み始めてしまう。
〈魅せる舞台が出来るなら十分なのでは?〉
「お客さんを呼んで、喜んでもらえばまたお客さんがくるじゃん。なにが違うのさ?」
お姉ちゃん達とは違った形で客を集めるのは大変だとは思うけど、お客さんの数で勝敗が決まる以上は、どうしたって魅せる舞台を考えないとダメだと思うんだけど、ミスユ団長はいったい何が引っ掛かってるんだろう。
『皆がそう言うのは分かってるのだがな……違うのじゃ、童はヤツ等に負けた時に見たモノはな、その……なんと言えば良いのかのう。子供の頃にワクワクドキドキとした、楽しさじゃあなかったのだよ。……そう、楽しかったのだ。童が出来ない事を軽々と出来るサーカス団の者達に対抗して、悔しくってマネして、教えて貰ってのぅ、共に笑いあったのだ』
僕等に説明しながも、ミスユ団長は一つ一つを噛み締めるように語る。
段々と何をしたいのか、何がやりたかったのかを思い出していく様に、真剣な表情になっていた。
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