【オンライン】276話:サーカス団の思いと恋の行方(2)



「ふ~ん、面白い話を聞いちゃったね~」

『んむぅ~~⁉』


 エリエさんが知らない小さい子に羽交い絞めにされている。

 パッとマップに映し出されているマーカーを見ると、彼女はプレイヤーみたいだ。


「私らに黙って悪巧みとは見過ごせないねぇ~」


 ミスユ団長の表情が険しくなった。


『エリエが怖がっておる。放してはあげてほしいのじゃがのう』

「ありゃ、本当だね。ごめんごめん、ちょ~っと脅すだけだったんだけど」


 解放されたエリエさんは、近くに居た僕の後ろに抱き着く様に隠れた。


「あ~あ、泣かした~。君っては最低だね」


 この良く解らない状況で物怖じせず、知らない人を責める様に言えるシュネーが羨ましく思える。

 まぁ、今の状況だと丁度良い牽制にはなるから良いけど。


「いや、本当にちょっとした冗談だったんだってば」


〈泣いたら冗談では済まないよ?〉


「うぐぅ! そりゃそうだけど~」

「謝り方っていうものが、あるんじゃないの?」

「悪いことをしたら、謝りましょうね~」


 アズミルとミカさんが、子供に促す様に責め立てている。


「……ごめんなさい」


 なんか乗せやすい子だな。見た目通りの年齢という事だろう。

 ティフォとガウが何とも言えない表情で彼女を見ている。


「はっ⁉ 違うようね、悪巧みをしていたそっちが悪いよね」


〈悪巧みをしていただけで、誰も泣かせてませんよ?〉


「こっちは一人の女の子が泣いてるんだよ~」


 それを言われると弱いらしく、チラチラとエリエさんの事を申し訳なさそうに見ている。


「いけない、ここは頑張って悪役をヤルって言ったんだもん。頑張るぞ」


 少し離れているティフォ達には聞こえないだろうけど。

 僕やシュネーにはバッチリ聞こえているんだよなぁ。


 まぁ聞こえていなくても、態度やら仕草を見ていればバレバレなんだけどね。

 何度か喉を鳴らして、さっきまでのは無かった事の様に彼女は話を進めようとする。


「私達と勝負して~、勝ったら好きにして良いって条件ならどうかな?」


 役に入り切ったように、小悪魔みたいな笑みを浮かべながら言う。


「兄さんに頼んで、ちゃ~んと契約勝負にしてあげるからさ」


『その話は本当じゃろうな』


「ほんとだよ~。私の兄が私達皆のリーダーだって知ってるでしょう。ねぇミスユ団長さん」


 勝手に話しを進められても困るのだが、手伝うと約束してしまった手前、ここで逃げる訳にも放り出してしまう訳にもいかない。


〈勝負って何するの?〉


「簡単だよ。私達はサーカス団……基、芸人なんだから人をより多く集めた方の勝ち」


 確かに単純だけど、流石にこっちが不利だと思う。


「勝負の日取りは何時でござるか?」


「そうだな~、話しを通さなきゃならないし~。練習期間も含めて……年末年始のイベントが終わった辺りかな? 色々と忙しいから、皆が暇になるのはそれくらいだしね」


 お姉ちゃんの関係者なら、確かにクリスマスやら年末年始やら、大忙しだろう。


「それくらいの期間があるなら、まぁいい勝負には出来そうかな」


 ティフォさんや、楽観的過ぎんかね。


「とりあえずは傾向と対策を考えないとね」


 ミカさんが生き生きと仕切りだしたけど、ガウやアズミル、それに僕はどう考えても簡単には行かなそうだなとしか思えなかった。


 ミカさんは事情が分からないだろうから、仕方ないけど。


〈はぁ…… あぁ、お姉ちゃんに宜しく行っておいてください〉


「うん分かった……うん? お姉ちゃん? ダレがお姉ちゃんなの?」

「さっきサーカステントに居たじゃん。シャープって人だよ」


 シュネーが僕の頭の上で、ちょっと偉そうにしながら言うと。小っちゃい子が何度か頷いて「あ~、音センパイね」と言った後に数秒間フリーズした。


 それから無言で僕の方をじ~っと見てから、どんどん驚愕という表情になっていった。


「え⁉ 音センパイの妹さん⁉」


 遅れてすっごく驚かれてしまった。

 そして何故か知らないけど、キッと睨まれる。


「絶対に負けないからね」


 良く解らない捨て台詞を言いながら、出て行ってしまった。


〈え? 僕、何かした?〉


 チラッとティフォの方を向いて言う。


「俺に聞くな」

「拙者を見られても、解らないんだな」


「だからってコッチを見ないで」


 アズミルにも見放された。


「多分、皆分かんないから、助けを求める様に見ないでね」

 ミカさんも助けてくれないらしい。





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