【オンライン】281話:サーカス団の思いと恋の行方(7)




「あら、ティーちゃんじゃない……それに、見た事ない子達が居るわね」


「えっとフー先輩に相談というか……お願いがあってね――」


 牧場の全体を借りるんだから話は通しておかないと、という事で交渉が成功し易いであろうティフォに任せるとして、大まかな公演内容の方向性を決めてしまおう。


 こういう時にティフォを生贄に捧げる事で交渉は百パーセント成功する、はずだ。


 当の本人であるティフォは自身が生贄だとは気付いていないみたいだけど、ミカさんは薄々に気付いたようだけど、僕等は満場一致でティフォをフー先輩に差し出した。


 事前にガウがメールを送って、そこには勿論、ティフォを好きにしていいという一文が付け加えられていた事だろう。


〈仲間の能力は? さっき会ったのはタヌキさんだけど〉


『タヌキというと、ターンの事かのう。変化じゃ、後は付与も得意じゃぞ。道具に変化した場合は実物が近くにあれば、その能力を完全にコピーが出来たりもする』


 後は天狗、河童、一反木綿、木霊、座敷童という感じだそうだ。

 副団長には、ぬらりひょん。


 よく聞いた妖怪達だから、能力も想像し易い。


 他にも居るらしいが、下級種族という位置づけらしく僕等とは意思疎通が難しいらしい。


 ただ、団長や副団長には従順に従うらしい。


『カマイタチなんかは、芸術的な像を生み出すのが得意じゃぞ』


 この人……人? 妖怪達がサーカス団を乗っ取られた理由がなんか少しだけ分かった気がしてきた。驚かせる事は出来ても、感動させるような事は無かったんだろうな。


『な、なんじゃその哀れな者も見る目は』


〈どうしよう、なんか勝ち筋が見えなくなってきたよ〉


「ボクを見ながら言わないでよ。良い案なんてすぐ出てこないよ」

「個々の能力は高いのよね。戦闘力という意味でも……ただ、ねぇ」


 魅せるという事になると、かなり難しい感じのモノしかない。


 狐のお二人は分かり易く、人間達を魅了する事が出来そうな事が多いけど、他の妖怪達はどうにもパッとしない能力が多い。


 ずっと何かを考え込んでいるガウは、自分の能力と教えて貰った妖怪達の能力メモとを見比べながら、ブツブツと呟いている。


「こっちの交渉は終わったよ」


 少しだけ疲れた顔で、肩を落としたティフォとそれとは真逆で、ほくほく顔で生き生きとしているフー先輩が楽しそうにティフォに抱き着いている。


「もう、好きに使っちゃって。まぁ、元々はティーちゃんに協力するつもりで作った牧場だからね、必要なら好きにしてくれていいんだけど、流石に牧場全体となるとね~」


 まだまだ飼っている動物や魔物は少ないとは言っても、少しずつ牧場の貸し出しで色々な子達を世話しているようだからね。


「ジョブ毎に手伝ってもらうのはどうでござろう。其々の得意分野で魅せばを用意して、それをサーカス団の妖怪達をメインに魅せる形の演舞を魅せる感じでどうでござるか」


 なるほど、それなら確かに面白そうかもしれない。


「自信がある人には、その場で手伝って貰えば、参加者も楽しめそうですね」


〈それなりに人を呼ばないとダメだけど、僕等はそんなに知り合い居ないよ?〉


「大丈夫よ、アタシの知り合いにも声を掛けるしさ」


「グランスコートに居るメンバーにも声を掛ければ、皆が手伝ってくれると思うんだな」


 確かにそれなら集まりそうではあるけど、僕等の町に居る人達って戦闘職の人は少なめな気がする。


「ケリアっちとか、露店三人組の人達にも出番が欲しいよね。どうせなら、このイベントもボクだけじゃあなくって、皆で楽しまないとね」


〈クラフターやギャザラー達の魅せばね、意外と、良い公演になりそうかも?〉


 畑を作ってるお爺ちゃん達やウサギさん達にも手伝って貰って、花を周りに散らして、カマイタチに巻き上げて、花吹雪の演出とかも鮮やかに出来そうだ。




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