【オンライン】280話:サーカス団の思いと恋の行方(6)




〈そう言えばさ、妖怪ってどんなことが得意なの〉


 広い場所で出来る事が多いとは言えど、僕は彼女等がどういう事を出来るかが全然わからない。さっき見たのは幻術っぽい能力だったけど。


『童と同じ狐の子は幻術や、ダブルマジックなんかの二種類の魔法を同時に使えるという感じであるな、尻尾の数で同時に発動できる属性や魔法の数が変わるのじゃぞ』


 九つの尻尾を自慢げに揺らしながら言うと、それを興味深そうにズナミが見るモノだから、ミスユ団長の尻尾が徐々に恥ずかしそうに縮こまっていく。


「自分ラは、力だったり体力、ソレに打たれ強さにハ自身ガある。そう言った事は全然ダ」

「結構普通に話してるけどさ、ズナミ達って妖怪達と戦争をしてたんだよね?」


 シュネーが耐えられなくなったようで、聞きたかった事を口に出し始めた。

 それを言われて、ミスユ団長の耳が凄い反応してピクピクと動いている。


「あァ~、そうデスね?」

「あんまり、気にならないのかなって思ってさ」


 反応的には、全く気にしていないというか……言われるまで忘れていた感じだな。


「我々の感覚では、弱かった先祖が悪いというイメージですネ」


 詳しく聞いた訳じゃあなかったけど、戦争の結果は鬼人達の敗北で終わったみたいだ。


『童達に思う所はないのか?』


 ミスユ団長は尻尾で顔半分、口元を隠しながらチラチラとズナミの方を見ながら聞く。


「はァ? ……思うトコロ? 特に無いデスね。我ラは常に弱肉強食の世界でシタから、弱ければ捨てラレ、死にゆく運命が普通デした」


 だから敵に勝つための力を得る事に、貪欲な性格だと言う。

 そして、それをモノに出来る者が一族のリーダーになれるという事らしい。


〈あれ? それって僕の下に居てくれるけどさ、大丈夫なの?〉


 僕がそう聞くと、砕けた笑みを浮かべながら、僕を見て来た。


「我ラは再三の負けを味わった。森を手に入れられず、主ノ住マウ場所にハ一度たりとも近付けずニ、用意シタ圧倒的ナ数の味方を失っタ。本陣は破ラレ、最後は助けて貰わねば、今頃は水攻めで流され、命ハなかっタ」


 僕達にとっては少し前のイベントなのだが、ズナミからしたら結構に時間が経ったかの様に、思い出しながら話してくれる。


「里や一族から学んだのハ力のみノ支配。全力を出して、手も足も出せずに負けテ、最後の賭ケでは嘲笑ウかの様に、ワナに嵌めらレタ。知恵の力を知った今では、負ケテ当然と思える。先祖も、そうして負けたノダろう。だから、尊敬はスルガ、恨みはナイナ」


 鬼人族の良くも悪くも、武人気質というヤツなのだろう。

 コレが人間達の話だったら、もっとややこしいモノになっていただろう。


 普通だったら怨みやら辛みやら、感情が入り混じってしまうものなにな、しっかりと見ていてやらないと、危ういのかもしれない。


 妖怪はどちらかと言えば、人間に近いんだろうな。

 ズナミの言葉を聞いて安堵している様子が見て取れるが、少し理解出来ないという感じもしている。エリエさんなんかは顔を顰めて、必死にズナミが言った言葉の裏を読もうとして、逆に泥沼に陥っている気がするしね。


 僕はズナミとミスユ団長を交互に見て、良い組み合わせだなと思った。

 この二人は全力でくっつけて、グランスコートの発展に力を貸して貰おう。


 とにかく、個々の能力把握から始めないと、サーカスの公演の内容だって決められない。鬼達に手伝って貰って、魔物達にも色々と助けて貰えば、いい勝負になりそうだ。


 お姉ちゃん達も、この世界ならではの演出は考えてくるだろうけど、自分達が目立つ様にと考えるはずだ。アイドルだしね。


 魔法を使った演出に歌とか音楽。こっちのメンバーじゃあどうしたってその辺では後れを取るだろうけど、ガウやティフォ達の力を借りていけば、違う魅せ方で人を呼べるだろう。





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