【オンライン】284話:サーカス団の思いと恋の行方(10)




 ハロウィンイベントから一転して、クリスマスムードに変わっていく。


 ただ、クリスマスのお祭りは歌がメインのようで、クリストプソモというケーキや、メロマカロナというクッキーが配られたりした。


 中央都市やフォレストヒルでは、巨大なクリスマスツリーを作って街の雰囲気を盛り上げているし、クラフター達がプレゼント制作でイベントを独自で作ったりしている。


 クリスマスの大型イベントは歌と言う事はだ、当然、お姉ちゃん達が表立って活動し始る。


 僕等のグランスコートでは、クリスマスツリーをエーコーさんが用意してくれて、サーカス団のテントでもお祭り騒ぎという感じになっている。


 時間ごとに其々ので交代しながら、アイドル達が特設ステージで歌って踊る。

 多種多様なアイドル達が其々のサーバー毎に、交代でコンサートを開いている。


「どこもかしこも、凄い盛り上がりでござるな」


 行き交うプレイヤーと村人達とのテンションの落差が激しく、町の雰囲気が変な感じになっている。クリスマスってイベントでワクワクしている人達は大体同じだけどね。


「ここは比較的にまともな方だってよ」


 庭のベンチに座って、紅茶を飲みながら皆で町を見回す。


「ん~? なんで、ここもアイドルが歌ってるじゃん」


〈サーカステントでやってるから、あのテントって防音結界の役割もあるからね〉


 それだけじゃなく、しっかりと会場内でライブを楽しめる様になっているので、町中で無造作に立ち止まっていたり、ゴミをまき散らす人も居ないから衛生管理の役割も担っている。キチンと区間を決めているので、興奮した人達とのトラブルも無い。


「他の街はサーカス団を呼ぶようなスペースも無かったらしいから、仮設の特設ステージを建てたんだと……ただ、場所をそんなに気にしてなかったからしい」


 アイドル達が歌いに来るって事で、街の中心地だったり、だだっ広い広場に設置したり、街に住む人達とのトラブルが相次いでいるらしい。


 そして、騒音問題も同時に出て来たものだから、住人達のストレス度が急激に上昇しているという、悪循環が発生している。


〈大型イベントを開くのも大変だね。僕等も気を付けないとだ……牧場の方でやるって言うなら、鬼達との連携もしっかりしないとだね〉


「そういえば結局さ、スノーは何を中心に上げていくの? 軍事力? 技術?」


「衣・食・住はとりあえず大丈夫そうだし、仕事もお金も回ってるからな。モンスター達の御蔭で細かな作業もし易いみたいだし、ダイチ爺ちゃんの助けもあって纏まってくれてるしな」


 今はエーコーさんの森と連携して、植林の方にも手を出しているらしい。

 ちゃっかり果実園を作るという、計画もしている。


 そのおかげで、働ける人達にどんどん仕事を回せているので、良い循環で経済的にも余裕が出て来た。グランスコートが出来た頃から居てくれるた露店をしていた三人組の人達も、色々と助けてくれて、何とか交易も良い感じになっている。


〈イベントが多いし、今後の事も考えると、やっぱり自衛団やら町の警備をしっかりしたいかな。傭兵所と学校も少しずつ立てていこう〉


 今までずっと静かにしていて、常にメモを取りながら僕等のホームで机に噛り付いているカミルさんが、やっと顔を上げて、僕等を見てくる。


「それよりも、此処を何とかして下し⁉ 何ですか! 自分達は二の次ですか! 自宅のレベルを上げれば出来る事が増えるんです! そしてもう一人、事務員を雇って頂ければ、教師などの人材確保も出来るんですよ」


〈そんな説明、聞いてなかったし〉


「説明書に載ってるはずです、書いてあるはずです! 良く読んでますよね! 自分の所を疎かにしてはダメですよ⁉」


「……忙しくなってきたから、サボれる様にしたいだけ?」

 シュネーがボソッと言うと、カミルさんがそれに頷きながら本音が駄々洩れていく。


「えぇ、そうですね。全く次から次にお祭りを起こして、森の主に都市国家の発見、別種族で攻め込んできた魔物も取り込み、住む場所を作らせるなんて。私が過労で死んじゃうじゃないですか、楽しいですけどね。色々と私自身が遊べる時間が減るのはダメなんです…………ん? こほん、いえ、決して自分のリゾート地区を作ってのんびり生活をするのが夢で、その場所を作りたくって協力している訳じゃあないんですよ――」


 一瞬だけ冷静になったと思ったら、愚痴になり、また心の本音が駄々洩れている。


 黙って仕事をしてくれている方が良いな、この人は本当に優秀なのに残念だ、色々と。




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