【オンライン】282話:サーカス団の思いと恋の行方(8)




 どうせなら色々な職業の人を巻き込んで、大いに盛り上げようという事になり、後半からの話し合いは何故か、お姉ちゃん達に勝つという話し合いからそれていった。


〈結局は僕等の作った舞台で誰が一番に魅せる事が出来るかを競うって事で良い?〉


 これ以上は本当に話しが別の所にいきそうだったので、条件を付けて魅せる場を提供するという話に落ち着いた。

 ただし、条件は“サーカス団の妖怪達と協力して舞台に立つ”事が条件とすれば、この特殊イベントである、姉ちゃん達の勝負にも格好がつくだろう。


「何と言うか、最終的に自分達が楽しむ方向になったな」


「悪乗りが過ぎたんだな……でも、コレはこれで切磋琢磨して良い公演になりそうなんだな。妖怪達の能力も活かせるジョブと組めば映える舞台にもなりそうでござるよ」


 クラフターやギャザラーの人達が、場の雰囲気や舞台を作って魅せ。

 役者の妖怪達や、戦闘職ジョブの人達がその舞台で演舞を舞う。


 コレだけ、ゲーム内ならではのサーカス団というコンセプトを活かせそうだ。

 イベントとしての勝負をしつつも、其々の個人としての勝負にもなっているから、皆が全力で自分達のジョブを魅せる場となるはずだ。


「そうすると、問題は舞台よね~」


 フー先輩が少し困った様子で頬に手を付いて、牧場と睨めっこをしている。


「何か問題があるの?」

「広さは、開拓していって広げられるとしてもね。舞台を作るとなると、資源がねぇ」


 そう言いながら、チラチラと僕の方を見てくる。


〈だ、大丈夫です、僕達の方でちゃんと出しますから〉


「ふ~ん、そう“僕達”ねぇ~。人材も派遣して貰えるのよね?」


 何か僕の言い方に引っ掛かり感じたのか、ニコニコとした表情の中に鋭く睨まれた気がした。別に何時もの様に、誰にでも返す言葉で言っているつもりなのに、解せぬ。


〈えぇ、このイベント自体がグランスコート全体で受けたようなモノですし〉


「そう、それなら私は牧場の範囲を広げて、色々な舞台を作れる場所を提供できるようにすれば、大丈夫なのよね」


「そうでござるな。それに各区画に属性を分けて置けば、どんな魔物でも飼える牧場になるでござるよ。この牧場にとっても良い話だと思うんだな」


 ガウの助け舟の御蔭で、幾分か先輩の圧が弱まった。


「お前、フー先輩に何かしたか?」

〈僕は何もしてないと思うんだけどな〉


 ティフォが心配して僕に耳打ちしてくるが、本当に何もしてないので解らない。


「アレを見せつけておいて、無自覚だよ。ボクだって少し妬いちゃうのにさ~」


「ほらほら、シュネーちゃんも妬かない妬かない。確かに、傍から見てるとアレだけど、元からそう言う仲なんでしょう?」


「……先輩にそんな知り合いって昔から居ましたっけ?」


「あ~、アレはきっと姉妹仲なんだな。中身を知ってると兄妹って感じでござるよ。……無自覚な幼馴染で距離感が近すぎるとは、思うでござるが、本人たちは気付いてもないと、思うでござるよ……絶対に」


 僕とティフォを見ながら、皆が様々な視線を向けて来た。


『アレはあれで、理想的な仲だとは思うが……ちょっとのう』


 ミスユ団長は僕達とズナミを交互に見ながら、口元を隠して難しそうな顔で悩んでいる。


「ニンゲンとは不思議ナ者だナ」


 何となく、状況を汲み取れたズナミは腕組みしながら、面白そうに納得している様子だ。


「ねぇ、本当にあの子はライバルじゃないの? アレだけ距離が近くて? 話が違くない」


「お、落ち着いて欲しいんだな。拙者に当たらないでほしいんだな。でも、今の所は姉上のライバルにはなり得ないんだな。本当に兄妹的な関係で――」


 フー先輩にガクガクと揺らされて、必死に訴えているガウが時々何かを呟く様に言うため、僕等には聞き取れなかった。


 僕とティフォはお互いに顔を合わせて、良く解らないと小首を傾げるだけだった。


 その様子を見たフー先輩とアズミルが、ガウに激しく詰め寄っていった。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る