【オンライン】278話:サーカス団の思いと恋の行方(4)




「まず最初に、何処で公演をするかでござるが……牧場でやるのはどうでござろうか」


「サーカステントではやらねぇのか?」


〈勝負になるんだし、同じ場所では出来ないんじゃない?〉


「テントは相手方に渡しちゃうの? 勿体無くない?」


 シュネーやティフォも、やっぱり気になるのはサーカステントの方だよね。わざわざ場所を明け渡す様な事をしてしまう理由を知りたい。


「あえて開けた場所で、色々な人に見てもらおうって考えでござるよ。それに、妖怪達には限定的な空間よりも自由に動ける外の方が力を発揮できそうでござるしな」


『ふむふむ、悪くないね。渡り人達と違って妖怪である童達は己の能力で出来る事が変わってくるからのう。同じ場所では出来ない事も多いのだ』


「そうね~、広告は私達が配って回れば人は呼べると思うわ」


 ミカさんが手元を動かして、何かメモしている動きと、メールの作成をしている。


「鬼人達の集落に作った牧場だよね~。確かにそこなら色々と都合も良さそうだね」


 ニヤニヤとした笑いを浮かべならアズミルはミスユ団長を見やる。


『うなっ⁉ 牧場という場所は鬼人達の住む場所にあるのかえ』


〈そうですね、あっちはズナミに任せてますから、少しは話を通しておかないと〉


 いきなりで悪いけど、橋渡しは出来ても最終的には本人達で種族間の問題は解決して貰わないといけない。段取りはある程度……必要だと思うけれど、悠長に事を構えてる訳にもいかないんだよね。


 とは言え、そっとミスユ団長を見ると、顔を赤くしてパニック状態になってしまっている。


『団長の事はお任せください。多少の手助けは必須ですが、それまでには何とか挨拶くらいはまともに出来る様にしてみせます』


 エリエさんが当の本人よりも、燃えている気がする。


「大丈夫、ズナミさんの方は私達がそれとなしに伝えて、上手くいくようにしてみせるから。恋する乙女のサポートは私達に任せなさいな」


 こっちにも一人、やけに恋路に燃えている人が居たよ。

 アズミルの背景で桜吹雪が吹き荒れていそうだ。


「女の子ってこういう話が好きだよな」

「今はティフォナ妃も女の子みたいなもんなんだな」

「そりゃあ恰好だけだろうが! 好きで着てるんじゃないっての」


 シュネーは静かにティフォに近寄って、ポムポムと肩を叩いた。


「少しは人の恋路を見て、勉強しときなね」

「どういう意味だコラッ」


 なんでシュネーが達観したように言うんだろう。

 ちょっとだけ僕もビックリだ。


「しかし、まだまだ準備しなくてはならないモノが多いでござるよ。屋台やら出店は今あるイベントのモノをそのまま利用できれば問題は無さそうでござるが……」


〈それじゃあ二番煎じにならない?〉


 クリスマスに年末年始とイベントは盛り沢山だ。


「拙者達がやるのは確かに人を集める事でござるが、拙者は奇抜に盛り上げるだけが良いとは思わないんでござるよ。ゆっくりできる休憩スペースも人を呼ぶ重要なファクターなんだな。イベントが多すぎて処理できない人も多く居るはずなんだな」


 休みがあると言っても、本当にゆっくり出来る人も居れば逆に別の事で忙しく、ゲームにまで時間を回せない人も居るだろう。


 そこで、イベントが終わっている人達に協力してもらうための集まりを作るという。


「グランスコートは色々な種族が集まった場所でござるし、魔物達とも触れ合える場所としても牧場は最適なんだな。そこに妖怪であるサーカス団の協力があれば、NPC達も呼び込むことができて、色々な形で橋渡しをしながら、お互いの違いや協力関係を築く場所としても、この先で役に立つはずでござる」


 これから先の事まで考えて、イベントを成功させようとしているガウに皆は言葉が出ない……というか、何時ものへらへらしている感じが無いせいで、凄くカッコよく見える。


〈……ガウってば、なんか本気だね?〉


「まぁ、心算もあるでござるが、半分以上は心慮な部分もあるんだな。このイベントは失敗したくないでござるし、何よりも勝ちに行きたいんだな」


「凄いよ、ガウっちの目が燃えてる」


 あんなエフェクトも出来るんだ。


 ちょっとガウが暴走しないか心配になり、ティフォの袖をクイクイと引っ張って指を指すて、どうなのかと目で訴えてみる。


「あ~、まぁ大丈夫だろう。相手に音姉ぇが居るからより燃えてるんじゃねぇかな?」


 僕はティフォの言っている意味が解らず小首を傾げる。

 なんでお姉ちゃんが居ると、ガウがヤル気に燃えるんだろうか。




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