【オンライン】277話:サーカス団の思いと恋の行方(3)




『それでは今後の方針について、話し合いをしようぞ』


 何時の間にか準備された机とティーセット、それに人数分の椅子が並べれている。


『団長、少し落ち着いて下さい』


 こういう状況に慣れているのか、エリエさんがすぐに魔法を使ってポットにお湯を入れて、紅茶の準備をし始めている。


『良いではないか、第一歩なのだぞ。コレが楽しまずに居られるものか』


『そうやって楽しそうだ言って、あの人達に絡んだ結果が今の状況だという事をお忘れなく。この人達が何処まで助けになってくれるかなんて分からないんですよ』


 エリエさんに睨まれて、ミスユ団長が少しだけ小さくなり俯いた。


『ご、ごめんなさい』


 関係は良好な状態でも、信用関係が築ける程の時間は過ごしていないから仕方ないな。

 これからの時間と助け合いで、僕等の事を知ってもらうしかない。


「向こうのリーダーって人は、まともな人なの?」


『悪い人ではありません。けど、善人でもありませんね。団長と同じく楽しいと思った事には全力で取り組む人です。己の楽しみの為だけに動く人ですね。良くも悪くも』


 そう分析した評価を言いながら、隣に居る団長にでも言い聞かせる様に言う。


〈まぁ、お姉ちゃんが絡んでる時点で、絶対に“ラインライズ”のメンバーだよね〉


「へ? あの、ちょっと待ってほしいんだけど。いまスノーちゃんの言ってるフォールズって言うのは、アイドル事務所の事じゃあないわよね」


 ミカさんは顔色を悪くしながらも、期待というか渇望やらトキメキの入り混じった視線を僕に向けつつ、全身が微かに震えている。


「いや、合ってますよ。コイツの姉はアイドルですからね」


 どうせすぐにバレる事だろうかと、ティフォが何ともないという感じで喋ってしまう。


 ミカさんが机をバンッと強く叩いた。


「どうするのよ! 人を集めるなんて彼女達の得意分野じゃない⁉」


 アイドルだからね、SNSでも使えばすぐに多くの人が集まりそうだ。

 僕もミカさんと同意見だし、ハッキリって勝ち目なんて全然見えないんだよね。


『やはり、そういう分野に詳しい者達だったのだな。道理で童達が完敗する訳だ』


 うんうんと負けて納得という感じの態度を見て、エリエさんの眉間に怒りの筋が浮かび上がっているのに気付いていない様子だった。


『団長……何を納得しているんです? 反省してくださいね』

『あ、いや~、その……本当に申し訳ございませんでした』


 この人達は何とも不思議な関係性だな。団長の方が団員達よりも立場が弱そうに思える。


「どうするんですか? イベントクエストっぽいですけど。コレってかなり不利じゃないですか? あのおと……シャープ先輩には私だって叶う気しないんですけど」


 アズミルも本人を知っているだけに、物凄く弱気になっている。


「まぁ、現実の世界だったら拙者達に勝ち目は無いでござるな……でも、ここはズィミウルギアという世界なんだな。サーバー内に居るプレイヤー達は決まった人数しか入れず、此処には時空を飛び越えるネットは未だ存在しない、そんな異世界でござるよ」


 チッチッとガウが得意げになって人差し指を振りながら語りだした。


「もしも、彼女達がアイドルとして人を集めようとするならば、こちらにだって勝ち筋はあるんだな。それに準備期間は十分にあるでござるよ」


 やることはこのズィミウルギアで人を、相手よりもより多く集めた方の、勝ち。

 とてもシンプルで分かり易い勝負だ。


「確かに勝負はアイドルに分があるモノでござるが、ことこの世界であるズィミウルギアに置いては“ゲーム”でござる。ゲームにはゲームならではの人達が居るんだな」


 ガウには何か良い案でもあるのか、物凄く頼もしく見える。




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